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【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん

インタビュー

2023.03.24

鹿児島県肝付町にて和菓子教室(以下:教室)を開催されている『和菓子工房千賀(せんが)』の柳元千賀さん。そんな千賀さんから教室を開催されるに至った背景等についてお話を伺いました。千賀さんのサポート役でもあるお母さんの柳元ますみさんにも同席していただきました。

【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん

見えないモノとの闘い

肝付町で生まれ育ち、高校卒業後は県内の大学へ進学された千賀さん。

教育分野で学ぶも「教育と違う道があるのではないか?」と感じ、大学卒業後は違う分野の仕事をいくつか経験されました。

「大学の友人たちは自分の決めた道を進んでいるのに、私は何をしたいのかすら、わかりませんでした。このままでいけないといった焦りの気持ちもあって。」

「私たちがいる世界がもっと豊かになるにはどうしたらいいのか。そこを大切にしたい気持ちがあって、教育と違う道を歩んでみよう。そう思ったんです。」

しかし、様々なことが折り重なり、肝付町へ戻ることになります。

「地元に戻ってからは両親の仕事を手伝いながら、妹の出産に備えたサポートをしていました。」

「数ヶ月経ってからのことです。体の節々に痛みを感じるようになってきて。次第に立つどころか、動けなくなってしまったんです。」

色々な医師に診てもらうも、原因がわからず。

そこで、意を決し検査を受けることにしました。

【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん
和菓子工房千賀 柳元千賀さん

そこで判明した病気はリウマチ性疾患の1つでした。

「なったものは仕方ない。そう思いながらも、不安と怖さが大きくなっていきました。」

「病気について調べれば調べるほど、怖くなる一方でした。受けていた治療に対する不安も大きくなって、試せることは全部試してみました。」

「病気が判明するまでは親子喧嘩ばかりしていました。どうしても目に見えない病気なので。」

「車椅子生活になって、何をするにも誰かの手を借りないといけない状態でした。このままずっと介護生活なのかなと思っていました。」

ますみさんも当時のことをこのように振り返ります。

「最初は私たちの仕事の手伝いをしたくないのかなと思っていたんです。あんなに元気だった千賀が“まさか”と。これから先のこともあるから“私と痛みを分けることができたら、変わってあげられたら”と何度も言いました。」

そんな生活が1~2年程続いたある日のこと。

千賀さんにとって新しい道筋が見出す出来事が起きるのです。

【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん
千賀さんのお母さん 柳元ますみさん

“伝える”その先に広がるもの

千賀さんは肝付町に戻る前から、休日を利用し、和菓子教室へ通っていました。

きっかけは職場の同僚が手作りの和菓子を見せてくれたことからでした。

「心の底から感動して“私もやってみたい”と思ったんです。そこから教室に通うことにしました。」

「目の前で色々なカタチのお菓子になっていくこともですし、何より先生が素晴らしくて感動してばかりでした。その時は、それが将来自分の仕事になるとは思ってもいませんでした。」

「病気になってからも、車椅子生活になっても気分転換にお稽古に通い続けました。母が同行してくれて、体がうまく動かない時は、ペアを組んで“こうして!”と声かけしながら母に作ってもらい、私は作り方を必死に覚えていきました。」

そんなある時、先生が実家へ急にやってきて、千賀さんに力強く言い放ったことがあったそうです。

“千賀ちゃん、家で和菓子教室をやってみなさい!”

“口は動くんでしょう?手はお母さんが動くんだから、手伝ってもらえばいいんじゃない?”

“材料は私が何とかするから!”

「先生の言葉は心強かったし、嬉しかったです。自分が好きなことでもあったので、道が拓かれた気がしました。」

2017年の秋。
和菓子工房千賀(せんが)』として開業し、和菓子教室を開催することになります。

【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん
写真提供:和菓子工房千賀 和菓子教室での一コマ
【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん
写真提供:和菓子工房千賀 和菓子教室で教えた品の1つ

開業最初は実家の一角を使い、お母さんの友人に声かけをしていきながら、月に数組のペースで無理なく開催していきました。

参加者からの口コミもあり、少しずつ生徒が増えていったといいます。

「回数を重ねるごとに要領を掴んできて、開催日数や品数を増やしていきました。」

「次第に楽しい気持ちになってきて、体調がどんどん良くなってきたんです。次に繋がっていく感覚がして自信にもなりました。」

「実は、最初の生徒は母でした。一緒に流れや段取りを確認してもらって、その上で教室に臨みました。今でも時々喧嘩をしますが、貴重な存在です。」

嬉しいことに生徒さんが自宅で作った和菓子を持ってきてくれたりすることもあるんだとか。

最近だと、教室の生徒さんが“子供も和菓子を作れるようになったよ”という報告があったそうで、そのことを笑顔で教えてくださいました。

「“私はなんて幸せなお仕事をしているんだろう!”って思いました。だって、伝えたその先に、会ってもいない誰かの笑顔に繋がっているんですから。」

「“自分でも出来た”“この喜びや学びを誰かに伝えたい”と思ってもらえるような時間にしたいと常に意識しています。」

「身近な食材を使ったり、食材ロスを無くしたりすることで、普段から皆さんが作りやすい和菓子を教えていきたいです。」

【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん
写真提供:和菓子工房千賀 あるお茶会で提供した和菓子
【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん
写真提供:和菓子工房千賀 イベントで販売した和菓子

今を長く続けることで

妹さんも時間があればサポートに入り

家族一丸で教室を開催できるようになってきました。

生徒さんにも恵まれ

毎回温かく、楽しい雰囲気の時間が流れていくといいます。

「たまに、母や妹と連携がうまくいかず失敗することもありますが、そんなことも生徒さんは笑顔で“いいよいいよ、ゆっくりやろう”って言葉にしてくれます。」

「インスタや口コミで知り、毎月欠かさず通ってくださる方がたくさんいらして、そういう方がお友達を連れてくるパターンが多いです。世間話や冗談を言いながら、手を動かしている光景を見ていると微笑ましくなるんです。」

「偶然ですが、生徒さんが学生時代の友人だったりすることもあります。和菓子教室を開催するようになってから繋がりも選択肢も広がってきました。」

そんな千賀さんに今後の展望について伺いました。

「大きなことを成し遂げたいとか、そんなことは全然思っていなくて。とにかく“今を長く続けられたら”と思っています。」

「体調と相談をしながら、無理なく“伝える”ことを繰り返し続けていくことが大事だと思います。」

「私自身が先生の和菓子教室に通い続けたのと同じで、何かしらずっと積み重ねていれば、その先に違う新しい何かが待っているのかもしれません。」

【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん

最近はお茶会で和菓子を出してほしいといった依頼もあるんだとか。

「テーマに合わせて味の組み合わせやデザインを考える時間が楽しいです。」

「私にしかできない、私なりのお菓子を伝えていきたい。そんな気持ちも出てきました。そのために、地道な日々の積み重ねが大事だと感じています。」

最後に千賀さんを支えてくださっているご家族への感謝の言葉がありました。

「母は私が教室で失敗すると、さりげなく助言してくれるんです。母でもあり、仕事を支えるパートナーでもあって、お互い切磋琢磨できる存在です。」

「妹も私ができない力仕事や下準備を楽しそうにサポートしてくれます。」

「父からは事業を行う上での基礎や地域を想う心を、日々の生活を通して教えてもらったと思います。教室を始めてから、それが今の私の暮らしやルーツに繋がっていると気づきました。」

「“お願い、手伝って”と安心して託せるので、生徒さんに教えることに専念できます。自分の想いを実現するために一生懸命になってくれる母にも妹にも感謝しかありません。」

「できることが限られている中で、自分たちのペースで歩いていきたいし、無理なことをしたくない。これからも、家族の力を借りながらですが、“伝える”ことを小さく続けていこうと思います。」

【鹿児島県肝付町】家族と一緒に“伝える”を小さく続けること / 和菓子工房千賀 柳元千賀さん

屋号
 和菓子工房千賀(せんが)
URL

https://www.instagram.com/senga_wagashi/

住所
鹿児島県肝属郡肝付町後田2633-2-1
備考

●教室の開催について

各月の予定をインスタグラムにて発信されているので、そちらからご確認ください。

●開催場所について

コインランドリーこうやまの隣にある緑の扉です。

●和菓子教室の動画

こちらの動画から様子をご覧になれます。