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エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」

reallocal山形の連載コラム「楽しい暮らしのエネルギー」(ローカルエネルギー研究者・三浦秀一さんのコラム)が好きで、アップされる度にチェックしている。

「再生可能エネルギーかどうか」というエネルギーの“属性”も大切だけど、エネルギーが資本だとするならば「その地域で循環できているか」という“場所性”も、同じくらい重要なはず。

じゃあ、金沢でのローカルエネルギーの動きってどうなんだろう?

ということで、今回は金沢で持続可能エネルギーの普及に尽力する「金沢市民発電所」代表の永原伸一郎さんを訪ねた。

エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」
「合同会社 金沢市民発電所」代表の永原伸一郎さん。2006年に仲間と共に「NPO法人市民環境プロジェクト」設立。2013年には金沢市民発電所を設立して代表社員就任。

永原さんを知ったのは、金沢21世紀美術館で開催されたディスカッション「エネルギーと文化から考える地方の自立」(「自治区10」2018年9月開催)でのこと。演出家の平田オリザさんや、環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長・飯田哲也さん、デンマークのソーレン・ハーマンセンさんといった錚々たるメンバーの中、金沢でローカルエネルギーに取り組む代表として登壇していたのが永原さんだった。

エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」
ディスカッションの様子。/「自治区10 広場と対話のレッスン」提供:金沢21世紀美術館

−まず「金沢市民発電所」とは、どんな活動をしているのでしょうか?

「市民に出資してもらって、“自分たちの発電所”を共同でつくる、簡単にいえばそれが私たちの事業です。石炭や石油・ガスなどの火力や、原子力などの枯渇性エネルギーに頼るのではなく、自分たちが使うエネルギーを自分達でつくり出し、エネルギーの地産地消を進めることを目的として活動しています」

エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」
「金沢市民発電所」が設置した太陽光発電所の一つ。

−なぜ“市民出資”という手法をとるのですか?

「市民を巻き込んでいくためです。正直に言えば、銀行に一括で融資してもらった方がよっぽど手間がかからないし、気も楽なのですが(笑)。ひと昔前であれば、銀行が太陽光や風力発電に対してなかなか融資してくれないという事情もありましたが、今は時代が変わりました。しかし、それでは市民を巻き込んでいくことにはならない。市民が自分たちでお金を出して、責任を持つ。配当も手にしてもらい、自然エネルギーへの関心を持ってもらう。そのためには、“市民出資”という手間をかけた手続きを経ることが重要だと考えました」

エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」
平成28年の募集。一口20万円、先着100口も完売。

「金沢市民発電所」では太陽光市民発電所4基、金沢市民発電所の母体である「NPO法人市民環境プロジェクト」では市民風力発電所1基の建設・運営に携わってきた。太陽光発電においては全て市民出資により目標金額が集まり、無事竣工。実際の運営も順調だと言う。

エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」
金沢市民発電所の母体である「NPO法人市民環境プロジェクト」では市民風力発電所「のとりん」

「自然エネルギーって、不安定だとかコストがかかるとか、誤解されているところが多分にあると思うのですが、きちんと調査した上で土地を買って、収支計算通りにやっていれば問題ないんです。固定価格買取制度(*1)があるから売上予測もできますし、太陽光も風も平均的には一定で、急激に変化すことがないわけですから」

(*1)固定価格買取制度(FIT)…再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間中は同じ価格で買い取ることを国が約束する制度。日本では2012年に制定。

エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」
大学で電子工学を学んだ後、県内の情報サービスメーカ大手「PFU」に入社。10年勤めた後、退社し有限会社エフ・アイ・ティーを設立。平成15年から「金沢まちづくり市民研究機構」の環境グループに属し、2期代表を務めたことが「NPO法人市民環境プロジェクト」設立に繋がる。

「今世界の流れは圧倒的に自然エネルギーですし、太陽光と風力が一番安い電源だというのはもう常識になっています。実際に、数年前からみなさんが電力会社さんから購入している電気より安くなっていて、グリッドパリティ (*2)はすでに起きているんです」

(*2)グリッドパリティ…再生可能エネルギーによる発電コストが電力会社から購入する電力料金や発電コストと同じ、もしくは安くなること。

−金沢市のローカルエネルギーの取り組みは具合は?

「金沢市はポジションとしては良いところにいるとは思うんですけどね。実は市営の発電所を持っているのは全国でも金沢市だけなんですよ(金沢市企業局の水力発電所)。それも、ライフサイクル的に一番二酸化炭素を排出しない水力発電。市民レベルでいえば、大学も多く、街づくりへの市民の参加意識が昔から強いと感じているので、この強みを生かして、もっと発展的なことができると良いですよね」

−「金沢市民発電所」の今後の展望を教えてください。

「金沢市民発電所で太陽光や風力発電に取り組んできた一番の目的は、まず市民に再生エネルギーへの関心を持ってもらうことで、太陽光発電所自体を面展開して量産することを目的とはしていません。気候でいえば、石川県は太陽光や風力発電に特別適しているというわけではないので。

次に僕たちが取り組んでいるのは「木質バイオマス」。特に竹ですね。全国各地でも同じ状況だと思いますが、市内でも放置された竹林が問題になっています。竹林の伐採は行政が税金を使って対応していましたが、切った竹をこれまで有効に活用できていませんでした」

エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」
竹林伐採現場

「そこで私たちは今、伐採された竹の熱エネルギー利用に取り組んでいます。竹はカロリーが高いので、発電としてではなく、熱エネルギーとして使うのが一番エネルギー効率が良い。

今県内の銭湯の協力を得て、木質バイオマスボイラーでお湯を沸かす実証実験を行なっています。竹は燃焼温度が高すぎて炉を痛めるという問題があったのですが、水を沸かすという用途ではクリアできています。現在試験段階ですが、これが上手くいったら、こちらも市民出資を募って導入拠点を増やしていきたいと思っています」

エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」
燃焼状態と炉壁温度を記録しながら実験(「ぽかぽか御経塚の湯」にて)。IoTを活用した制御システム。

–最後に、各地が「ローカルエネルギー」を自前で持つ重要性とは。

「地域でエネルギーを作り出せるかということは、とても重要です。県単位になると年間数千億というお金がエネルギーを購入するために地域から流失しています。これを地域資本を利用して自分たちでエネルギーを作り出せれば、地域にお金が戻ってくる。

さらにメリットは派生していって、例えば私たちの活動でいえば、発電所の建設は地元の施工業者にお願いしていますし、固定資産税だって払っている。現物配当を希望される方には地元の農産物をお渡ししています。ささやかでも、こうして地元にお金が回っていくんです」

エネルギーの地産地消を。「金沢市民発電所」
金沢市民発電所は3名のスタッフで運営している。田中さん(写真右)は、現在実証実験中の木質バイオマスボイラーのIoTを用いた制御システムを、一から設計してつくったスーパーエンジニア。

金沢市民発電所では、昨年からエコツアーの開催や映画上映(『おだやかな革命』他)など、市民に向けてのPRに力を入れているそうなので、気になる方はぜひ今後の活動にチェックを。

「私たちのような市民共同発電所は全国各地にありますし、再エネに人生をかけて取り組む人が各地域にいます」と永原さん。

あなたの地域のローカルエネルギーはどうだろう。各地からのレポート、求む。

URL

http://kanazawa-cps.com

名称

合同会社 金沢市民発電所

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