最後のときを待つ「刃物と道具の店 藤沢刃物店」
山形市三日町。刃物と道具の店「藤沢刃物店」は、創業から80年余りの歴史を経て、いま、店を閉めるときを迎えつつあります。「迎えつつある」というのは文字通り「つつある」のであって、やがてくるそのときはすぐ先のことかも、もう少し遠い先のことかもしれません。
店の裏では「一心堂 義近(よしちか)」という名の鍛冶工房を営んでいましたが2019年頃に閉鎖。その数年後、鍛冶職人であった藤澤省吉さんは他界されました。
義近で製造されてきた打刃物は、料理包丁、彫刻刀 、切出小刀 、特殊刃物、リードナイフ、登山刀、特注刃物 、鑿(のみ)、鉋(かんな)、剪定鋏、斧、ナタなど、ここに全てを書き出すのは不可能なほど実に様々でした。いずれも、料理人、魚屋、蕎麦職人、大工、建具職人、仏像彫師、将棋の駒職人、果樹農家、などなど非常に様々な分野の職人さんたちに愛されてきた本物の職人の道具でした。

義近印の道具は、長く愛されてきました。市内のとある蕎麦職人の方は30年以上にわたって義近の蕎麦切り包丁を愛用されているそうですし、天童のとある将棋駒職人の方は「これでなければダメだ」と語られているそうです。けれど、鍛治職人であった藤澤省吉さんが亡くなられて、もはやそれらの道具を研ぐ人もいなくなりました。
様々な職人さんたちが出入りする道具店であった藤沢刃物店には、義近印の商品だけでなく、他社で作られた様々な道具も取り揃えられていました。ここに来れば種々の仕事の道具、暮らしの品がすべて手に入る、というお店でした。
ですから、藤沢刃物店には、道具たちが残されました。今は、これらの道具たちを「欲しい」と思ってくださる方たちに(お得な価格で)買っていただいて、店を閉じるときを待っているのです。ここに残されているのは、ものづくりする職人のためのさまざまな道具の数々です。どれも現品限りのものばかりで、その数は日に日に少なくなっています。
ご興味のある方、料理や木工を本気で楽しんでいらっしゃる方、仕事の道具を探している方、ものづくりがお好きな方、ぜひ、「藤沢刃物店」に立ち寄ってみませんか。
遠くからお越しの際は、ぜひ事前に営業時間などのご確認をお願いいたします。
藤沢刃物店
山形県山形市三日町2丁目
電話 023 622 1772
営業時間 土曜平日 10〜17時