real local 金沢 » “郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。【地域情報】

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。

「郷に入れば郷に従え」と言うけれど、肝心の「郷のルール」は暗黙のも多く、わざわざ教えてもらえなかったりする。

ましてや移住前に知ることはかなり困難だ。

今回はそんな地域のルールの明文化に挑戦した、石川県七尾市高階地区の『集落の教科書』をご紹介します。

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
石川県七尾市高階地区の「集落の教科書」。2019年3月発行。

良いことも、そうじゃないことも、ちゃんと伝える。

その“教科書”には、「あいさつ回り」のしきたりに始まり、「町会費」や「玉串料」、草刈りや江掘りといった「地域活動」に、「役員」の任期や決め方、地域での「お葬式」のお手伝いや香典に関すること、地域で暮らすために必要な情報が、町会ごとに包み隠さず明記されている。

移住者としては、移住先選びの検討材料&住んでからの手引として重宝するし、嫁視点からは「自分の集落にこの教科書があれば恥かかずに済む…」という、ありがた〜い一冊。

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“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
「強いルール」「ゆるいルール」「慣習や風習」といった具合に、ルールも色分けされている。

この『集落の教科書』の編集を手がけたのは、七尾市地域おこし協力隊の任田和真さん。自身も、2018年に七尾市にやってきた「移住者」。地域のルールを知らなかったばかりに、痛い目にあったこともあるという。

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
任田(とうだ)和真さん。石川県小松市出身。日大文理学部卒。大学ではサッカー部主将を務め、卒業後は国際NGO「ピースボート」に勤務し、世界一周を目指す老若男女のサポートをしながら約50カ国を巡る。結婚を機に2018年に石川県七尾市の高階地区に移住。現在は七尾市の地域おこし協力隊を務める。

「僕らが引っ越して間もない頃、地域の方々から頻繁に差し入れをいただいたんです。『お返しなんて、いいげんよ』という笑顔の言葉を鵜呑みにして“皆良い人だね〜”なんて話していたら、『あの夫婦は何をあげてもおかえしせん』って噂が広がっていて(笑)。僕はこの地域における“お返しなんていいげんよ”の意味を分かっていなかったんですよね」と苦笑い。

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
「僕はそういうトラブルすら、田舎暮らしの醍醐味として楽しんじゃうタイプだからいいんですけど(笑)、知っていたら起きなかったトラブルとか、逆に知っていたらもっと楽しめたということが、大なり小なり皆あると思うんです」

そんなとき、「良いことも、そうでないことも、ちゃんと伝えたい」というコピーで京都市南丹市で発行されていた『集落の教科書』の存在を知り、“これだ”とばかりに発行元の「NPO法人テダス」にすぐに問い合わせた。

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
発行元のNPO法人テダス(京都府南丹市)のメンバーと任田さん。『集落の教科書』は南丹市内のいくつかの集落で作成されていましたが、他エリアでの展開は今回の七尾市が初。

全国各地に教科書ができて、フラットに地域を選べる未来

「“僕らの集落でも、この教科書をつくらせて欲しい”という、突然のお願いを快諾してくださって、研修まで受け入れてくださいました。『一番の理想は、全国各地に“集落の教科書”ができて、移住者がフラットに地域を選べるようになることだから』と、惜しみもなくそのノウハウを提供して下さったんです。その想いに僕も深く共感して

しかし、実際に高階地区での教科書づくりにとりかかると、想像以上に大変で、“出来上がる気がしない…”と心が折れそうになったこともあったと任田さんは振り返る。

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
「集落の教科書」の打ち合わせ風景。

「各町会ごとに詳細な情報を収集し、その膨大なデーターを質や量をコントロールしながら編集していくことも大変でしたが、これまであえて明文化しないことで“いいがに(*1)”してきたことにはタブーもあって『こんなことわざわざ書かなくていいだろう』という厳しいお声もいただきました」

(*1)いいがに…石川の方言で「良いように・適当に」の意

問題に突き当たる度に「いいことも、そうでないことも、ちゃんと伝える」というモットーに立ち返り、あくまでも移住者の目線で丁寧に調整や対話を重ね、足掛け一年でついに完成に漕ぎ着けた。

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
各町の町会長さんからも詳細なヒアリングを重ねた。「能登留学」で七尾市を訪れた大学生もスタッフとして大活躍。

「集落の教科書」があぶり出す、地域の心柱と課題

京都府南丹市で発行されていた『集落の教科書』とフォーマットはほぼ一緒なのに、あぶり出されてくる情報の種類や濃淡に地域性がよく現れているという。

「例えば、南丹市の茅葺がある地域では、茅葺を守るための地域活動が何よりも優先されていることが、教科書からも伝わってきます。それが七尾市の場合だと“祭り”にになるんです。能登では「祭り」は単に年中行事ということ以上の意味があり、自分自身祭りに参加して初めて、地域住民の一員になれたという実感がありました」

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
「reallocalさんにはどうしても掲載してもらいたかったんです!だって集落の教科書はまさに“ローカルのリアル”が詰まった一冊なので」

また、この教科書は、当初移住検討者に向けて制作したものだったが、完成後、思わぬ反響と効果があったという。

「例えば、今回町会費を公開したことで『おまえんとこの町会費安すぎんか?なんでや?』といった町会同士の議論も起こり、慣習化して硬直していた“暗黙のルール”を再考する契機にもなりました。

それに町会費って、『〇〇円です』って集金に来られたら、疑問を持たず無条件に支払いますよね。でも、そのお金が何に使われているのかを知ることは、とても大切だと思っています。それは値段の高い安いの問題ではなくて、その金額に納得できるかどうかだと思うんです。

例えばそのお金が、集落の草刈りの人件費に使われているとか、懇親会の焼肉代に使われているとか、“ああ、このお金のおかげで、快適に楽しく暮らせるんだな”と実感できることが地域で暮らす上で重要だと思うんです」

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。

「また、ある集落の町会長さんから、『この教科書ができて助かった』とお礼の言葉をいただいたんです。どの町もそうですが、人口が少なくなっているので、町会長ももはや“当て職”なんですよね。『町会長なんに、地域のこと全然知らんくて困っていた』と」

町会に限らず、地域や家族、さまざまなコミュニティが希薄になりつつある現代において、この教科書はその断絶部を補う役目を思わぬ形で果たしていたのだ。

「今年の連休中に高階の実家に帰省した方が、『これはすごい!』と食い入るように教科書を熟読していたという話もききました。地元を離れた方にとっても自分の地元を再認識するきっかけにもなっているようです」

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
「地域の課題がどこにあるのか、教科書づくりの過程で知ることもできるので、特に集落型の地域おこし協力隊の方にはぜひこの教科書づくりに挑戦していただきたいですね」

「本当に大変でしたけど、この教科書をつくったことで、僕自身この地域のことを本当の意味で知ることができた。そこが一番大きいと思っています。そして勇気をもって集落のルールやしきたりの明文化に挑戦をした地域の方々を心から尊敬します

京都府南丹市でつくられていた『集落の教科書』が、初の他エリア展開として北陸の高階という小さな地区でもつくられた、この一つの飛躍はとても大きな一歩だと思う。

「全国各地に“集落の教科書”ができて、移住者がフラットに地域を選べるようになる」

『集落の教科書』創刊の理念が達成される日はそう遠くないかもしれない。

“郷のルール”を明文化、『集落の教科書』。
『集落の教科書』の表紙にもなった、高階地区の風景。

★ご興味がある方、ぜひ下記お問い合わせフォームよりご連絡下さい★

名称

『集落の教科書』

URL

【PDF版はこちらからダウンロードできます】

http://moving770.com/takashina-textbook.pdf

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