real local 山形建築家・渋谷達郎さん - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

建築家・渋谷達郎さん

2019.05.28
建築家・渋谷達郎さん
アーキテクチュアランドスケープ 渋谷達郎さん

地元で建築に携わるまで

渋谷さん:長井市に生まれて、東北芸術工科大学の現 建築・環境デザイン学科にて環境デザインについて幅広く学びました。もともと建築単体より、建築が建つ背景やその周辺環境に関心があり、卒業後は「環境デザイン研究所」にて主に建築の外まわりの設計(ランドスケープ)に携わりました。その後、隈研吾さんが就任した慶應義塾大学理工学部の大学院に一期生として入りました。

隈研究室で数多くの海外コンペなどを経験し、大学院卒業後は「パシフィックコンサルタンツ」に就職しました。その後、隈さんからお誘いをいただき、「隈研吾建築都市設計事務所」に所属しながら慶應義塾大学隈研究室の助手を務め、2009年に独立(アーキテクチュアランドスケープ)しました。

独立後、愛知県の豊橋技術科学大学に建築学科の教員として在籍し、学生達と一緒に古民家や空き店舗の改修など地域に関わる活動をしていました。
いつか地元に戻ろうと上京した頃から思っていたので、震災がひとつのきっかけとなって、2014年に山形に戻ってきました。

その際、地域おこし協力隊の制度を活用して、設計事務所としての活動と同時に地元である長井市の地域振興にも取組みました。利用者が少ないローカル線の有効活用法や駅をリノベーションする提案を行いました。地域の方に関心を持ってもらうために “まちおこし”として企画したユニークなプロレスイベントは、ウェブの記事で拡散され、大きな反響をいただきました。

建築家・渋谷達郎さん
ローカル線プロレス(長井市)/撮影:船山裕紀

そんな中、突然、テレビ番組『大改造!!劇的ビフォーアフター(ABC朝日放送)』※の出演依頼が舞い込んできました。上山市内で築150年以上の古民家を改修するという案件でした。山形初案件ということもあり、明るく、あたたかいこれからの新しい雪国の住まい方を提案することにしました。

古い梁や柱といった木の架構、住まい手が愛着を持っている土蔵など、古いものにはお金では買えない価値があります。これらを生かしながら、高断熱高気密化によって、快適な住まいとすることが可能になります。

この番組をきっかけに、恰好ばかりではない建物の性能についても考えるようになりました。放映後は全国からお問合せいただくなど、エコハウスの認識が広がるよいきっかけになったのではないかと思います。

番組制作にあたっては、施工いただいた髙橋工務店さんをはじめ、たくさんの地元企業の方々や職人の方々にご協力いただきました。また、芸工大の学生たちにも実測など設計段階から協力いただき、多くの山形の人たちと一丸となって関わることができました。

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上山の家/大改造!!劇的ビフォーアフター/撮影:長岡信也

※「雪かきしながらトイレに行く家(2016年3月20日放映)

建築において、豊かなフィールドである山形

建物を建てるときに大切にしていることは、「場所性」です。現場に行き、周辺の風景、土地の歴史、道との繋がり、風の流れなどを自分の目と肌で確認し、場所の特徴や魅力を読み解いていきます。そしてお施主さんの話をじっくりと聞き、話し合います。

戸建て住宅のほか、七日町の御殿堰にある「そば処庄司屋」のリニューアルや、旅籠町の「gura」、上山市の「めんごりあ」など、商業施設も設計しています。最近では2世帯住宅の相談をいただくことも多いです。今後も住宅、商業施設のほか、公共施設にも取り組んでいきたいと思っています。

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文化複合施設「gura」/撮影:gattahouse
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そば処庄司屋 御殿堰七日町店/撮影:志鎌康平
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めんごりあ(上山市総合子どもセンター)/撮影:船山裕紀

山形に戻って感じる一番大きなこと、それは地方では総予算のうち、建物本体にお金がかけられるということです。

都会では予算の多くを土地に裂かなければいけませんが、山形では土地が安い分、建物に回すことができます。つまり、同じ予算でも、デザイン面に加えて、建物を高性能化することで環境が良くなり、質の高い建物をつくることができます。その結果、暮らしの質が上がるということです。

また、敷地自体が広いので、ランドスケープなど設計として関わる範囲も広く、自由度もあります。山形は施主にとっても、建築家にとっても、建物をつくるうえで、とても豊かな環境だと感じています。

建築家・渋谷達郎さん

メッセージを広く発信していくこと

これからますます人口は減り、空き家が増えていきます。そんな時代に直面して、建築設計事務所として、なにができるかを考えています。

山形には「やまがた健康住宅」※という制度があります。住まいの高性能化によって健康が増進されれば、医療費も減り、行政にとっても、私たち住まい手にとっても、嬉しいはずです。

山形は古い住宅が多いので、その趣を生かしながらリノベーションすることもひとつの方法だと思います。例えば、工事費は、光熱費などのランニングも考慮して建物寿命のなかで回収するなど、高性能建築だから可能になる長期的な視野で検討いただけると選択肢が広がると思います。様々な情報があふれている中で、このような知識をより多くの方に正確に伝えていきたいと思っています。

※山形県独自の高断熱高気密住宅の認証制度。ヒートショックなどの事故や各種疾患の防止のため、住宅での冷暖房負荷を低減させるために、住宅の高断熱高気密化を促進するもの。

あたたかさや快適さは、体感いただくのが一番わかりやすいと思います。例えば、高性能で質の高い公共施設が実現できれば、より多くの方がその良さを体験できます。設計競技(コンペ)やプロポーザルなどの機会を通じて、私を含めた若手建築家が地域ともっと関わっていけたら嬉しいです。

建築家・渋谷達郎さん

渋谷達郎 プロフィール
山形県長井市生まれ。一級建築士。登録ランドスケープアーキテクト。慶應義塾大学大学院理工学研究科前期博士課程修了。修士(工学)。大改造!!劇的ビフォーアフター(ABC朝日放送)「雪国の住医」。東北建築賞作品賞・グッドデザイン賞ベスト100など受賞多数。

屋号

株式会社アーキテクチュアランドスケープ一級建築士事務所

URL

http://www.alds.jp/

住所

山形県山形市小立三丁目3番20-101

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