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住む、働く、祈る、発信するー「生きた建築ミュージアムフェスティバル2025」参加レポート

イベント地域情報
2025.11.06

過去最多となる約200件の建物等が参加したイケフェス大阪2025。大阪R不動産のメンバーも思い思いに建物を巡ってきました。ぜひ来年以降のご参考に!

まずはこちら、鶴身印刷所。

町とともに生きている「鶴身印刷所」       

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特徴的な外壁の鶴身印刷所。

アートアンドクラフトがリノベーションを手がけた、鶴身印刷所。

京橋駅南口から学研都市線の線路に沿って東側に進んでいくと、その建物はあります。特徴的な外壁とは裏腹に町にスッと馴染むその秘訣はなんなのでしょうか。 

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古物販売や先代の残したスクラップブックの展示。
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鮮やかでさまざまなデザインの石板印刷物たち。

まず目に入るのは木造トラスの大空間と先代の残したさまざまな色形の印刷物。エントランスの一部が吹き抜けているのは、この大空間をより生かすためです。 

現在は印刷所としては廃業しましたが、店舗や事務所テナントが入居し、モノ・コトづくりの文化発信の場として町の賑わいに一役買っています。 

イベント当日は路面区画のパン屋カフェや漢方茶の楽しめるブースでまったりと過ごす方、展示販売をしている古道具やクリエイターの作品を手に取る方、石板印刷を体験するワークショップに参加する方など、思い思いに楽しんでいる様子が見られました。 

在廊されている大家さんと訪れたお客さんの親密なやりとりが特に印象的で、普段から町にフレンドリーな、まさに町とともに生きている建築だと実感しました。 

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石板印刷が体験できるワークショップも。この大きな機械でプレスして印刷します。
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銭湯の入浴券をサコッシュに印刷しました。後ろに映っているのが、石板。

 ▪️14:00~15:30 トークセミナー「この町と、この場所と」 

日日建築設計室一級建築士(同ヘリテージマネージャー)高柳春香さんと鶴身印刷所家主による、印刷所がある地域の変遷と町のあり方についての座談会が開かれました。 

高柳さんが鶴身印刷所と出会ったのは、なんと以前のイケフェス大阪。 

建築史を学んでいたという高柳さん。歴史を守りたい気持ちと、建築士として新築をつくることの矛盾に悩んでいた時、鶴身印刷所と出会い、時を重ねた建物が持つ新築には出せない良さに魅了され、現在はヘリテージマネージャーとしても活動されています。 

今回の座談会では、高柳さんが鶴身印刷所のある城東区近辺の古地図から歴史を読み解き、地名や地域の特性の分析を、それを踏まえて家主さんがこの町での鶴身印刷所のあり方や自身が山で野菜を育てながら考えることなどをお話しされました。 

参加者は長く近所にお住まいの方から千葉出身という方まで。鶴身印刷所のあるこの場所の話を聞きながら、それぞれのゆかりの場所を思い浮かべ見つめ直すきっかけとなる会になったのではと思います。 

「できたものを受け入れる受け身の姿勢ではなく一歩踏み込むべきで、建築がそこに見合った自分なりの正しいものであるならば、人の記憶に残る風景となり、人々に愛着が生まれ、町が元気になりいい循環ができる」 

町や人との関わり方そしてそこから生まれる循環が、印刷所を廃業した今もなお鶴身印刷所が生きている所以なのかもしれません。 

 

お次はこちら、アートアンドクラフトの代表作とも言えるリノベーション物件。

「新桜川ビル」のオリジナルを探せ!

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バウムクーヘンのような形が阪神高速のカーブと呼応した、ダイナミックな外観の新桜川ビル。

新桜川ビルではアートアンドクラフトのスタッフが企画し、「扇形のモダニズム建築 新桜川ビルのオリジナルを探せ!」というパネル展示を実施しました。”モダニズム再興”というテーマで、建物がもともと持つ魅力を引き出すようにリノベーションされた新桜川ビル。オリジナルを残したり、馴染むように付け足したり…。改修前のパネルと現在の姿を見比べながら、どこがオリジナルでどこが改修したところなのかを想像してもらいました。 

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改修前の写真と現在の姿を見比べる。まるで間違い探しのようなパネル展示。

そのパネル展示の答え合わせともなるガイドツアーも実施。どこを残して、どのようにリノベーションしたのかに触れながら、建物を周りました。オリジナルでデザインされた金物や照明器具、今ではあまり見かけなくなった渋めなスチールサッシなどをみんなで愛でつつ、当時の姿を残すという一風変わったリノベーションの方法を話しました。 

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ガイドツアーには、このビルをリノベーションする際に並行して検討していた建替案の見積をしたという方も参加していて、「仕事にはならなかったけど、残って良かった気がする」という言葉をもらったのが印象的です。 

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普段は入れない屋上も特別開放。ビルの扇形に沿った高速道路をすぐそばで見下ろす経験はここでしか味わえないかと。

 

お次は、江戸堀にある、日本基督教団大阪教会。

変化しながら受け継ぐ「日本基督教団大阪教会」

見学に加えて礼拝体験もでき、設計者が教会に込めた想いや歴史を知ることができました。
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この大阪教会の設計者ウィリアム・メレル・ヴォーリズは、“広く深い神の懐” を表現するために、当時主流だったゴシック建築ではなくあえてロマネスク様式を採用したそう。この教会の、包み込んでくれるような安心感はここからきてるんだな〜と感じました。

—ゴシック、ロマネスクって何?—
ゴシック建築・・・ 天に近づくように縦に伸びたデザイン。大きな窓やステンドグラスが特徴。
ロマネスク建築・・・横に広く、どっしりと安定した形。丸いアーチや、小さな窓が特徴です!

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この”ばら窓”は、礼拝が始まる[朝10時半]に光が一番入るように、かなり計算して設計されているとのこと。そのため、建物全体が真南より少し東向きに建てられています。それを知ってから外観を見ると… たしかに!!
ぜひ画面を上にスクロールして、外観をもう一度確認してみてください。道路に対して少し東向きにずれて建っているのがわかります。個人的には、この“光を計算した向き”が一番感動したポイントでした。

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ステンドグラスが好きです。

実はこのステンドグラスは復元で、元のステンドグラスは教会の歴史資料室に保管されています。
1989年にミラノで制作され、長年教会を見守ってきましたが、老朽化による破損があったみたいです。ゆっくり休んでほしいですね。

照明についても変化がありました。当時は天井から下がる電灯2つと柱の電灯だけでしたが、周囲にビルが建ち並んだことで内部がかなり暗くなったそう。
そこで、聖堂入口から見えない位置に照明を追加するなど工夫がされ、今の明るさが保たれています。

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たしかに、元の電灯しか見えないようになっている…!
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玄関の扉も何度も修復、取り替えされていますが、扉上の小さな彫刻模様は当時のまま。

時代とともにどうしても変化が必要になる部分がありますが、こうやって元の良さを残しながら、受け継がれていくんだなあと感銘を受けました。

働く「アートアンドクラフトオフィス」

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設計事務所であるアートアンドクラフトのオフィスでも、日々を営む執務スペース、打ち合わせスペースが公開され、シェアキッチンには飲食店さんが特別出店。天満橋を渡って北に進んだ場所に位置するこのオフィスも、建築めぐりを楽しんできた方や、通りがかりに思わず足を止めてくれた方まで、多くの方で賑わいを見せていました。

ふらっと入れる、街にフレンドリーな“間”、がコンセプトのオフィス1階のシェアスペース「MAU」は、普段からレンタルスペースとして借りられますので、ご興味のある方はぜひリンク先からお問い合わせください。

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住む場所だったり、働く場所だったり、お祈りの場所だったり、発信の場所だったり。どれも、今を生きる建築です。年々規模が大きくなっていく「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪」。来年以降も目が離せません。

 

期間

2025/10/25,26

URL

https://ikenchiku.jp/ikefes2025/