【湘南エリア情報】連載「わたしが住むまち」第13回・鎌倉市今泉台

鎌倉市今泉台は、北鎌倉駅から坂をのぼった場所にある山の中の住宅団地です。鶴岡八幡宮や建長寺の裏山にあたるこの場所が開発されたのは昭和40年代のこと。いまでは、開発当時からずっと住んでいるご高齢の方、そして最近になって移住をしてきたご家族など、多様な方が暮らすまちとなっています。

JR横須賀線の大船駅からバスの便もあるものの、やや不便な立地というのは実際のところあります。ですが、山の中の住宅街として静かで落ち着いた環境を維持しており、住宅と自然との距離が近く、鎌倉市の中でも観光客はめったに訪れないという穏やかさが、いまこのまちが見直されているひとつの理由なのかもしれません。


そして、今泉台といえば最近テレビや雑誌でも取り上げられている魚屋「サカナヤマルカマ」さんや、たい焼き屋「一丁焼きこたろう」さん、その他、素敵な喫茶店やジュエリーのお店などもある「北鎌倉台商店街」は注目スポットでもあります。
そんな商店街からは少し離れた場所に、もうひとつの商店街「湖畔商店街」があります。こちらは、今泉台の中でもさらに奥の方にある商店街で、シャッターが下りているお店が多い印象。ですが、この湖畔商店街を活用したフリーマーケットなどのイベントを行ったり、自宅の前に小さなまちの図書館である「今泉台ほんのえき」を作ったり、といった取り組みを行っている人たちがいます。

今回は、この取り組みの活動拠点となっている「6+cafe」の関口さん、永井さん、そして西崎さんに、これまでの取り組みや、いま今泉台について考えていること、感じていること。これからの活動についても伺い、このまちについて知る機会をいただきました。

みんなの居場所をつくる。その答えが「カフェ」だった
誰でも気軽に。学校の帰りに宿題をやるために立ち寄ったり、高齢の方が居場所として集まったり。そんなみんなに開かれている場が、このまちには必要だと感じていました。カフェなら気軽に、誰でも利用でき、子供も大人も一緒にいられる。そんな温かな場が、この「6+cafe」であって欲しいと、3人は話してくれました。
「6+cafe」を拠点として誰でも気軽にフラッと立ち寄れる居場所づくりに取り組んでいる関口さんたち。これまでの取り組みは多岐にわたり、どれも「思いついたらやってみよう!」というチャレンジ精神から始まっています。
そもそも、活動拠点となっているカフェ「6+cafe」は、もともとは別の場所で活動していた「6丁目クラブ」が前身です。「6丁目クラブ」の場所が使えなくなったときに、この建物の所有者さんが「使っていいよ」と声をかけてくれたことがきっかけで、この場所に改めて拠点を持つこととなったそうです。
当初は室内に残置物があったり、壁も真っ黒な状態だったと言いますが、「6丁目クラブ」の頃から、活動を共にしていたメンバーに新たな仲間が加わり、カフェとして、みんなが集まる居場所として機能するまでになりました。さらに防災的な観点から、一時的な避難ができるような準備もあるそうです。
「思いついたらやってみよう!」の精神で
「6+cafe」を拠点として、様々な活動を行っている3人。代表的な活動について聞いてみました。
「今泉台ほんのえき」:今泉台には図書館や書店がないそうです。一番近い図書館は大船で、本を読みたくても子どもだけでは気軽には行けない距離感でした。ですが、今泉台にはたくさんの住宅があり、そこには多くの本が眠っているはず…そこに目を付けて、自宅の前に小さな手製のボックスを置いていただけるお宅を募り、本をセレクトして置いてもらう活動をしています。
時代もの、純文学、絵本など児童書まで。その家の人の特徴があるのが面白い。まちの中に点在するボックスから借りて、どこのボックスに返してもいいというゆるいルールが、子どもにとっても使い勝手がよく、本が上手くまちの中で循環しています。

「子ども落語教室」:たまたま、落語を独学から学んだ方がいて、その方が子どもに落語を教えるといったら人がくるだろうか?という思い付きから始まった教室です。最初は本当に子どもが落語なんて興味ある?と半信半疑だったそうですが、なんと初回から参加した小学生が落語の大ファンという奇跡が起きました。
いまでは大人も顔負けの落語を披露しており、施設などでの発表会を行うほどの腕前だといいます。通ってくる子どもたちの親も、自分の子どもがこんなに夢中になって落語をやっているなんて、と驚かれるそうで、改めて子どもが持っている力を信じてあげることの大切さや、自分で表現したいことを具現化する力を育む環境の大切さに気付いたといいます。

「湖畔蚤の市」:シャッター街となってしまっている湖畔商店街で行われている蚤の市。シャッターが下りている店の前の使わせて欲しいと聞いてみたら、快諾いただくことができ、3ヶ月に1回のペースで、骨董市やフリーマーケット等の催しを行うようになりました。次回開催は9月予定となります。

「デザイン」:活動の中で使われている今泉台の地図や、「今泉台ほんのえき」の本に押されているスタンプは、まちの子どもたちがつくったもの。実はこんなデザインの才能があったんだ、という気づきがあったり、消しゴムハンコを趣味でやっていた子が、本にスタンプを押すアイデアを形にしたり。大人たちだけでは思いつかないし、形にできなかったことを形にしてくれる。誰かが苦手なら、できる人がやればいい。大人でも子どもでも、協力して一緒に作ればいい。そんなシンプルな考えが形になっていることがとても素敵だなと思いました。


今泉台のこれまでと、これから
まち全体としては、高齢化が進んでいることは事実。でも、これまでこのまちで住み続けてきて、このコミュニティをゆるく守り続けてくれた先輩方に感謝を込めて。これからの世代が、改めてまちのみんなを繋ぐ役割を受け継いだらいいのではないだろうか。ただし、その気持ちは先輩方からなにがなんでも引き継がなくてはという使命感というよりも、とても自発的で、自然発生的なものだったそうです。だからこそ、ゆるく。細く長くでもいいから、この関係性をこのまちの中で維持できたらいいなと思っているのだそうです。

「今泉台を復活させたい」みたいなことではないけれど、鎌倉にこんな場所があると知ってもらえるきっかけになればと思いながら活動されているそうで、スタンプラリーや湖畔蚤の市に参加してくださった方は、多くがこのまちに住んでいる人やその家族ですが、大学で地域再生や子どもの見守りなどの活動について研究している若い人たちなど、外部の方も参加してくれるといいます。
そうした新しい繋がりが増えていくことも、まちの活性化につながっていくだろうし、なによりも繋がりが増えていくというのは純粋に楽しい。
楽しいと思えているうちは、この活動はちゃんと機能して続いていくと思うのです、と話してくれました。


まちの再生や、地域活性という大がかりな目標を掲げるのではなく。思いついたらやってみる。自分ができるところは自分で。できないなら、得意な人を巻き込んで作り上げていく。そんな小さな実験の繰り返しと達成感が、このまちを元気にしている。そんな実験がどこでもできるし、やってみてもいいんだ。ということは大きな気づきでした。
まちのことを自分のこととして考えてみる。なにか実行してみる。それに「いいね」と思ってくれる人が増えていくワクワク感が、この今泉台にいま芽吹いています。
湖畔蚤の市のご案内
次回開催は2026年9月27日(日)11時~16時まで。雨天開催です。
開催場所は、湖畔商店街と、「6+cafe」「Hitensya」
詳しい概要は、「6+cafe」のInstagram等をご覧ください。
| 名称 | 6+cafe |
|---|---|
| 業種 | カフェ、交流拠点 |
| URL | |
| 住所 | 神奈川県鎌倉市今泉台6丁目14−1 |
| アクセス | JR横須賀線「大船」駅バス22分「鎌倉湖畔」バス停下車徒歩4分/JR横須賀線「北鎌倉」駅徒歩36分 |















