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【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店

お店の情報

2023.04.13
【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店
左:奥様の鈴木洋子さん、右:6代目の鈴木良浩さん

今や日本の食卓に欠かすことのできない醤油。

そんな醤油を130年以上前から受け継いだ製法で、いまもつくり続けている醤油蔵があります。場所は福島県の中通りに位置する天栄村、蔵の名は「鈴木醤油店」。

今回取材させていただいたのは「鈴木醤油店」6代目の鈴木良浩さんと奥様の洋子さん。

醤油の仕込みまっただ中の2月下旬、蔵を案内していただきながら醤油づくりのこだわりと、昔ながらの製法を受け継いでいる理由を伺いました。

経験値と感覚を頼りに。マニュアルのない仕込み作業

【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店

良浩さん:それでは醤油づくりの工程に沿って蔵の中を案内していきますね。

ーー よろしくお願いします!

良浩さん:醤油の主な原料は大豆と小麦です。まずはじめに発酵のスターターとなる麹菌が繁殖しやすい環境をつくるために、大豆は一晩水に浸けて蒸し、小麦は煎った後に砕きます。要は人間が食材に火を通して食べやすくするのと同じで、菌が食べやすくなるように原料に熱を加えて柔らかくするんです。

【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店
良浩さんが大豆を蒸す用に改造した木桶。蒸気を送り込んだ後は手作りの蓋をかぶせる。

ーー こちらの木桶はどのように使用しているんですか?

良浩さん:これは大豆を蒸すのに使っていて、木桶の下にのびているホースから蒸気を送り込んでいます。木桶で大豆を蒸している醤油屋は今ほとんどないみたいですけど、うちでは昔からこの方法でやっています。

【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店
実は小麦を焙煎する用の機械ではないんだとか。

ーー 隣にある機械は何ですか?

良浩さん:小麦を焙煎するのに使っている機械です。大きい工場だと小麦を入れたら自動的に丁度いい焙煎具合で出てくる専門の機械があるんです。そういったものを使えば一度にたくさん焙煎できるんですけど、うちでは小さい機械を使っているので、少量の小麦を繰り返し入れて焙煎しています。

ーー 仕込み作業のマニュアルのようなものはあるんですか?

洋子さん:機械化が進んでいる大きな工場であればマニュアルはあると思いますが、うちにはありません。というか、マニュアル化できないんです。

ーー マニュアル化できないのはなぜですか?

洋子さん:素材ももちろん大切にしているんですが、うちでは素材の良し悪しよりも工程の中で「いかに手間をかけていくか」を大切にしています。そのため、原料を仕入れるときは、国産であることだけを指定し、種類や大きさはまったく指定していません。そのため、届いたものによって大豆は蒸し具合、小麦は火力や機械の回転のスピードを、「経験値と感覚」を頼りに試行錯誤しながら変えています。

ーー 醤油屋さんって、もっと機械化されているイメージがありました。

良浩さん:そのイメージ通り、醤油は工場で精密につくられているのが今のスタンダードです。その方が安定しておいしい醤油が作れますし、とても合理的なんです。それに、そういったつくり方をしているところがなかったら、日本中で使う醤油を確保することはできません。幸い、日本には安くておいしい醤油がいっぱいあるので、私たちはこうやって自由にやらせてもらってます。

菌たちと共に汗をかき、醤油をつくる

【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店
洋子さんが持っている麹蓋(こうじぶた)で麹づくりをしている。

ーー 次の工程は何でしょう?

洋子さん:次は醤油づくりにおいて一番重要な麹づくりです。うちでは創業当時から「麹蓋製法」で麹をつくっています。まず、火を通した大豆と小麦にカビの一種である粉状の麹菌を混ぜ、それを麹蓋という木製の蓋に入れます。

【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店
麹室

洋子さん:次に、麹室(こうじむろ)という部屋に麹蓋を互い違いになるように積み重ねていきます。麹菌自身はおいしい麹をつくろうという意思はないので、わたしたち人間の手で麹菌がうまく繁殖し、いい麹ができる環境づくりをする必要があるんです。

ーー いい麹をつくるためにどういったことをしているんですか?

洋子さん:とてもシンプルですが、温度管理です。麹菌はわたしたちと同じく生き物なので、活動することで熱を発生させるんですが、そのまま放置してしまうと空気中にいる納豆菌の活動が始まってしまい、麹蓋の中身が納豆になってしまうんです。そのため、麹蓋の位置を上下入れ替えたり、中身を冷ますために手で混ぜたりします。4日間、様子を見ながらその作業をこまめに続けることで麹ができあがります。

良浩さん:醤油は基本、1〜3月の寒い時期にしか仕込めません。そのため、経験値が積み重なっていきづらいんです。だからこそ、うちは小さくてもいいからできるだけ毎年チャレンジをしようと心がけています。たとえば、これまでは大豆と小麦を麹蓋に入れる前に混ぜていたので、大豆と小麦のバランスがどの麹蓋も一緒でした。
しかし、今年からは一度に全量を混ぜるのではなく、麹蓋に入れる毎に少量ずつを混ぜるように変えました。そうすることで、微妙に小麦が多かったり大豆が多かったりと、バランスが不均一になり醤油の味に違いがでるのではと思い、今年から混ぜ方を変えてみました。

洋子さん:うちの醤油は熟成期間が2〜3年と長いので、毎年チャレンジをしないと次にチャレンジできるチャンスが2年後3年後になってしまい、自分の年齢ばっかり増えて、経験値が積み重なっていかないんです(笑)原料によって仕込み方を微調整したり、チャレンジをしやすかったりするのは小規模でやっているうちの強みですね。

昔ながらのつくり方はリスクと隣り合わせ

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木桶の高さは約2m。台に乗って櫂入れをする。

良浩さん:次は、できあがった麹と塩水を混ぜた諸味(もろみ)を木桶の中に入れ、発酵・熟成をさせます。夏になると、菌たちの活動が活発になりガスを出すんです。そのガスを抜いて発酵・熟成がうまくいくように、「櫂入れ(かいいれ)」という櫂棒で混ぜる作業をします。それがまた大変で、毎年筋肉痛になりながらやってます。

ーー 役割分担はしているんですか?

洋子さん:櫂入れはかなり力がいるので夫がやってくれていますが、その他の作業は5代目である夫のお父さんを合わせた3人でやっています。

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中央の棒状のものが櫂棒。長さは約2m。

良浩さん:無理しているところも少しあるんですが、醤油づくりを継続していくことを踏まえて、一回で仕込む量を減らしたり工夫をしながらやってます。ただ、一回の仕込みの量を減らしたら麹のでき具合がよくなったりと、試行錯誤するなかでさまざまな発見があるんです。

洋子さん:諸味の熟成と発酵がいい具合に進んだら、次はそれを袋に入れて絞ります。搾った醤油は寸胴に入れ、発酵を止めて、香ばしさを出すために「火入れ」という熱を加える作業をしていきます。火入れが終わったらろ過をし、最後に瓶詰めをして完成です。

良浩さん:90Lほどしか入らない小さい寸胴で火入れをしているのは、日本でうちだけだと思います。うちは小さな蔵ですし、昔ながらの製法でつくっているので、他の小規模な醤油屋さんが1年に作る量の1ヶ月〜2ヶ月分くらいしか年間かけて作ってないですね。

ーー 自然にまかせた昔ながらの製法は常にリスクと隣り合わせとも言えますよね。それに、醤油づくりの工程において毎年チャレンジをしているとお話がありましたが、失敗することへの恐怖はないんですか?

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洋子さん:もちろんありますよ。怖さの方が多いくらいです。でもやっぱり、自分たちにしかできないことをやりたいんです。昔ながらの製法で醤油をつくる蔵が減ってきているなかで、うちはせっかく受け継いだ古い道具もありますし、その環境の中で自分たちにしかできないことって何だろう。そう考えると、やっぱりチャレンジをしていくことなのかなと思います。
むしろチャレンジを止めてしまったらうちの蔵じゃなくなっちゃう。だから、「手作りの醤油をいかに美味しく仕上げていくか」というミッションを自分たちに勝手ながら掲げて、醤油づくりをしています。

おいしければ味の変化はよし。あるようでない、鈴木醤油店の味

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良浩さん:うちのつくり方は自然まかせなところがあり、どんな醤油ができるか分からない怖さもあります。それに、答えがないつくり方なので悩むことも多いですが、「怖さ」や「難しさ」があることで飽きないですし、むしろ私は面白いと思ってます。ゲームだって簡単だとすぐ飽きてしまうじゃないですか。

ーー 怖さが面白い。

良浩さん:うちでは昔ながらのつくり方で醤油づくりをしていますが、実は昔のつくり方でつくればおいしい醤油ができるとは思っていないんです。

洋子さん:正直、木桶ではなくプラスチックでできたFRPタンクで醤油を仕込んだ方が、洗練されたおいしい醤油をつくることができますからね。

【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店

ーー ではなぜ、昔ながらの製法で醤油づくりをしているんですか?

良浩さん:機械的に醤油づくりをする方法は確立されました。一方で、昔ながらのつくり方は確立される前に途絶えてしまったので、ある意味、発展途上なんです。だからこそ、うちの蔵が受け継いできた製法をまねるのではなく、活かして、アップデートしていきたいんです。

洋子:製法だけでなく、味に関しても「お客様がいま求める味」にアップデートし続けていきたいと思っています。そのため、人の手がかけられるところは変えませんが、おいしい醤油がつくれるのであれば、新しい道具などはどんどん取り入れていこうと思っています。

【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店

ーー 鈴木醤油店の醤油は独特のコクがあると私は感じます。ご自身では味の特徴をどのようにとらえていますか?

良浩さん:毎年味が変わるので、うちの蔵らしい味はあるようでないと思っています。そもそもうちは味の正解を定めていないですし、原料の種類もつくる環境も毎年違うので、同じ味になりえないんですよね。

洋子:わたしたちは、お客様が醤油を口に運んだときに「おいしい」と思ってもらえれば、同じ味にならなくていいと思っているんです。でも、なんとなくうちの味になるのは、蔵にいる菌たちのおかげなんですかね。「今年はこんな感じか」と、違いをわかっていただける醤油をつくれたら面白いですし、それをおいしいと感じていただけたらいいなと思っています。

ーー 日本酒のようにその年ごとに味の違いを楽しめる醤油、新しいですね!それに、いつも家で使っている醤油と食べ比べてみるのも楽しそうですよね。

洋子さん:まさに、わたしたちはお客様の家庭に2種類の醤油があるようになってほしいと思って、日々醤油づくりに励んでいます。つまり、醤油業界の裾野を私たちなりに広げていきたいんです。

ーー 製法も味もアップデートし続ける鈴木醤油店の醤油。今後どのように変わっていくのか楽しみな方も多いと思います。

良浩さん:その期待に応えられるよう、頑張っていきます!

【福島・天栄村】昔ながらのつくり方はまだまだアップデートの余地がある 鈴木醤油店

鈴木醤油店の醤油をお買い求めの方は以下から↓
https://hishiogura.jp/buy/

鈴木醤油店では一般の方へ蔵見学の受け入れも行っているそうです。詳細は公式サイトでご確認ください。

名称

鈴木醤油店

URL

WEBサイト:https://hishiogura.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/hishiogurasuzuki/

住所

〒963-0501 福島県岩瀬郡天栄村大字牧之内字矢中2

TEL

0248-82-2020

営業時間

9:00〜17:00

定休日

日曜日

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