ダルマ自転車がゆく! 第2回@千歳が丘公園
12月。師走の山形の空は鈍色(にびいろ)。おそらく、山形に暮らす人はみな、雪を降らす雲の色を判別できるものです。わたしもその一人。で、この日、ギリギリ雪は降らなそうだなあと思いながら、ある公園にやってきました。そして、コートを脱いで薄手のサイクルジャージに着替えました。ヘルメットも装着しました。さあ、ダルマ自転車に乗りましょう!

やってきたのは、山形市小白川町にある千歳が丘公園。山形大学小白川キャンパスの東に位置するかわいらしいサイズの公園です。地元の人はここを「交通公園」と呼んでいるのだそう。その理由はすぐにわかりました。


公園内に広がるのはミニチュア版の道路。そしてあちこちに立つ無数の交通標識!
この公園、もしかして、交通ルールを学べる公園として作られたのでしょうか?それならばやはり、自転車に乗るなら、三輪車であれダルマ自転車であれ、ヘルメット装着は必須。交通ルール遵守!そういうわけで今回は、自転車乗りの正装を身につけているのであります。
せっかく公園内に標識つきの道路があるので、グルグルと道を回ります。ダルマ自転車に乗るのは1ヶ月ぶり。ああ、そうだそうだ、ハンドルを握る手に力を入れてはいけないんだった。楽な姿勢で大きな前輪に身を任せる感じ。ソロ~リと乗り出して、十数メートルで勘を取り戻しました。「交通公園」が誇る小さなS字カーブに加速度満点ホームストレートを何度も何度も楽しみます。というのも、他にダルマ自転車に乗っている人は誰もいないから「交通公園」一人占めなのです。


延々同じコースを回っていると、ふと三輪車に乗っていた3歳頃の感覚が蘇ってきました。それは、ただ三輪車を漕ぐことに専念する気持ち。つまり、目的地に移動するために走るのではなく、漕ぐことそれ自体が目的。これはある意味、乗りものの乗り方としては最高の贅沢なのかもしれません。大人になると、乗りものは通勤や通学の手段となります。だから、どこに行くわけでなく、ただただ公園で昼間っからダルマ自転車を走らせるのは、アラブの石油王に並ぶか越える贅沢と言えましょう。三輪車で遊んでいたあの頃、みなさんも贅沢な時間だったと思うでしょう?これからの大人の贅沢、それは公園をダルマ自転車で走ること。こんなブームが来年あたり来そうな気がしてなりません。




思いがけず「贅沢」とは何かを考えるよい時間を過ごしました。これも、ダルマ自転車と千歳が丘公園(交通公園)があってのこと。ありがとうダルマ自転車!ありがとう交通公園!
ああ、雪が降ってきそうだ。来月はダルマ自転車に乗れるかしら。
それではまた、次の公園で逢いましょう!
=== Park Information ===

山形市〈 千歳が丘公園 〉
千歳山を間近に仰ぎ見る山形市小白川町一丁目にある公園。自転車用らしき道路といくつもの交通標識が特徴となっており、本文中に記されているようにこの近隣の子どもたちからは「交通公園」という愛称で呼ばれていたようである。コンセプチュアルでノスタルジックな、なんとも味わいある空間となっている。(那須ミノル)
写真:佐藤鈴華(STROBELIGHT)













