real local 福井越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺 - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【地域情報】

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

ローカルツアー

2022.01.13

日常に触れる旅と題して、福井県丹南地域のローカルトライアルツアー第7弾を紹介します。アーカイブはこちらからどうぞご覧下さい。

こんにちは! reallocal福井ライター、牛久保です。早いもので7回目を数えるローカルトライアルツアー。今回のツアーは、歩きながら場所の地形や、それにちなんだ地名や歴史を再発見していこうというもの。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

某TV番組企画のようですが、まち歩きの達人が案内人となり、残された様々な痕跡を辿りながら、今まで気が付かなかったまちの顔を知る地理や歴史好きにはたまらない内容です!日ごろの運動不足解消も兼ねて楽しむぞ~!

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

旅の水先案内人は、福井市の学芸員藤川明宏さん。reallocal福井ではローカルフォトスクール「越前海岸カメラ」の記事などでもおなじみの御人です。

泰澄大師(たいちょうだいし)ゆかりの泰澄寺からスタート!

2021年10月下旬。歩くと少し汗ばむほどの晴天の中、スタート地点の福井市三十八社町泰澄寺の駐車場に集合しました。今回一緒にツアー参加したのは県図書館の司書のお二人や園芸技師の方など、本や植物の専門家の方たち!博学なツアーになりそうです。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

まずは泰澄大師生誕の地である泰澄寺でお参りを。このお寺を管理されている方からお話しを伺いました。
泰澄大師は、奈良時代、北陸の霊峰白山を開山した高僧で、福井では馴染み深い人物です。この場所で14歳まで過ごし、夢のお告げで越知山に行って修行に入られたそう。ご本尊を前に泰澄大師の修行の様子や、功績をお聞きしました。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

流行り病の疱瘡(ほうそう)も祈祷によって治したとされる泰澄大師。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

境内には泰澄大師が座禅を組んだ場所や、産湯の池、眼病に効くといわれる雷の池など興味深いスポットが点在します。

鯖江台地のへりを歩く

泰澄寺の産湯の池の前で、これから歩く場所の説明を藤川さんが行います。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

「今僕たちがいるのは鯖江台地の北の端。そして台地の東側のヘリに断層があります。断層があるということは、泉が湧く場所が多い。これも(産湯の池)もそう。だから今日行く場所は『水』に関わる地名が多くあります。断層の上に昔の主要街道である北陸道(北国街道)があるので、そこを歩いていきましょう!」

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

iPadを片手に面白い話が続きます。は!30分経つのにぜんぜん進んでいない!さあ、これからいよいよ歩きはじめます。

道の変遷、川の変遷

普段は車で過ぎ去ってしまう道を歩きます。古地図と見比べながら歩くのはさながら宝探しのよう。
越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

北陸道から西にそれて越前海岸に行く「四ヶ浦道」への重要な分岐点。言われなければ気が付かないようなポイントも。
越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺
一里塚跡。昔は榎など陰のできる大きな木が植わっていて人々の休憩所になっていました。
越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺
こちらは新浅水川(しんあそうずがわ)。明治42年の地図をチェックしながら、今はもうない川の流れについてお勉強です。「浅水川(あそうずがわ)は暴れ川でした。なんとか水害を減らそうと現在は日野川につないで新浅水川になっています。旧浅水川はあさむつ川という名前で小さく残っていますね」

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

新浅水川にかかる橋には北国街道の文字が。

「河川の流路を変えるのは大工事。みんな本当に困っていたんでしょう。浅水川は浅いじゃなくて、葦(あし)が生える場所。つまり頻繁に水が浸かる場所だったんです。丹南盆地の東の山からの水はすべてここに来たから、私たちが思っている以上に水が集まったんだと思いますよ」

元禄時代の宮司さんの家でひと休み

その後もてくてく、道を進んでいきます。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

途中で会った三日月地蔵さん。昔は旅の途中に行き倒れる人も多かったから、行脚していた人たちが大きなお地蔵さんを祀ったそう。目の病が全快すると言われています。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

歩きはじめて1時間ちょっと。道沿いの洋菓子やさんを発見!歩いていて甘味処を見つけると昔のお茶屋さんに出会ったようで嬉しくなります。
急激に暑くなってきたのでここでひと休み。すぐ近くの神明社(しんめいしゃ)という神社で休憩です。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

休憩させてもらったのは、旧瓜生(うりゅう)家住宅。かつて神明社の宮司さんの住んでいた住宅です。江戸時代、約400年前の元禄時代の茅葺の家!

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

囲炉裏を使っていぶして茅葺と建物を保全しています。神明社の歴史は鎌倉時代から。「宮司さんは殿様みたいに権力があったんですよ。だから立派な家で、いざという時は隠した槍と刀で宮司さんを守ったんです」と管理されている方からお話しを伺いました。
越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺
そんな歴史ある家の縁側で、さきほどのお店で買ったお菓子で休憩。は~、しあわせ。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

神明社は烏ヶ森社叢(からすがもりしゃそう)と呼ばれる24,200㎡の広大な林を有しています。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

ここにも水辺が。断層近くに水が多いということを実感!この場所は雨乞いの儀式に使われていたそう。真言宗のお寺の住職でもある藤川さん曰く「雨乞いは一番難しいので、密教では雨乞い、つまり天候を自由に操れる人が一番偉い人。だから弘法大師は偉かったんです」とのこと。今で言うと気象予報士みたいなかんじでしょうか。うーん、面白い!

街道を歩いてゴールの萬慶寺のある鯖江市街へ到着!

旧街道沿いは立派な建物がつづきます。
重厚な土蔵造りの醤油やさん。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺
小さなかわいい家の守り神も歩きだからこそ発見できます。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

藤川さんにまち歩きの醍醐味を尋ねました。「自然の力に人の営みはひっぱられているんだなと感じる場所を見つけた時ですかね。地形的なものと歴史が被っているところをみるとワクワクしますね」

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

この下は急な階段がありました。ここが鯖江台地のヘリだと分かる地形です。
越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺
ここは水落(みぞおち)宿場跡。水にまつわる地名が刻まれます。現在は下にトンネルが通っているので、住宅地にできないため、この場所は空き空間になっています。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺
鯖江市街地の入口には横になったお地蔵さんが祀られていました。笏谷石(しゃくだにいし)という福井の石でつくられたお地蔵さんたちは織田信長が朝倉氏のいる一乗谷を責めた時の野焼き仏です。ちょうど城内と城外を隔てていた、小さな川があってその橋にされていたそう。「我が身体をふませて通る人に功徳を与える」とお告げをして自ら橋になったといういわれがあります。お地蔵さん、優しすぎます。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

鯖江市街地に入りました!鯖江は陣屋だったので、こじんまりとした城下町です。江戸中期の城下町だから強固なお城はつくられなかったそう。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺
そして南北朝時代から続く真宗の本山である誠照寺(じょうしょうじ)。鯖江藩が起こる前から、このお寺の門前町として発展していた歴史があります。
あと一歩で今回の終着点、萬慶寺ですが、お昼も過ぎていたので、近くの食堂でお昼ごはんを挟みます。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

よく歩いた身体にたまごカツ丼は染み入りました!

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

終着地点の萬慶寺は曹洞宗、鯖江藩間部(まなべ)家の菩提寺です。笠をしているお地蔵さんが出迎えてくれました。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

今回の旅は沢山のお地蔵さんにも出会いました。こんな出会いも街道沿いならではなのでしょうか。

歩くからこそ分かる、まちの姿

帰りは路面電車のふく鉄に乗って来た道を戻ります。ゆっくり走る路面電車。歩いた道のそばを通るので、まちあるきの復習をしながら旅の振り返り。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

旅のあとで皆さんからの感想が飛び交いました。水って神聖で大事なものだったんだと気づいたこと、思った以上のお寺や神社の数と石碑にも驚いたこと、断層と地形とそこにまつわる歴史の話が興味深かったことなどそれぞれ感じたことが多い旅でした。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

「このまちあるきの真のテーマ『鯖江台地と断層を歩くー水にまつわる地名の謎!』を堪能していただけたようで何よりです!地学の専門ではないので、にわか知識に怪しいところもありましたので、もう少ししっかり学んでお話しできるようにしたいと思います」と藤川さん。本当に頼もしい水先案内人です!専門家と一緒に歩くのは格段の違いがありました。

越前丹南、日常に触れる旅7 / 旧北国街道を歩く 泰澄寺~萬慶寺

旧北陸道を水先案内人と歩く。自分だけで歩いても見えていないことばかり、そして歩くからこそ分かる貴重な体験でした!

この取り組みは、丹南地域周遊・滞在型観光推進事業の一環で、(株)JTB福井支店が実施したものです。これまでのアーカイブはこちらからご覧ください。