real local 山形河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん | reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん

インタビュー
2026.01.23
河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん
菊地航平さん。河北町にひらいたばかりの「民泊やまねこ」にて。その腕に抱かれているのは、まだこの場所が「やま商店」として営業していた頃からずっとここに暮らしてきた三毛猫の「ちー」ちゃん、推定年齢17歳。飼い主である「やま商店」店主のおばあさんが亡くなってからも、近隣の人々との関係性を繋ぎとめてきたキー・キャラクター。この民泊施設が「やまねこ」という名前に決まった理由でもある。

河北町で地域おこし協力隊を務めていた菊地航平さんが、協力隊を卒業した後の2025年10月にオープンさせた場所。それが「民泊やまねこ」だ。河北町にある宿泊施設としては、温泉宿泊施設である「ひなの宿」、また、「野菜を楽しむ小さなホテル」をコンセプトとする「B&V」につづいての、第3の選択肢となるもの。「やまねこ」というこの民泊施設をひらくことによって、河北町を訪れた人びとに低価格での気軽な滞在を提供するとともに、ふつうのホテルなどとはひと味ちがった体験――地域の人たちとの交流や関係性を育むこと――ができるような場所にしていこうと菊地さんは考えている。
もともとは宮城県名取市の出身である菊地さんは、山形大学入学を機に山形の魅力を知るようになり、大学卒業後に地域おこし協力隊としてこの河北町にやってきた。そもそもは地縁もなかったはずのこのまちで、農家や事業者や高校生といった地域の方たちや、県外からこのまちに訪れる方たちとの関係性をゼロから築き上げてきた。そして協力隊卒業後も、なおここに住みつづけ、新しい生業をつくる道を選んだ。
いったい菊地さんは、どんな想いで、どんなビジョンを描いて、この民泊施設をひらこうとしているのだろうか。お話を伺った。

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菊地:これまで地域おこし協力隊として日々活動するなかで、たとえば農家さんのお手伝いに何日も通う場合のように、中長期でこのまちを楽しむときの拠点として利用できるようなゲストハウス的施設がほしいと考えるようになりました。それに最適な物件はないか、と探すうちに知ることになったのがこの場所です。

河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん

ここはかつて「やま商店」という名の個人商店で、まちのみなさんに親しまれてきたそうです。近くには谷地南部小学校という学校があるので通学路にもなっていて、子どもたちのための文房具などを扱っていたほか、生活雑貨や駄菓子なども置いていて、小さな子どもからお年寄りまでたくさんのまちの方たちに利用されてきたそうです。そして数年前に、このお店を営んでこられたおばあさんが亡くなってからは、空き家となってしまっていました。

まちの人たちに親しまれ、今もなおたくさんの方たちの記憶に残っているこの場所を、あらためて新しいかたちで人が集まる場所にしたい。そう考え、コミュニティスペースと民泊施設というかたちで甦らせることにしました。地域みんなの憩いの場であったという文脈を受け継いでいきたい、と思ったのです。

河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん
菊地さんのいるこの場所は、「やまねこ」1Fのコミュニティスペース。宿泊者の方がご飯を食べたり談笑したりできることはもちろん、地域の方たちと交流しながらの「芋煮会」や「ごはん会」などのイベントを催したりもしている。すぐ奥にはキッチンスペースがあり、宿泊者自身がご飯を炊いたり、地元野菜を使ったおかずをつくったり、ということを自由にできる。

そんな流れで、この「旧やま商店」をお借りして民泊施設としてリノベーションすることにしたのですが、新規事業をはじめるにあたって心がけたのは「まずはスモールスタートでいい」ということ。ひとまずはゲストルーム2部屋とコミュニティスペースだけを整えることに注力し、それで事業をスタートさせてみて、そのうちに宿泊者が増えてビジネスとして回りはじめたらほかの部屋も徐々に整えていけばいい、という感じです。リノベーションにかかる費用は自己資金のほか、「地域おこし協力隊起業支援補助金」というまちの補助金を活用させていただきました。

河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん

河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん
学生時代からの友人である「ビレッジャーズ工務店」さんに依頼してリノベーションしてもらったゲスト宿泊用の部屋。明るく気持ちの良い空間に仕上がっている。

菊地:これまで河北町の地域おこし協力隊として、また「かほくらし社」という地域商社のメンバーとして、農家の方のお手伝いもしてきましたし、ワインづくりにチャレンジしたり、地元高校生と地元企業をつなぐコーディネーターとして仕事したり、このまちを訪れる人のツアーガイドをしたりもしてきました。そういう活動をしているなかで、せっかく河北町に来てくれた人がいるのに、宿泊施設が満員で泊まる場所がない、という場面が何度もありました。また、もっと気軽に宿泊できる場所があれば……と感じることも少なからずありました。そういうときに利用できる拠点になれば、と思っています。

ぼく自身としてもこれまでやってきた仕事をつづけつつ、また、じぶんの住まいとしても利用しつつやっていく事業なので、リスクヘッジはしっかりできています。ちいさな初期投資からでもこういうことができる、ということを、若い世代の人たちに見てもらって、「じぶんもやってみよう」と思ってくれる人が出てくるといいな、とも思っています。

河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん
取材時に見せてもらった「民泊やまねこ」のロゴ案。提案者は河北町のデザイナー、いしやまれなさん。さて、この場所はどんな「やまねこ」になっていくのだろうか。

河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん

菊地:「民泊やまねこ」のキャッチコピーは「旅人も、猫も、まちの仲間も」というもの。みんなが集まって、混じり合う場所になってほしい、という願いを込めています。ここは観光のための宿泊施設というよりも、おたがいの関係を繋いでいくことを大切にしている場所です。おばあさんが亡くなってからも、三毛猫のちーちゃんがここで地域の人との関係性をずっと繋いできてくれたように、この場所も、地域の人たちやこのまちに来てくれた人たちとの関係性をあたためるものであれたら、と思います。

河北町「民泊やまねこ」へようこそ / 菊地航平さん
「やま商店」の名前が小さく残る看板の前で。この場所は、まちの温泉施設からも、産直施設からもほどちかい位置にある。「温泉に入ったり産直で地元の野菜を買ったりしながら、ゆっくりと河北のまちに滞在する楽しさを見つけてもらいたいです」と菊地さんは語る。

民泊やまねこ 予約はこちら(Tabichat)
https://tabichat.jp/engine/hotels/yamaneko

Instagram
https://www.instagram.com/stay_yamaneko/

 

写真:渡辺然(STROBELIGHT
文 :那須ミノル