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【京都】伝統工芸からつながる 「monomo」代表 松山幸子さん

2015.09.03
【京都】伝統工芸からつながる 「monomo」代表 松山幸子さん
松山さん。デスクにも座卓にもなる机は、友人の大工さんに特別につくってもらった

京都市内ではあるが街中でなく、あえて人里離れた岩倉に移住したひとりの女性。それが今回ご紹介する松山幸子さん。

この地で、伝統工芸を始めとする日本の手しごとを世界に紹介する会社monomoを立ち上げた。monomoは、「手しごとから生まれるストーリー」に重きを置いた通販事業を中心に展開している。

松山さんは、京都出身ではなく生まれは神奈川。大学4年間を京都で生活した後、カナダへ留学し、現地ではwebデザイナーの仕事に就く。帰国後は、ITベンチャーの社員、老舗翻訳会社における新規事業担当などを経て、現在に至る。一見するとバラバラに見えるキャリアだが、与えられた仕事でなく一から仕事をつくっていくことに面白味を感じてずっとやってきた。

しかしなぜ伝統工芸を伝えるという仕事で起業することを選んだのだろうか。
それは、20代のカナダ在住時代に遡る。
「留学中、何気なく日本の器を両手で持ってお茶を飲んでいたら、それを見た友人が『サチコのその仕草がすごく日本人っぽい』って言ったんです。その時は深く考えなかったのですが、振り返ってみるとその出来事が『何が私を日本人にしているのか』と考えるきっかけになりました。その後も、日本の手しごとには日本人が大事にしてきた世界観や美意識が詰まっていると気づく経験が何度かあって、段々と関心が膨らんできました。それに、日本と海外をつなぐ仕事をしたいなとずっと思っていました」

【京都】伝統工芸からつながる 「monomo」代表 松山幸子さん
カナダ在住中、この器の持ち方を「日本人っぽい」と言われた(写真提供=monomo ltd.)

ただ、起業をすると決断したタイミングは、周囲より遅かったそうだ。

「ITベンチャー時代の元同僚たちは軒並み起業していたんですが、私はITの中で完結するサービスにあまりピンと来なかったんですよね。ただ、知人に『日本の手しごとの文脈や精神性をいろんなストーリーを語っていく物をつくりたいんだよね』と何とはなしに話したんです。そしたら、『それすごくいいと思う!』って。それが始まりかな。
それからいろんな人に話す度に『これ見に行ってみなよ、この人に会いに行ってみなよ』と教えてもらって。そういう人のご縁に対してなるべく自分の中でブレーキをかけないようにしていたらいつのまにか起業していた、という感じです。当時はまだやりたいことがぼんやりしていましたが、人と話していくうちにやりたいことの本質、ぶれてはいけないところも見えてきました」

日本の心を伝え、暮らし方を提案することで、物が愛着を持って使われていく。それを効果的に伝達する手法として、自身が今まで培ってきた販促の技術やwebデザインや英語のスキルを活かす。長い歴史をかけて育まれてきた日本人の想いや暮らしの美意識と、自分のスキルを掛け算して、monomoという発信の形ができあがった。
ストーリーを持った通販事業を軸に据えているが、それだけでなく、実際に海外に出かけていって現地のお客さんに商品に触れてもらう機会を設けたり、京都市内でもリアルに手しごとを体験できるイベントを企画したりしている。

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monomoのオリジナル商品である錫(すず)の小皿。和菓子ユニット「日菓」とのコラボレーションによって生まれた
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monomoの商品たち。窓からの柔らかな光に包まれるようにして展示されている

「京都に住んでいた学生時代、次に市内で引っ越すなら左京区に住みたいとよく思っていました。カルチャーの発信地で個性的な人が集まっていることで有名でしたから(笑)。大手不動産サイトで『左京区』で検索していたら、やたら広いのに安かったので目に入った」のが今の岩倉の家だったとのこと。

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のどかな岩倉の風景
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山に囲まれた平屋に住む(写真提供=monomo ltd.)

そして、大家さんが住む母屋と同じ敷地内に建つ「離れ」だった点も気に入った。

「最初、京都の生活は身構えていたんですが、大家さんに世話を焼いていただいて。『いやいや、申し訳ないので結構です』と返すのではなくて、『ありがとう』と。人に頼れることは頼るようにしています」
今では野菜を分けてくださったり、一緒に食事をしたりと、娘のように可愛がってもらっている。

【京都】伝統工芸からつながる 「monomo」代表 松山幸子さん
室内の様子。大家さんの庭を借景に心地よい緑が目に飛び込んでくる
【京都】伝統工芸からつながる 「monomo」代表 松山幸子さん
室内は、古い家具や若手作家が製作した家具で、古いものと新しいものがセンス良く混在している

そんな松山さんだが、仕事の面で新たな展開を迎えようとしている。ニューヨークに2~3カ月仕事で滞在することになった。家をしばらく空けなければいけない。

そこで、京都への移住を応援する団体である京都移住計画に相談し、留守の間家に住みながらmonomoの事務仕事を手伝ってくれる人を募集することにした。松山さんに、募集をしようと思った理由を聞いてみると、「私自身が移住者ということもあって、東京至上主義じゃなくて、もっと地方で生き生き暮らす人たちが増えればいいのに、って思ったのです」とのこと。

募集は女性限定で、家賃は9万円と仕事を手伝ってもらう分安めに設定した。そして募集期間は3週間、実施期間も少し長めの2カ月。なかなか条件が難しい募集だと思っていたが、6組もの応募があり、そのうちの1人が現在、松山さんの留守中の家と仕事を守り、monomoを支えてくれている。今回採用された方は、現在フリーランスで雑誌の編集の仕事をしていて、木彫の学校に通っていた経歴がある。単に京都に移住したいから応募したわけではなく、伝統工芸に携わる仕事だということと松山さんの人柄に惹かれ、応募を決意したそうだ。松山さん自身、この応募でmonomoに関わってくれる人を見つける目的もあった。
応募者にとっても、松山さんにとっても、実験的な試みとなっている。

【京都】伝統工芸からつながる 「monomo」代表 松山幸子さん
「お試し居住」をしながらmonomoの仕事を手伝ってくれる人との初顔合わせ兼打ち合わせの様子
屋号

monomo

URL

 http://jp.monomo.jp

住所

京都府京都市左京区岩倉上蔵町75

備考

松山さんと借り手の方のお試し移住の様子を『往復書簡』という形で週に1往復配信しています。 
お試し移住『往復書簡』by京都移住計画

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