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【福島県白河市】「食は情景とともに」/「TAVATA」 石川正子さん

インタビュー

2024.04.05
【福島県白河市】「食は情景とともに」/「TAVATA」 石川正子さん
石川さん、お店のエントランスにて

福島県白河市に週に二日間しか営業しない、すぐに予約でいっぱいになってしまうレストランがあります。SNSで投稿される料理はいつも美味しそうで、私自身どうしても行きたくて取材をすることにしました。お店の名前は「TAVATA」。「食は情景と共に」というお店のコンセプトを掲げ、経営されている石川正子さん。レストランだけでなくヨガの先生や料理教室、マルシェなどのイベントにも数多く出店されています。今回はそんな石川さんにお話をうかがいました。

―お店を始めたきっかけを教えてください。

そのうちお店をやりたいなぁという目標は若い頃からありました。私、父の会社で20年間、仕事をしていたんですよ。そこで40歳まで勤めていて、その間にもアルバイトで食に携わることはしていました。とにかく食べることがすごく好きだったんですけど、作ることにもすごく興味があって。お店をやろうと決めてお店の名前まで考えていた時にちょうど、ここの大家さんがこのお店の空間を活かしてくれる人はいないかなあと探していて、この場所を紹介してもらいました。
店名の「TAVATA」の由来は田んぼと畑からとりました。地元の田んぼと畑から採れたものを使っていこうという。地産地消を。野菜もお肉も地元のものを使っています。まあこだわりというこだわりではないですけど田舎なので食材も地元で揃うという。わざわざ遠くから買ってくる必要もないですし。お店のロゴも田んぼと畑の地図記号をもじっています、お店のロゴマークを作ってくれた方が言うにはこのVは「美味しい」とか「嬉しい」とか「楽しい」とかの万歳している手を表現しているそうです。そしてTAVATAのAとかVとかがつながっていなく、文字の線が直線でないのは不完全な状態を表しています。その不完全な状態=可能性という意味も持っています。完全ではない、これから広がっていくそしてVを囲む四角はダイヤモンドの原石を表しているそうです。

【福島県白河市】「食は情景とともに」/「TAVATA」 石川正子さん
TAVATA 店内風景1

―アルバイトで食に携わっていたとうかがいましたが、どこかで料理のことを勉強されたりしましたか。

よくそのような質問をいただくのですが、学校のようなところには通ったことはありません。20代の頃にイタリアンレストランでアルバイトをしていたので、その時に調理師免許は取ってしまったんです。とにかく現場に入ることが近道と考えていたので厨房もホールもやる。いろんな飲食店で仕事をして、実践を大事にしていました。食品の保存方法も見せてもらって、仕込みを手伝いながら覚えていくという感じです。
もちろん食べることも好きだったので、とにかく県内、県外の飲食店を、くまなく食べ歩きましたね。その当時勤めていた会社が新白河駅の真裏だったので、仕事が17時に終わって、その当時17時09分発の新幹線に乗って東京へ行き、食事をして最終の新幹線に乗って帰ってくるみたいな生活をしていました。

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厨房に立つ石川さん

「食べる」というワンシーンが日常の大切なシーンになってほしい

―以前イベントでいただいたお料理がスパイスやシード類が隠れていて、食べてみてハッとするような味や食感があってとても面白かったのですが、作る時に意識されていることはありますか。

意識していることは多々あります。スパイスは食材の臭みを打ち消すための用途でもあるのですけど、食欲を促したりだけでなく、ハッとするようなパッション的な部分、食べる楽しみみたいなものを味わってもらうためのものとも考えています。例えばブロッコリーの茹で方にも、フニャよりはカリッと歯ごたえのある感じ。なるべくフレッシュで生に近いような状態とかもちょっと意識はしています。香りがあるものは香りを失わないよう、色々な食感や色が楽しめるように調理をしています。また、「懐かしさ=安心感」を感じてもらえるようなものであったり、新しいものであったり、楽しさを大事にしていて、食べるだけでなく目で見ることや、香りを楽しむことなど、あらゆる部分を使って楽しさを感じてもらいたいですね。

―ヨガの先生をされていることからも何か影響があったりしますか。

ありますね。五感を使う事だったりとか、食べて精神が穏やかになったりとか、そのような効果もあると思います。すごく通じ合っていると思います。ベジタリアンでもないしヴィーガンとかでもないのですが。「食べる」という行為がおざなりになっているような今の社会の中で、「食べる」というワンシーンが日常の大切なシーンになってほしいと感じはします。

―それはお店のコンセプトである「食は情景と共に」につながっていくのですか。

そうですね。食べる場所であったり、誰と食べるかとかがすごく大事だと思います。
お店のコンセプトは、この場所に来て感じたのと、作家の池波正太郎さんが好きで、「食卓の情景」という作品の題名をもじりました。その本を読むと本当に情景が浮かぶんですよね。馴染みのお店で食べている情景が描かれていて、食べている音とかが細かく描写されていて、このお店絶対美味しいだろうなみたいな。行ってみようかなって思わせてくれる、すごい好きな本ですね。渋い本ですけどね、池波さんですから。

【福島県白河市】「食は情景とともに」/「TAVATA」 石川正子さん
取材に受け答えする石川さん

「顔がわかると料理への熱の入り方が全く違うんです」

―お店の営業が週に2日だけというのには何か理由があるのでしょうか?

仕事を優先的に考えていて、営業日の二日前くらいから仕込みを始めます。仕入れもそうですし、下ごしらえもしますので、それで週の半分くらい消えてしまうんです。それが今の自分のペースでわりと合っているやり方なんです。空いた日にはヨガの教室を入れたり、営業日を一日増やしたりします。
お店も食品のロスの事とスマートに働くことを考えて、完全予約制が今の自分のベストだと考えています。食品のロスに関していえば、野菜の皮とかもお出汁を採るのに使ったりします。予約制の利点は、予約してくださる人の顔がわかると料理への熱の入り方が全く違うんですよね。この人に食べてもらう、この料理の行く先がわかると熱の入れ方がちょっと違いますね。誰だかわからない人に作るのと、例えば旦那さんに作るとか、お子さんに作るとか。食べる人がわかっているのといないのとでは愛情の掛け方が違うっていうのが自分の中ではあります。
だからこそ、ご予約いただいた方に満足して頂けるようにベストを尽くすっていう意味合いでの完全予約制なんです。
また、食品にも愛情を持っています。あらゆる部分を使って、いらない部分はお出汁をとって極力使い切りますし、それを見越して仕入れもできるのがすごくいいですね。食材に関しては地元のものを仕入れていて、無農薬とか有機とかにこだわっているわけではないのですが、実際に生産の現場に行って見て、いいなと思ったものを買っています。例えばキャベツとかを買うときに、いいなと思ったものの生産者さんのことを覚えておくんですよ。そうすると、いいなと思った人が作った他の野菜もすごくいいんですよ。何か作り方とかが他とは違くて、仕入れるときにお会いしたりするとお人柄も良かったりして、そういうところからお野菜を決めて、新鮮なもの、旬なものを使っています。
メニューも旬や季節で変わっていきます。だから、好き嫌いのある人やお野菜が嫌いな人は絶対来ないと思います。でも、人参が苦手な人がうちに来て人参が食べられるようになったとか、そういう話をされるとよかったなと思うので、なるべく食べやすいように配慮はしています。

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TAVATA で提供されるワンプレート料理

「やっぱりそれって食べた方に伝わるんですよ。」

―メニューはいつ考えられるのですか。

仕入れの時ですね。その時に、食材同士をどう組み合わせるかを想像しています。
若い頃からいろいろなものを食べたりしているので、味の想像が、これとこれを組み合わせたらこんな味になるという感覚がなんとなくわかるんですよね。
そして、あえて無駄にしないようなやり方をします。料理教室もそうなんですけど、別々のものを作っているようで、全ての料理に使っている材料があったりします。部分部分でこの料理には葉の部分を使っているのだけど、この料理には茎を使っているとか。例えば捨てるようなところでお出汁をとっていますというようなことをやっています。
料理教室では、今日はこういう無駄にしないようなやり方でメニューを考えていると伝えています。料理教室は初め、私が教室でお金をとっていいのかと悩んでいましたが、イベントで料理教室をやってくださいというオファーがあって、それがきっかけでやるようになりました。そしたら自分の想像以上に参加されている方が楽しそうで。どちらかというと、習いに来ているのではなく食べに来ているような感覚で皆様、楽しまれていますね。
そこではまた、ちょっとした一手間をすることが大切だとお伝えしています。誰と作るかとか、誰に作るかとかいうところが色々繋がってくるんですよ。大切な人に作るのであればこの手間を惜しまないですよね、それで美味しくなったらもっといいですよね、とか。やっぱりそれって食べた方に伝わるんですよ。ちょっと入れる隠し包丁とかそういうところも。

―そのこだわりとか一手間だったりとかは、石川さんの中に染み付いているものなんじゃないですか

おそらく、母親を見て育ったからこそ染み付いているのかなと感じます。高校の時、弓道部で、うちの母親が部活をやっている時によく差し入れをしてくれたんですよね。高校生の時ってすごいよく食べるから鳥の唐揚げを持って来てくれたんです。それが、みんな美味しかったみたいで、うちでは普通に作るんですけど、持って来てくれたとか、わざわざ作って来てくれたということが、後からじわじわくるんですよ。年頃になった時に感じましたね。未だに後輩に会って、あの時の唐揚げ美味しかったと言われると、なんかただ食べるっていう行為ではなくて、やっぱりこう記憶に残るような感じの料理の提供ができたらなとは思います。それが「情景」とかに関わってくるような気がします。あの時どこで誰と食べたとかが全部繋がる感じですね。

【福島県白河市】「食は情景とともに」/「TAVATA」 石川正子さん
TAVATA で提供されるスイーツ

知恵も体力もできる限り使って作っています

―だからTAVATA さんのお料理には惹きつけられる魅力があるんですね。

でもフレンチやイタリアンの料理人さんが見たら「何これ」って思うものもいっぱいあると思うんですよ。多分主婦の延長でやってる感じに思われるんだろうなと。凝ったこともできないので、本当にシンプルで美味しいものの組み合わせという感じになってしまいますけど。

―でも予約もいっぱいということは、それを皆さんが求められている。

だからちょっと不思議なんですけど、みんなおうちで何を食べているのかなって思います。
でも、”てまとひま”をかけたものを受け止めてくれるお客さんが本当に多いですね。TAVATAのお客さんの層もそんな感じで出来上がっている感じがします。
でも、明日どうやって食べようかと思った時期もありましたよ。始まった頃は予約が入らないですし、カフェの食べ歩きが好きな人がちょこちょこ来てくれたりとかしていました。その頃来てくれた人が未だに来てくれたりしているので、そういう方はすごく超超超超常連と思っています。すごく大事にしていて、その人を裏切らないようにしないといけないという緊張感は常にあります。
5年やってみて、やっぱり好きなんだとすごく実感しています。好きを仕事にできてきたかなって感じはあります。生活はしていかなければいけないけど、生活のためだけにやっているわけではないというところで結構ジレンマがあるわけじゃないですか。反応はリアルですし、でもそれがたまらなく気持ち良かったりします。客席からいい反応が聞こえたりすると、厨房で小さくガッツポーズしたりします。だから、この一手間をやったら美味しいってわかっていて、でもすごい疲れていて夜も遅いしどうしようっていうのがあるんですけど、でもそれをやっておいて良かったなっていう積み重ねですね。それを気付いてもらえるとすごい嬉しいです。みんなちゃんと拾ってくれるんで。いいお客さんです。そして、コロナの時も本当に助けてくれました。お店閉めて、お弁当の販売だけになってもよく来てくれましたし、すごい支えてもらいましたね。なので、自分が持っている知恵も体力もできる限り使って作っています。

【福島県白河市】「食は情景とともに」/「TAVATA」 石川正子さん
TAVATA 店内風景2

乙な物者たち

―昨年末は「乙な物者たち」というイベントも主催されていますよね。

イベント名に「乙」という文字を使ったのは今回が2回目になります。コロナ前のオープン直後に1回イベントを開催しています。「乙」というイベントはずっと温めていたもので、普段自分が使っている乙な物とか、乙な和菓子とかを集めて。この店に関わってくれている作家さんや私のお気に入りで店内を埋めつくすんです。
このイベントは自分が楽しみたいから開催しました。だから人が来るとか来ないとか全然考えてなくて、やってみたらたくさん人が来て、えらいこっちゃだったんですけど。「自分のために、自分が一年に一度楽しみたい」というコンセプトでやっているので、他の方から見ると、すごいわがままなマルシェなんじゃないかと思います。私は企画運営のプロではないですし、ただの飲食店ですので、出展者さんに来てもらうだけでいい。なので、人が来るか来ないかはわからないですし、売上もわからないですけど来ていただけますかという感じです。でも、お客さんが来てくれるから本当に嬉しいです。

【福島県白河市】「食は情景とともに」/「TAVATA」 石川正子さん
「乙な物者たち」イベント題字
【福島県白河市】「食は情景とともに」/「TAVATA」 石川正子さん
「乙な物者たち」イベント風景

―石川さんご自身がやりたいという強い想いからお店もイベントも開催されていると感じます。今後の展望のようなものはお持ちですか。

このお店の空間は広いくらいなんです。実は私、おばんざい屋さんみたいな割烹料理屋をやりたいんです。できれば、着物を着て襷かけてみたいな感じがやりたくて、それがすごく夢で。L字とかコの字のカウンターの。5坪〜7坪くらいの広さで手の届く範囲でたわいもない会話をしながらお酒を酌み交わすみたいな、お客さんが仕事の帰りに歩いて寄れるお店を本当はやりたいです。それが今の夢です。
それと、とりあえずその日に思ったことはやっています。会いたいなあと思ったら会いにも行くし、それはどんなに忙しい中でもやります。
今、完全予約制なんですけと、予約じゃなくてもお客さんが来られる体制も少しずつ整えていきたいなぁとも思っています。だから、なるべくお店の営業を増やして、マルシェはご縁があるものや、心惹かれるものに絞って出ようかなと思っています。あと、ワンちゃんネコちゃんとも一緒に生活しているのでその子達とも一緒に過ごせる穏やかな時間を取れる生活をしたいということもあります。喋らないだけに分からないことがいっぱいあるじゃないですか。話を聞きたいんですけど、文句もいっぱいあるだろうし。
そして、みんなが穏やかに生活できたらいいなぁと思いますね。なんか忙しない時代になってしまったので。その中でここにいる時間だけは穏やかな時間を味わってもらいたいなと思います。あと、健康でいること。

名称

TAVATA

業種

飲食店

URL

https://www.instagram.com/tavata_eatery/

住所

福島県白河市大和田池ノ次46

営業時間

SNSにてご確認ください。

【福島県白河市】「食は情景とともに」/「TAVATA」 石川正子さん