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杵屋本店「リップルパイ」/やまがた手土産018

地域情報
2025.09.29

杵屋本店「リップルパイ」/やまがた手土産018

今回お持ちしましたのは、「リップルパイ」です。

発売から半世紀超のスーパーロングセラー商品、だそうです。われら山形市民にとっては、子どもの頃から食べていた記憶がある、懐かしさと親しみのあるお菓子。製造元である杵屋本店の歴史はさらに長く、200年を超える老舗企業とのことです。

「リップルパイ」は、やや色の薄い、胡桃入りのあんこが入ったパイで、パイとはいえサクッと感はささやかに抑えられ、全体としてはむしろしっとりと食感はやさしく、食べた瞬間にバターの香りとあんこの調和が感じられて非常に美味です。洋菓子のようでもあり和菓子のようでもあり、上品さを漂わせながらも誰にでもフレンドリーな佇まいで、珈琲にもお茶にも抜群に合います。ひとつでも満足できるボリューム感でありつつ、いくつでも食べられそうな軽さも持っている、という……まったく見事なバランス。さすが食の王国・山形の市民に愛され続けるロングセラーだけのことはあります。

ところで、興味をそそられるのは「リップルパイ」という名前です。「リップル」という、あまり耳にしたことのない、独特な、可愛らしく跳ねるような語感に「パイ」が付いている、ファンタスティックな言葉の組み合わせ。これについては、杵屋本店のWebサイトに「リップルパイの由来」が語られたテキストがありますので、引用させていただきます。

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発売する1968年頃は、パイといえば”アップルパイ“が主流でした。そんな中で、”アップルパイ”より人気になるお菓子になりたい、「お口(リップ)に美味しいお菓子」という意味を込めて、アップルパイを少しもじって、『リップルパイ』という名前が付けられた、と伝わっています。https://www.kineya.co.jp/products/detail/1047

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どうやら「リップル」は造語。パイといえばアップルパイでしょ、と思いこんでいるあなたのお口(リップ)に、アップルパイとはまた別の、もっと新しいおいしさをお届けするパイをつくりましたよ、食べてみてね、というようなメッセージが込められていた、と解釈できそうです。それにしても、アップルパイというパイの王様に果敢に立ち向かうそのチャレンジングな姿勢がまず素晴らしい。そして上記Webサイトには、開発に三年を要したとも記されていましたから、情熱に満ちたその商品開発もまた素晴らしい。姿勢も商品も言葉も、すべてが調和した見事なクリエイションです。

さて、そして現在。杵屋本店に「生リップルパイ」なる新商品が登場していること、みなさんご存知でしょうか。知っている人は知っていると思うのですが、これが実に、衝撃的に、うまいのです。あまりのうまさを知って欲しくて、しばしば手土産にしています。先日は、4個入り1箱を「これ、お子さんに」とわたしの友人(2児の父親です)に渡したら、その友人(繰り返しますが2児の父親です)はなんと小さいお子さんたちを差し置いて、ひとりで食べきってしまったという事件が起きたほどです。

この記事を書くにあたってはその「生リップルパイ」を紹介しようか、とも思いましたが、しかしそのうまさも、そもそもはこのオリジナルの「リップルパイ」があってこそのもの、と思いなおし、やはり原点のリップルパイこそ語るべきだと思い至った次第です。

 

※シリーズ「やまがた手土産」は山形市在住のライター那須ミノルがじぶんの価値観に従ってセレクトした手土産たちの素敵なところを勝手にご紹介していくコーナーです。

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