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【鹿児島県大崎町】3-Day Designing Camp Day 1 レポート

地域情報
2025.12.25

10月24日から26日の3日間、『3-Day Designing Camp』(主催:大崎町SDGs推進協議会)が開催されました。リサイクル率日本一16回を誇る、「未来の社会に一番近いまち」鹿児島県・大崎町を舞台に、循環型社会の未来を地域とともに実践的にデザインするプログラム「CIRCULAR VILLAGE DESIGNING」が令和7年度より始動し、その取り組みの一環となります。今回はDAY1の様子をレポートします。

real local 鹿児島で紹介した『3-Day Designing Camp』告知記事はこちら

【鹿児島県大崎町】3-Day Designing Camp Day 1 レポート
画像提供:大崎町SDGs推進協議会

3-Day Designing Campとは?

「未来のサーキュラーヴィレッジは、どんな姿をしているのだろう?」

「それは、どうやってデザインできるのだろう?」

3-Day Desinging Campは、鹿児島県・大崎町を舞台に、新しい循環型社会のデザインに必要な「ちから」を実践的に学ぶ、3日間の実践型プログラムです。

大崎町に暮らす住民、各地からの参加者、そして様々な専門分野をもつプロフェッショナルパートナーが一体となり、「もの」の循環はもちろん、循環の対象を「つながり」や「きおく」にも拡張しながら、未来のサーキュラーヴィレッジのあり方をともに考えていきます。

参加者の皆さんは、大崎町の住民の皆さんと一緒に、地域のリアルな暮らしを感じ、未来の循環型社会を描き、一歩目のプロトタイプをつくり、そして未来へつなげる実践を通して、地域におけるコラボレーションに求められる4つのちからに向き合っていきます。

【鹿児島県大崎町】3-Day Designing Camp Day 1 レポート
画像提供:大崎町SDGs推進協議会
【鹿児島県大崎町】3-Day Designing Camp Day 1 レポート
画像提供:大崎町SDGs推進協議会 3-Day Desiging Camp プロフェッショナルパートナー

チェックイン(チーム分け)

北は東京、南は福岡から総勢11名の参加者が集まりました。まず、鹿児島空港に集合し、大崎町へ。道中で自己紹介や、大崎町SDGs推進協議会の齊藤智彦さんとプログラムディレクターを務める株式会社KESIKIの九法崇雄さんのオープニングトークや、大崎町の歴史をまとめたPodcastを聴きながら、志布志市にある「埋立処分場」へ向かいました。

埋立処分場へ到着後、「ものの循環」「つながりの循環」「きおくの循環」の3つをテーマにしたチーム分けを行い、プログラムがスタートしました。

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大崎町SDGs推進協議会 齊藤智彦さんより参加者へ挨拶
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チーム分けはカードを引くことによって決定 引いたカードにより色が異なり、テーマも分けられる こちらは「きおくの循環」チームのカード
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「つながりの循環」チームのカード
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「ものの循環」チームのカード
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参加者にはTANEカードが配布され、「私のTANEカード」は「私を構成するもの」を記入した
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フィールドワーク用のTANEカード 気づきや違和感などをメモできるようにした

フィールドワーク:埋め立て処分場

フィールドワークでは「FMおおさき」でパーソナリティーを務める吉留李奈さんがガイドしてくださいました。

●吉留 李奈(よしどめ りな)
久徳建設株式会社の一級建築士として地域の暮らしと景観を支える一方、FMおおさきのパーソナリティとして町の声や魅力を発信している。また、多様な学びの場「なないろキャンパス」では支援員として子どもたちの成長に寄り添う活動も行っている。歌うことやピアノが好きで、演奏活動も行っている。専門分野や活動の垣根を越え、多くの人とのつながりを大切に、「地域の明るい未来をつくりたい」と考えている。

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今回、フィールドワークのガイドを担当してくださった「FMおおさき」パーソナリティー 吉留李奈さん
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埋立処分場 高台から見た風景

大崎町と志布志市は共同で「埋立処分場」を管理しており、こちらには約4万5千人分の一般ごみが搬入されています。焼却炉がないため、可燃ごみは埋立されますが、25年以上にわたる分別とリサイクルの取り組みにより埋立量は大幅に減少しました。

・生ごみや剪定くず(割り箸・草木)などが主なごみで、「大崎有機工場」で堆肥化される。

ユニ・チャーム株式会社と共同研究(大崎町と志布志市)を行い、紙おむつのリサイクルプロジェクトが進行中。これまで埋め立て処分されていた紙おむつが新たな資源として生まれ変わっている。

・住民の分別意識が高まり、埋立量が平成10年から平成30年の間に85%減少したが、複合素材や衛生用品のリサイクルには課題が残っている。
・温室効果ガスの管理も重要で、埋立によるメタン発生が指摘されており、技術開発や日常生活における環境意識が求められている。 

など、クイズを交えながら説明が行われました。

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パネルを使用しながら、埋め立て処分場の仕組みを説明
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埋め立てられたごみの一部
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参加者からの質問を交えながら、フィールドワークは進められた
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真剣にメモをとる参加者
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フィールドワーク中に撮影した写真をグループ内で共有し、アイデア出しの材料として使用するよう参加者にアナウンスがあった

レクチャー:合同会社メッシュワーク 水上優さん

次は、ランチの時間へ。ランチを楽しんだ後は、今回プロフェッショナルパートナーとして参加してくださった「合同会社メッシュワーク」の水上優さんのレクチャーが行われました。

●水上 優(みずかみ ゆう)
人類学者。合同会社メッシュワーク共同創業者。国際基督教大学、京都大学大学院にて文化人類学を修了後、米国系 IT 企業にて勤務。その後、UX コンサルティング企業にてメーカー等の UX 企画に携わる。2022 年にメッシュワークを創業以降、人類学的視点を企業やあらゆる組織でのリサーチやプロジェクトに取り入れるべく、実践と研究を続けている。

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合同会社メッシュワーク 水上優さん 今回のプログラムのプロフェッショナルパートナーも務めた

人類学をもとにしたコンサルティングやフィールドワークを通して企業と地域の関係性づくりといった事業を展開されている水上さん。特にフィールドワークでは日常の中で当たり前として見ているものに対して以下の心得が大事だと話がありました。

・五感で感じる
・視点を変える
・立ち止まってみる
・面白がる気持ちをもつ
・見えてきたものをその場で言語化する(その場でできない場合は、後で思い出しながら言語化するのもOK)
・俯瞰的にみる
・現場で起きていることに身をまかせる

そうすることで小さなことでも気づくきっかけになるといいます。

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講義はランチも兼ねて、N.garage(エヌガレージ)にて行われた

また、宮本常一・安渓遊地『調査されるという迷惑』みずのわ出版、2024年(※)を例に挙げ、フィールドワークを行う上で心構えについて話がありました。

「私たちはまちの外からやってきて、相手の日常生活にお邪魔しているという意識でフィールドワークに臨んでほしいです。私たちとは違う生活をする人たちの営みに入り込むことで新しい発見につながると思いますが、その時に思い込みを外す必要があります。思い込みを一旦脇に置き、受け入れてくださる相手のペースに合わせて相手の日常の中に入っていく姿勢、つまり、相手の世界を謙虚に知っていく来訪者になっていくことが大事なんです。」

(※)宮本常一と安渓遊地による書籍。調査者側の視点だけでなく、調査対象となる地域の住民や人々の立場を考慮した調査のあり方を問い直す内容となっている。

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水上さんがフィールドワークを行う上で推奨した『調査されるという迷惑』(宮本常一 著)

続けて、こう語りました。

「フィールドワークの際、相手のことを住民や取材対象者というふうに見てしまいがちですが、それはその相手の一側面でしかありません。職場や家庭、地域などによって立ち位置や役割も変わってくるということを意識するだけで、見えてくるものも変わってきます。それは人だけでなく、モノだってそうです。たとえば、ごみも私たちがモノにごみという役割を与えているだけで物質ということには変わりありません。それに違う役割を与えるだけで違う何かが見えてくるはずです。」

「“わかりにくい”や“曖昧”だったりする部分にこそ、新しい問いの種や誰も気づかなかった営みの一面が潜んでいます。そこを意識しながらフィールドワークに臨むと有意義な時間になると思います。」

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フィールドワーク:大崎有機工場

講義の後はフィールドワークが再開され、「大崎有機工場」へ。

大崎有機工場は生ごみと草木を1対1の割合で混ぜて堆肥化する施設で、生ごみと草木を混在させることで土壌菌が誕生し、その微生物が活動しやすくなる仕組みとなっています。

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堆肥化プロセスの案内をする前に「大崎有機工場」の概要説明があった

堆肥化プロセスについては以下のような説明がありました。

・原料の準備
草木は破砕され、生ごみは家庭から青いバケツで回収される。生ごみの水分はおがくずで吸収される。

・発酵プロセス
細かくした生ごみと草木チップを混合し、一次発酵ピットに投入。高温(80〜90度)の微生物活動が行われる。

・選別と二次発酵
一次発酵後、ふるいにかけて大きな塊を再処理し、二次発酵でさらに熟成。約6か月の発酵を経て完熟堆肥が完成する。

・製品化
完熟堆肥は袋詰めされ「おかえり環(かん)ちゃん」として販売される。そのち約7割を施設内の農業部門「ななくさ農園」で使用し有機野菜が栽培される(残りは一般向けに販売)。

このプロセスは25年以上続いており、住民説明会の毎年開催、町役場や各集落の班長が集まった勉強の開催など、地道な積み重ねが完熟堆肥の持続的な生産につながっていると話がありました。

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週に3回収集されてくる生ごみは水分が多いため、おがくずで水分を吸収しているという
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一次発酵された堆肥 温度は80~90度にもなるという
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一次発酵が終えた堆肥
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二次発酵の前に1ヶ月経過した堆肥をふるいにかけている
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二次発酵の説明をする様子

フィールドワーク:そおリサイクルセンター

フィールドワークの最後は「そおリサイクルセンター」へ。こちらはリサイクルの中間処理施設で、ごみ・資源ごみの検査、圧縮、運送を行っています。

施設規模は10万人規模で、大崎町や志布志市、曽於市の資源ごみ、宮崎県の日南市・串間市のプラスチックごみを受け入れています。

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そおリサイクルセンター2Fにて こちらではペットボトルと発砲スチロールの選別や圧縮、資源化の説明があった
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圧縮された発泡スチロール

施設内ではペットボトル・プラスチック・発砲スチロール・瓶・缶・紙おむつ・廃食油・金属などのリサイクル工程を見学しました。

・住民による徹底した分別がされていること(ペットボトルやプラスチックはしっかり洗って捨てているなど)
・人の手により選別作業が丁寧に行われていることから品質を確保できている

上記2点が「そおリサイクルセンター」の高品質で効率的なリサイクルにつながっていると説明がありました。

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そおリサイクルセンター1Fにて こちらでは缶や瓶の選別や資源化の説明があった
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缶を圧縮したもの 重いもので10~15kgほどあり、高い価格で取引されるという(1kg200円前後)
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そおリサイクルセンター職員が一つひとつのごみを丁寧に手作業で選別している
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手作業で選別されたごみたち
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参加者が職員にインタビューするシーンも

グループワーク:Day1 振り返り

フィールドワーク終了後は「くにの松原キャンプ場」へ。管理者で「アウトドアネットワーク株式会社」の堀之内裕行さんからの以下の話がありました。

●堀之内 裕行(ほりのうち ひろゆき)
1999年より、くにの松原キャンプ場の管理・運営に携わり、現在で26年目。キャンプ場やプールの指定管理にとどまらず、異業種交流会の企画や近隣NPOとの協働など、地域の人と人をつなぎ、まちが元気になる循環づくりを続けている。 また、大隅半島に残る戦争遺構を歩き、語り継ぐ「戦跡ナビゲーター」としても活動。土地に刻まれた歴史と向き合いながら、次世代へつなぐ役割を担っている。

・松林は地域の産業(酒造、養鰻、農業)を支える重要な役割を果たしているが、近年管理が放置され、松の世代交代や広葉樹林化が進んでいる。

・生活様式の変化や維持費の問題により、松林の防風機能が弱まり、毛虫の大発生が頻繁に起こり、松の葉が食べ尽くされている。

・そのような状況が続けば、地域の産業に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

・持続的な管理や地域の協力が必要。

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振り返りの前に「くにの松原キャンプ場」管理者の堀之内さんからキャンプ場の説明があった

その後、フィールドワークの振り返りとして、個人ワークの時間を設け、それをもとに参加者同士で想いのシェアを行い、Day1が終了しました。

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まずは個人ワーク 一日の振り返りを配布された「TANEカード」へ記入
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初対面同士の参加者も徐々に打ち解け、笑顔が見られるシーンも増えてきた
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TANEカードにはそれぞれの疑問点や想いが多く言語化され、話が尽きなかった

夜は参加者や事務局、大崎町内で活動されている皆さんを含んだ懇親会を開催しました。

次の記事ではDay2の様子をレポートしたいと思います。

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屋号

3-Day Designing Camp

URL

https://gassaku.co.jp/news/news-540/