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地域課題に取り組み、未来をひらく / 山形県立村山産業高等学校

2021.03.15

2021年1月20日。
私たちリアルローカル山形の取材チームは、山形市から国道13号線を北上して真っ白な雪に覆われた村山市に入り、山形県立村山産業高等学校を訪問しました。ここは、農業・工業・商業という3つの産業分野の専門学科を併設している、とてもユニークな複合型専門高校です。

地域課題に取り組み、未来をひらく / 山形県立村山産業高等学校
真っ白な風景のなかに佇む村山産業高等学校の校舎

県立村山農業高校と県立東根工業高校が統合され2014年に開校して以来、この学校はグローバルな視点に立った先進的な産業教育の場として、実践的なカリキュラムを展開。地域の産業や社会の発展を担う人材を育成しています。

地域課題に取り組み、未来をひらく / 山形県立村山産業高等学校
左から末永さん、田村さん、阿部さん。3人のチームで課題研究に取り組んできました

さて、この日、私たちを出迎えてくれたのは、卒業を間近に控えた3人の3年生チーム。流通ビジネス科で学んできた末永愛乃さん、田村琴美さん、阿部ななみさんです。

彼女たちは、まさにこれから、自分たちが課題研究で取り組んできたテーマの研究成果を、村山市役所の担当者にプレゼンテーションすることになっていました。課題研究とは、自分たちで主体的に地域の課題を探り、発見し、調査し、解決の方法をプランニングし、それを実行し、そしてさらに改良していく…というような自主性重視の実践型学習プログラムです。

自分たちがどのように地域の課題を見つけ、どのような解決のしかたを考え、実践しようとしたのか。そしてそれを村山市の未来にどうつなげていきたいのか。彼女たちの学習成果の総まとめが、村山市への提言というかたちになろうとしていました。

地域課題に取り組み、未来をひらく / 山形県立村山産業高等学校
村山市担当者(左)に企画内容を説明

早速、村山市に対してのプレゼンテーションが始まります。彼女たちのテーマは「村山市への移住定住の促進」です。

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村山市の人口減少の推移などのデータを分析しながら、村山市に観光に訪れる人をいかにして移住定住につなげるかが課題であることなどを提示しました。

また、県外から地域おこし協力隊として村山市にやってきて暮らしている移住者の方たちへのインタビューを実施し、そこから得られた知見など、これまで自分たちで行ってきたさまざまな調査の結果報告も行いました。

地域課題に取り組み、未来をひらく / 山形県立村山産業高等学校

彼女たちからの提案の要旨は「お試しで1ヶ月間だけ村山市に暮らしてもらう体験移住プログラム(=おためし地域おこし協力隊)を用意してはどうでしょうか?」というものでした。観光で訪れた人に村山市を好きになってもらい、地域おこし協力隊として移住してもらい、やがては定住してもらうという一連のプロセスの「間口を広げてみる」というアイデアがそこにありました。

もちろん、体験移住プログラムの具体的な内容案と、そのプランを実行するために村山市が負担することになるであろう経費予測とその根拠までがしっかりと示され、盛り込まれていました。

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実はこの数ヶ月前に一度、村山市へのプレゼンテーションが行われていたのでした。しかし、そのときには、彼女たちのプランのなかに改善すべき点がいくつか指摘されていました。今回のプレゼンにおいてはそれらの指摘事項がきちんと改善され、より良いプランへとブラッシュアップされていることを理解した村山市担当者は、彼女たちの提案を実現可能なものとして高く評価していました。

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提案のあった「おためし地域おこし協力隊」を市として実施することに

プレゼンテーション後には、村山市担当者より、「おためし地域おこし協力隊」のアイデアをぜひ積極的に取り入れていく、とのコメントがありました。彼女たちの学習成果としての提案は、市の政策へと結びついていくことになったのです。

プレゼンが無事に終わり、末永さん、田村さん、阿部さんはホッとした表情を見せてくれました。

「自分たちとしては、本当はプランが実際に実施され、それがどうなるのか検証するところまでをやりたかったのですが、コロナの状況などもあり、なかなか進めるのが難しかった一年でした。ぜひ、そこの部分は、次の課題として2年生にこれから引き継いでもらいたいです」と語ってくれました。

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3年生の代表チームが課題研究をプレゼンテーションする「学習成果発表会」がひらかれていた

また、まさにこの日の村山産業高校耕道会館では、流通ビジネス科、農業経営科・農業環境科、機械科・電子情報科の3年生の代表チームによる学習成果発表会が行われていました。

1、2年生にとっては、やがて自分たちもチャレンジすることになるであろう課題研究というものが、どんなものかを知る機会になります。先輩たちがどんな課題に向き合い、どんな解決をめざしたのかを受け継ぐ機会にもなります。

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買い物難民の不便さをどうしたら解消できるのか、という課題の解決をめざしたチームの発表

また、農業・工業・商業という3つの専門学科が、その専門分野の研究を行うだけでなく、ときには互いに連携したり協力をしながら、研究成果を導き出していたというのも、この学校特有のおもしろさを感じさせるものでした。

この学校では、こうして自主性に基づいて課題を見つけ解決していく学習のあり方が伝統として受け継がれていこうとしている、ということをこの学習成果発表会の風景を目の当たりにした私たちリアルローカル山形は理解しました。

今は、持続可能な地域づくりというものが一体どうしたら可能なのかが問われている時代です。これからの地域に必要とされるのは、地域の未来をひらく若い人材です。この村山産業高校に根付いたこの自主性に基づく学びは、地域の未来を真剣に考えるきっかけとなっています。そして、それはやがて、地域の未来をつくる人材を生み出すことにまちがいなくつながっていくはずです。

山形県立村山産業高等学校Webサイト

text 那須ミノル(real local 山形)
photo 伊藤美香子