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再生可能エネルギーに取組む!/Pelletman 高橋睦人さん・前編

山形で再生可能エネルギー事業に取り組む先駆者たちとの対談を通して、その活動の原点や原動力そして未来のビジョンを探るシリーズ【グリーンエネルギー・フロンティア!】。

今回のゲストは、Pelletman(ペレットマン)の高橋睦人さん。聞き手は、ローカルエネルギーの研究者であり、東北芸術工科大学教授であり、そしてやまがた自然エネルギーネットワーク代表を務める三浦秀一さんです。

再生可能エネルギーに取組む!/Pelletman 高橋睦人さん・前編
ペレットマン高橋睦人さん(左)と、やまがた自然エネルギーネットワーク三浦秀一さん(右)。2020年1月、ペレットマン小国本店内にて。

地元の森の資源を生かした
新しい経済のあり方をめざして

三浦:様々な薪ストーブやペレットストーブが並んで、しかも実際に火を体感できるのが素晴らしいですね。こういう店は珍しいのでは?

高橋:店舗ができた当時は珍しかったですね。まずはその頃のことをお話しします。

小国町に生まれ育ったぼくは10代で地元を離れ、仙台で約15年過ごしました。水商売やって自分の店も持ちましたが、たくさん稼いではたくさん使う消費型の生活に浸りきっていました。そんな日々に疲れてきた頃、地元の兄貴分から誘われ小国に戻り、築100年の古民家を借りて生活し始めました。仕事は、その兄貴分の燃料会社で石油の販売をやりました。2003年頃のことです。

三浦:仙台から小国の古民家暮らしへ、大転換ですね。

高橋:古い家に自分で手を加えながらの暮らしは面白そうだと思ったんです。自分で薪ストーブ設置したり畑仕事したりしてました。数年すると兄貴分から「ガソリンスタンド(GS)の店長やれ」と言われ、そこからが大変でした。朝が早くて夜も遅い。冬場は朝6時には除雪機の軽油詰めをしたり、土日シフトに人がいないときには自分が出たり。長時間労働で毎日がイヤになりました。

そんなとき、あるお客さんが「ペレットストーブを設置してほしい」と相談にきました。GSは燃料屋だから対応してくれると思ったのでしょう。ペレットストーブの取扱いなんてしていませんでしたが、ぼく自身は自宅で薪ストーブやってたし、ちょうど「ペレットストーブって面白そうだな」と思っていたときだったから「やってみよう!」ということで、詳しい人に協力してもらって取り付けしたんです。それでそのお客さんに一冬過ごした話を聞いたら「すごく良かった」と言ってくれたんです。

再生可能エネルギーに取組む!/Pelletman 高橋睦人さん・前編

ところで当時、GSで販売していた灯油価格は1Lあたり100円ちょっとで、そのうち会社の利益は10円でした。売上げはあるけど、利益がすごく少ないわけです。それで「灯油ってなんでこんなに高いの? 他地域はもっと安いんじゃないの?」と疑問に思って調べているうちに流通の仕組みに行き当たりました。

港に近い新潟の価格は、小国より少し安いんです。それが小国に来たときには運賃が乗せられて高くなる。さらに遡れば、遥か遠いサウジアラビアからの運賃も乗せられている。小国のぼくたちはその最終価格を支払っているというのに、まちに残るのはその10%もない。あとは新潟やサウジにいくのです。実際、このまちでは家庭用暖房だけでひと冬平均1000Lもの灯油を使います。灯油100円で3000世帯とすれば3億円にもなる。なのにそのうちの2.7億円はまちの外にいくんです。どんどんお金を失っていく経済。この経済のなかでは小国のぼくらは損ばかりです。これが田舎の閉塞感です。これじゃ「あっちのまちに引っ越そう」ってなりますよね。

三浦:まちが元気を失っていく経済の存在に気づいたわけですね。

高橋:ええ。けれどもし、燃料が灯油からペレットに変わればどうなるでしょう? 

小国町は東京23区がすっぽり入る大きさで森林率95%、人口8000人のまちです。まちを覆う森の木でペレットを生産し、製造と販売に関わるすべてをこのまちで行うことができれば、お金のすべてが地域で回ります。薪ストーブでもおなじです。そうなれば、ぼくらは恵まれた宝の山に住んでいることになる。そうなれば「田舎でよかった」となるはずです。

ペレットストーブを設置してからそのことに気づき、すごいことだなと思いました。だから、挑戦しようと思いました。それまでお世話になった兄貴分に「ごめんなさい、ペレットストーブやりたいのでやめます」と伝えました。

それで最初はいろんなお祭りやイベントにペレットストーブを置いて「見てください!こんなのありますよ、すごくないですか?」って声をかけたりしました。そのうちにちょっとずつ知り合いなどでペレットストーブや薪ストーブをつけてくれる人が現れてきたんです。

再生可能エネルギーに取組む!/Pelletman 高橋睦人さん・前編

震災と原発事故を経て
ペレットストーブの周知を図る

高橋:というわけで、ペレットストーブの営業をスタートさせたのが2007年頃です。ストーブの販売台数は2年目に15台、3年目に25台という感じで、ちょっとずつ実績を伸ばしました。そして迎えた4年目に震災が起きました。

東日本大震災後の被災地へは幾度も足を運びました。朝早く風呂桶を積んで出かけて被災地に入り、風呂桶に手づくりの薪ボイラーをつなげて、がれきをチェーンソーで切って薪にして、火を焚いてお湯を沸かして、囲いをつくって、被災地域のみなさんにお風呂を提供するという活動をいろんなところでやりました。

三浦:喜ばれました?

高橋:完成すると「わっ、お風呂だ!」ってすごく盛り上がりました。喜んでもらえることが単純にうれしかったですし、エネルギーの大切さも痛切に感じました。原発のことも考えるようになりました。それまで石油のことは考えてきましたけど、原発については考えたこともありませんでした。

三浦:原発のことを含めてエネルギーについて考えざるをえなくなった。

高橋:そうです。被災地支援活動の帰り道、車のなかで活動仲間の先輩が言ったんです。「原発がまさかこんなことになるとはな…」って。

「あの頃は『原子力発電が未来を変える』とか『原発こそ未来のエネルギーだ』なんて言われていたんだぜ。『たったこれだけのモノで莫大なエネルギーをつくることができる素晴らしいモノだ』なんて言われてたんだぜ。しかも『絶対安心』とまで言われていたモノなんだぜ。それがこんなことになるのか。とても信じられないような話だけど、でもこれが現実なんだな…」って。

小国に帰り仲間と話しながら、エネルギーのあり方というのは様々あるんだなって改めて考えました。たとえまだ化石燃料が必要だとしても、なるべく使わない方向に向かう意識が大切だし、原発はなくなるだろうし、完璧になくならなきゃいけないとも思いました。そしてそういうことをみんなもっとちゃんと知るべきだと思いました。だから「頑張ろう」と気合を入れ、この年の夏この場所にこの展示場をつくることにしたんです。

三浦:ペレットマン展示場の誕生のきっかけは3.11だったんですね。

再生可能エネルギーに取組む!/Pelletman 高橋睦人さん・前編

高橋:薪ストーブやペレットストーブをたくさんの人に知ってもらい、体験してもらわなきゃいけない。外から眺めて見てもあったかさはわかんないから、あったかさの伝わる場所をつくろうと思いました。と同時に、燃料屋ってまちに何軒か必ずあって電話一本で配達してくれるし修理もしてくれたりする。つまり、ライフラインとしての仕組みがある。だから、そこに負けないサービスを徹底してやっていこうと考えました。

それに加えて、薪ストーブもペレットストーブもいろんなメーカーのモノを並べてたくさんの選択肢をお客さんに見てもらい、各々のライフスタイルに合わせて「それならこっちがいいですよ」と提案できるようにしよう、とも考えました。さらにもうひとつ、頑張って情報発信しようとも考えました。多くの人にぼくらを知ってもらって小国まで来てもらうために一生懸命ブログを書きました。やがて本当にあちこちのまちからお客さんが来てくれるようになりました。それでその年の販売台数がグンと伸びました。

三浦:なるほど。

高橋:薪ストーブとペレットストーブの設置台数は60台にまで伸びました。その翌年はさらに増えて200台。理由は様々、口コミとか安いペレットストーブが登場したとか灯油価格が上がったとか色々ありますけど。

実際その頃のぼくは「ペレットと灯油、どっちが安い?」みたいな告知の仕方をよくやりました。だから「灯油より安いんだって?」と言って訪ねてくるお客さんが多かったです。展示場では「こんなにあったかいんですよ。灯油のストーブは1日使うといくらかかりますけど、ペレットならそれより安くてこのくらいで済みますよ」という話ばかりしました。

それが現在は、新築とかリフォームのタイミングでの設置が増えましたね。「ずっと憧れていたから」とか「友人宅で見て素敵だったから」と言う人が多い。自分のこだわりに合うモノを欲しがっている印象です。もはや「安く設置して」と言うような人は少なく、「やっぱり二重断熱煙突のしっかりしたもので大きさこれぐらいのものがいい」とか、「こういうデザインのものがいい」とか、「料理にも使えるものがいい」とか、そういう要望をよく聞きます。

ぼくらのほうも、家の性能が日々良くなって気密性も向上してるので、より小さなペレットストーブで済むようになっていたり室内が負圧になってしまったりということがあるので、常にしっかりとした勉強が必要だと感じています。

(後編へつづく)

text : Minoru Nasu  
photo: Isao Negishi

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