【移住者インタビュー】 人生はDIY。自由に、カラフルに。「世界の雑貨 サポテコ」 通堂拓哉さん
国道13号を走っていると、「あれ?」と目を惹く白い建物があります。
いくつもアーチ窓が並んだレトロな外観。可愛いステンドグラスがはめ込まれたパステルカラーのドアを開ければ、ふんわり異国の香りと共に楽しい世界が広がっています。

「世界の雑貨 サポテコ」。
その店名は、天文学や数学に優れていたとされるメキシコの先住民族「サポテコ族」から。イエロー、ピンク、ブルー……カラフルに彩られた店内に、所狭しと並ぶ異国のアイテム。メキシコ先住民の人々が刺繍した愛らしい『チアパス人形』や、ドクロをモチーフにしたユニークな民芸品『カラベラ』といったメキシコを中心とした中南米の雑貨たち。絶妙な色使いや面白い造形で、作り手の技や温もり、遊び心を感じます。

「いらっしゃいませ」。
柔和な笑顔で迎えてくださったのは、店長の通堂(つうどう)拓哉さん。
山形では、なかなか巡り会えない珍しい苗字です。エキゾチックな風貌も、山形ではちょっと見かけないタイプかも? けれど、話し始めると楽しくてつい長居しちゃう。親しみやすくて穏やかな好青年。オリジナリティーがあって、いつでも自然体です。時々、何となくお店に立ち寄ると、通堂さんとニコニコ笑って話しているお客さんがいたりして、雑貨を見に来る=通堂さんに会いに来る、という人も多いだろうなぁ…と思うのです。
通堂さんがここ山形で、素敵なお店を作るまでのストーリーを聞いてみました。
「通堂さん、ご出身はどちらですか?」

通堂さん:岡山県出身です。若い頃からファッションが好きで、高校時代は自分でアレンジした制服を着て登校していました。その頃から髭も生やしていましたし、高校が進学校だったこともあって、もしかしたら周囲から少し浮いた存在だったかもしれないですね(笑)。例えば、いわゆる「オタク」と呼ばれるような主張のある人を「かっこいい!」と感じますし、まわりにどう思われるかは気にならないです。
京都の大学に進んだ通堂さんは、卒業後に一般企業へ就職する道を選ばず、アルバイトで資金を貯めてニュージーランドへ1年近く留学しました。その目的は、「スノーボードの聖地で滑ること」と「英語を身につけること」。帰国後は、長野や山形(蔵王)でリゾートバイトの日々を過ごしたそうです。長野のバイト先で河北町出身の智美(さとみ)さんと知り合ったのが縁で、15年前に山形へ移住しました。
山形へ来た時から、お店を開こうと思っていたのでしょうか?
通堂さん:山形に来てから、飲食店やロッジ、リサイクルショップなどで働きました。サラリーマンは向いていないと感じていて「いつかは自分の店を持てたらいいな」と考えてはいました。料理が好きなので飲食店も候補でしたが、実際に飲食店で働いてみると、同じメニューを作るのは飽きっぽい俺には向いていないと思った。ロッジの経営もどうだろうと考えたけど、(スノーボードで)一番遊びたい冬が最も忙しいですし……。
リサイクルショップの店長をしていた時、「雑貨ならいろいろな商品を取り扱うから、飽き性の自分に合っていそう」と思い立ちました。扱う雑貨は外国のもの、しかも原色が好きなのでメキシコあたりがいいな、と。そこで、東北のさまざまな輸入雑貨の店主を訪ね歩いてリサーチをしてから、メキシコへ行きました。
初めての買い付けでしたが、事前にインターネットで宿や市場をきちんと調べて行けば何とかなるものです。現地で出会った日本人バックパッカーの方には「絶対に携帯を持って歩くな」といったアドバイスをもらったけど、普通に携帯にメモをしながら町を歩いていました。海外ではいつもお金がないような恰好を心掛けていますし、日本人と思われないことも多いので、危険な目に遭ったことはないですね。

無事に買い付けを済ませ、山形市青田の13号沿いにある古い建物を借りて、2013年に念願の自分のお店をオープンしました。内装はほぼすべて自分たちでDIYをして、1階は「サポテコ」、2階は智美さんの美容室&スパ「ronronner(ロンロネ)」として、素敵な空間に仕上げました。

この場所で10年間お店を続けた後、同じ13号沿いを北へ向かい天童市に入る少し手前に、現在の場所(山形市新開)の中古物件を見つけて、一昨年に移転をしました。
1店舗目も2店舗目も、築5、60年は経っているだろう古い建物。それが通堂さんの手にかかれば、1階はカラフルで遊び心あふれる雑貨屋、2階はプロヴァンス風の素朴な温もりと解放感あふれる美容室へと生まれ変わったのですから、驚きです。ことに美容室に関しては、カウンターには天然木一枚板を使用する一方で、細部には安い端材を使いトータルでかかる費用をしっかりと節約しつつ、高級感もある空間に仕上げています。
通堂さんの実家は町工場で小さい頃からもの作りには親しんできたそう。それにしても、床張りから壁塗り、美容室の設備などほとんど自分で手掛けてこの仕上がりは、もうプロの域です。
通堂さん:13号沿いにあると(車の通りが多いので)、「あれ、何の店?」と気づいてもらえるメリットがあります。また、古い建物であれば購入費用が安いですし、新しい建物よりも改装するにあたっての自由度が高い。内装を自分でするメリットは、費用の節約と自分のイメージ通りにできることです。きれいすぎる作りが好きではないので、外国のリアルな手抜き感……良い意味での『いい加減感』のようなニュアンスを業者さんに伝えるのは難しい。
お金をかけないでイメージを形にするのは、工夫と労力無くして為せません。どちらも惜しみなく絞り出します(笑)



サポテコを経営するうちに、さくらんぼの剪定枝から作った糸を使用したアクセサリーワークショップの講師の依頼なども舞い込むようになった通堂さん。ほかにも、智美さんの実家の果樹園でさくらんぼの収穫を手伝ったり、知人に誘われて週に3日ほど飲食店で蕎麦打ちの仕事もしています。
いつの間にか、さくらんぼや蕎麦といった山形ならではのものに関わるお仕事もしていますね。

通堂さん:若い頃は自分がやりたいことだけをやってきたように思います。でも、近頃こうも思うのです。誰かに「やってみない?」と勧められたことを一度本気でやってみると、それが自分の糧になることがある。蕎麦打ちやさくらんぼに関わることで、県外の人や海外の人に山形や日本の文化の話ができるようにもなりました。自分が暮らす地域ならではのものに詳しくなると、良いことがあるなと感じます。
故郷・岡山を出てから、京都、ニュージーランド、長野、山形……山形に来てからも買い付けで、様々な国を旅したそうですね。どこの風景が一番印象に残っているのでしょうか?
通堂さん:どの土地も、素敵な風景があります。山形の冬の風景も好きだし、ニュージーランドの自然や、買い付けに行ったメキシコの街並み、カンボジアでトゥクトゥクに乗りながら眺めた田舎の景色も良かった。いつか、違う土地にも住んでみたいという気持ちはあります。初めての土地を散歩するのは楽しいですからね。


身につけるファッションや、過ごす空間。そして、進む道も……。自分の「好き」に正直に、自由でいい。通堂さんと話していると、そんな当たり前のことに気づきます。
好きな色を大切にしつつ、自分に似合う色も発見していく。そんな風にして人生はよりカラフルに、深みを増していくのでしょう。
ちなみに、通堂さんは「マクラメ」作家でもあります。「マクラメ」とは、道具を使わず指先だけで紐を編んで緻密で美しい模様や形を作る技法。アクセサリーや装飾品など様々なものが作れます。通堂さんの書いたマクラメの書籍は、日本アマゾンランキング手芸部門1位、米国アマゾンで英語版が1位を獲得したことがあります。
マクラメ教室も随時開催しているそうなので、興味がある方はぜひ。※要予約
たくさんの色の紐や飾りの中から好みやバランスを考えて選び、編み上げる。これもまた、ちょっとした「自分探し」の時間と言えるかもしれませんね。



世界の雑貨 サポテコ
山形市新開2-10-7
https://www.instagram.com/zapoteco.co/
https://www.zapoteco.jp/
photo:佐藤鈴華(STROBELIGHT)














