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再生可能エネルギーに取組む!/加藤総業 加藤聡さん・後編

2020.03.02

山形で再生可能エネルギー事業に取り組む先駆者たちとの対談を通して、その活動の原点や原動力そして未来のビジョンを探るシリーズ【グリーンエネルギー・フロンティア!】

今回のゲストは、加藤総業株式会社・代表取締役社長の加藤聡さん。聞き手は、ローカルエネルギーの研究者であり、東北芸術工科大学教授であり、そしてやまがた自然エネルギーネットワーク代表を務める三浦秀一さんです。

(前編はこちら)

再生可能エネルギーに取組む!/加藤総業 加藤聡さん・後編
加藤総業株式会社 代表取締役社長の加藤聡さん(右)と、やまがた自然エネルギーネットワーク三浦秀一さん(左)。酒田市内の加藤総業本社にて。


地域の事業を支えてくれる

ファイナンスの存在

三浦:2017年に設立された「ゆざウインドファーム」というSPCによる西遊佐風力発電事業は事業費約30億円、これは加藤総業さんの100%出資でやられています。地域企業でありながら大手でしかやれないような規模の事業を展開できるのはなぜなのでしょう。

加藤:すごいのは我々ではなく山形銀行さんです。山形銀行さんが非常に画期的なファイナンスのスキームをつくってくださった、ということです。

事業費30億円のうち、本来であれば10億ぐらいは自己資本を出すのが当たり前でしょうが、我々は2千万円しか出資していません。しかし、結果的にはこの過少資本でプロジェクト・ファイナンスが実現した、というところが非常に重要なポイントです。私の連帯保証なしで、この事業費のほぼ全額にあたる金額を融資してくださった。こんなこと、地域の他の金融機関ではどこもやってないでしょう。日本中を見ても本当にすごい、画期的なことです。

再生可能エネルギーに取組む!/加藤総業 加藤聡さん・後編

我々の風力発電事業に限らず、山形県における太陽光やバイオマスといったさまざまな再生可能エネルギー事業において果たしてくださっている山形銀行さんの役割とその貢献は、非常に大きいものです。

三浦:地域の金融機関である山形銀行さんに支えてもらったから実現できた、というわけですね。

加藤:その通りです。

三浦:あらためて考えてみると、再生可能エネルギー事業というのはビジネスとして非常に手堅い、という事実もそこに大きく影響しているようにも思えます。風力でつくられた電気はFITによって売り先も値段も決まってくるので事業計画が見えやすい。これなら金融機関も、事業リスクは大きいものではない、と判断できます。

加藤:そうかもしれませんね。

三浦:ただ、現状としてまだまだ再生可能エネルギーが手堅いビジネスであるということが一般の人たちには理解されていないというのが残念なところです。

加藤:我々の事業に関していえば、事業がうまくいくための重要なファクターのひとつは機械が壊れないことです。そしてもうひとつは風がちゃんと吹くということです。このふたつの信頼性が確保できたところで事業はコンプリートされお金がついてきます。

三浦:ここまでのお話を伺って、再生可能エネルギー事業を考える際には「お金がないからできない」という発想から「お金を借りてはじめる」という発想へと転換することが非常に重要だと感じました。特に地方の人というのはすぐに「たくさんお金がかかるのはムリ」と諦めてしまいがちな気がします。けれども「たとえお金がなくても資源があれば事業はできる」「お金を借りてはじめればいい」という方向に変えていかなくちゃいけない。

加藤:再エネ事業については、非常に性能の良い機器が調達できること。風力や太陽光のような自然環境がしっかりとあること。そしてそこに資金というバックボーンがあること。このテクノロジー・エンジニアリング、自然環境、ファイナンスという3拍子を揃えることがポイントなのだと思いますね。

三浦:「ここには自然はあるけれども、資金力がないからできない」と諦めがちな地域の人たちを勇気づけるようなお話でしたね。

再生可能エネルギーに取組む!/加藤総業 加藤聡さん・後編

酒田の洋上ポテンシャルと
港町としての魅力を生かしたい

三浦:先ほど、地域企業は地域と同じ船に乗っている、というお話がありました。地域が元気じゃないと地域企業も元気になりません。その意味では、酒田市はなかなか厳しい状況にあるのではないでしょうか。

加藤:ものすごく厳しいと思います。

三浦:そういうなかでこれからどういう展望を描かれますか。

加藤:再生可能エネルギー・ビジネスとしてこれから期待できるのは、洋上の風力発電でしょう。しかしその実現のためには、酒田港という大きなインフラの整備が必要です。なんといっても酒田の魅力は港町であることですから、そこに投資を繰り返していくということが重要ではないでしょうか。それが同時に地域に生きる私たちの可能性を広げることでもあるはずです。

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酒田市内にて。最上川河口から見える風車の風景。

三浦:洋上の風力発電と、魅力ある港としてのインフラ整備と。

加藤:そうですね。

三浦:今日のこの対談の最初のほうで「山形の風力発電のポテンシャルにはまだまだ余地がある」というお話がありました。これは実は、ポテンシャルがあると言える一方でそんなにあるとも言えない、という状況になってきていますよね。つまり、風車を建てるのはこれまでは沿岸部に集中してきたけれどもそれがだんだん厳しくなってきて、ポテンシャルとして残されているのは今後は洋上になっていくということです。

加藤:おっしゃる通りです。

三浦:多くの事業者、特に大手企業が、どんどんそこに資本投下しようとしているという状況ですね。その状況下で山形県の優位性というのをどう打ち出すことができるのかということになるけれども、まずはしっかりとした港湾施設がなければ海の上の風車もつくれないということですね?

加藤:まさにその通りです。

酒田がその魅力を存分に発揮したいい港町になっていくということは、風力発電事業にとってはもちろん、インバウンド的に見ても大きなインパクトを生むことでしょう。そして酒田に生きる人たちみんなにとっていい方向だと思います。

大切なのは今です。今から頑張っておかなければいけません。

大きなクルーズ船でたくさんのお客さんが来るとわかってから、あるいは洋上風力発電事業が実現しそうだからということで資本投下したのではやはり遅きに失していると言わざるを得ないと思います。そうした船や発電所が来る前にしっかりと整備しておくから地域が活性化するのです。ですから、一刻も早く、港町としての酒田港の整備をしっかりと行っていくということが非常に重要なのだと思いますね。
(2019.11)

text : Minoru Nasu  
photo: Isao Negishi

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