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移住者の声 #1 美術家・浅野桃子さん

福井の空に、心を奪われて。

2018.03.01
移住者の声 #1 美術家・浅野桃子さん
THE 福井の冬の空。「弁当忘れても傘忘れるな」ということわざがあるように、日本海側特有の変わりやすく降水量の多い気候が福井の空の特徴です。

重たい曇り空に覆われ、晴れ間が少なく、雨が降ったり止んだり突発的に天気が変わる・・・これから行く土地が、そんな天候だと聞いたら、みなさんはどう感じるでしょうか?

昨年(2017年)4月に東京から福井市へ、福井大学 教育学部 教育学研究科の特命講師として1年間の期間限定で移住をした美術家の浅野桃子さん。3月で終える任期を前に、もうしばらく福井にいることを決めたそう。

インスタレーションなどの作品を日々生み出す彼女の目には、福井に長く住むわたしたちにとって、とても意外なことが魅力として映っていたのでした。

移住者の声 #1 美術家・浅野桃子さん
福井市内にある福井大学の研究室にて。この大きな窓から、気づくとよく空を見ているそう。

− 福井での生活、2年目を決めたんですね。福井のどんなところが魅力に感じたのですか?

浅野「まずは、天候なんですよね。福井(特に北部)って、一年中しょっちゅう雨が降るじゃないですか。冬は雪も降るし。しかも、曇ってばかりで晴れ間も少ない。今まで、長靴すら持っていなかった私にとっては、驚きの連続なんです(笑)」

− え?雨が降ったり曇ってたりすることが福井の魅力なんですか?

浅野「そう。毎日、街の中でトレッキングしてるみたいな気持ちになるんです(笑)私は車の免許を持っていないので、大学や駅前まで徒歩や自転車で移動しているんですが、その日の天気や空模様を見て、服装や持ち物とかを考えるのが楽しくて」

− うーん、福井が長い私としては、それは地元の弱点だったのだけど。面倒臭くないですか?

浅野「私はこういう職業だからか、便利とか効率とかそういった物事に対して、ちょっと距離があるみたいで。空を見ながら、自分の体調と向き合って、厚めの靴下を選んだり、リュックの容量を考えたりして、さあ、今日はどの装備で行くかな?って毎日が始まるのが、楽しくてしょうがないの」

− では、福井でこういうのが残念だなぁと思ったことはない?

浅野「残念ポイントですか、、、特にないですね。作品を制作する上では、混沌とした場所にいてこそ、あるものを否定しながら、制作の糧にしていくことの方が多いので。先日の大雪にしても、『生きてる!』という実感の方が大きいですよ(笑)」

移住者の声 #1 美術家・浅野桃子さん
豪雪の名残も見える福井大学構内。やはり取材中も突然の雨が降ってきた。彼女の空との向き合い方は、車一つで何事もこなしてしまう私たちにとって、とても新鮮だった。

これまで東京や広島などを制作拠点として、AIR(アーティスト・イン・レジデンス)*などを通じて、その土地に応じて感じたものをインスタレーション作品として発表してきた浅野さん。昨年の10月には、福井市のE&Cギャラリーにて個展も開催されました。

浅野さんの作品の多くは、その小さな身体とは裏腹に空間をめいっぱい使った大型のものや抽象的なもの。どれも、その土地の空気を身体全体で吸収し、二度と同じものは作れないような、そんな儚いものばかりです。

*アーティスト・イン・レジデンスとは、アーティストがある一定の期間、招聘された地域に滞在ながら制作を行うこと。

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2017年10月にE&Cギャラリーで行われた個展での展示風景。床のカーペットを引剥ぎ、コンクリートをむき出しにするという表現は、ギャラリー始まって以来の挑戦でした。《沼世、 ここ世 Swamp,here》可変(7000mm×3000mm)やすり、鉛、鉛筆
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すべて、福井という土地を身体で感じながら表現したものばかり。参加者と共に鑑賞のワークショップも行われた。【左】《Camping site 1》(900mm×900mm)木、 コンテ、 柿渋、 アクリル絵具 【右】《オレンジのランドセル -習作-》(450mm×450mm)木、 コンテ、 柿渋、 アクリル絵具

− 福井の移り変わりやすい不安定な天候は、制作にも影響するのですか?

浅野「この天候って、実はアーティストが制作をするには最良の環境だと思うんですね。天候によって左右されてしまう、ある意味では、スムーズにはいかない生活の中で、立ち止まって考えざるを得ない状況って、腰を据えて制作をするにはもってこいじゃないかって」

− 他の地域と比べて、そんなに福井の空模様って違うんでしょうか?

浅野「全然違いますよ!こんなにも美しい色を見せ続ける空は初めて見ました。絵の具では表現しきれない色が刻一刻と変わっていく。福井に来て、毎日、何度も空を見るようになりました」

移住者の声 #1 美術家・浅野桃子さん
2007年から続く、広島・尾道でのアーティスト・イン・レジデンス「AIR Onomichi」の記録冊子。右手前の冊子の表紙には、浅野さんの作品が掲載されている。今後、福井でも違った形のAIRが目撃できるかもしれない。

− 講師としての任期は終わったわけですが、今後、福井でどのような活動をされますか?

浅野「友人や知人のアーティストを福井に招いて、滞在して制作をしてもらえる場所を作れたらいいなと考えています。昨年参加した、福井のリノベーションスクールで、とても心強い仲間に出会えたので、あぁこれはできるなと(笑)今、福井駅前の空き物件を利用して、メンバーたちと計画中です」

− 公共の美術館やイベントなどでAIRが行われることはありましたが、民間で取り組むのは、福井市では初めてかもしれないですね。

浅野「(再開発や新幹線の開通に向けて)大きくまちが変わろうとしている福井で、アトリエにこもって制作して展覧会をするだけではなく、このまちの中でアーティストとして活動したい、と思ったんです。AIRという活動が福井のまちに与えるインパクトは、小さなものかもしれませんが、福井だから生み出せる作品と共に、新しいまちとの関わり方が見つけられたらいいですね」

− どんなアーティストが福井に来てくれるのか、今から楽しみにしています。今日はありがとうございました。

★浅野さんが担当している「小さなモモちゃん from 東京」シリーズも、併せてご覧下さい!

★浅野さんがリノベーションスクールに参加して生まれた福井でのAIRスペースプロジェクト「HAI studio」の情報はこちらから!(生まれたばかりなので、今後の情報をぜひチェックしてください^^)

 

名称

福井大学

住所

福井県福井市文京3-9-1

URL

https://www.u-fukui.ac.jp/

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