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【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。

ゲスト寄稿

2021.09.06

「HOKUROKU」は、“県境にとらわれない、北陸3県(富山、石川、福井)を広く見渡したメディアをつくろう!”と、昨年5月に生まれたWebメディア。移住者を中心に構成されたメンバーで、怪談話から写真論まで、さまざまなトピックを取り上げています。私たち「real local金沢」を取材いただいたご縁から、富山在住の編集長・坂本正敬さんに寄稿いただきました。

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
富山の祭り。写真:大木賢

はじめまして。北陸3県を舞台とするウェブメディア〈HOKUROKU〉を富山で運営する坂本正敬と言います。HOKUROKUではこんな読み物だとか、

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
(※クリックすると「HOKUROKU」サイトの記事ページに飛びます)「北陸の怪談。金沢の『子育て幽霊』編。」

こんな特集だとか、

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
(※クリックすると「HOKUROKU」サイトの記事ページに飛びます)「新・文章読本。分かりやすく美しい「読点」の作法。」

こんな対談記事だとかを過去にリリースしてきました。

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
(※クリックすると「HOKUROKU」サイトの記事ページに飛びます)「 イナガキヤスト×大木賢。『バズる』写真論。」

現地調査を兼ねたこんな特集づくりも手掛けています。

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(※クリックすると「HOKUROKU」サイトの記事ページに飛びます)「 ダスキンの『Gメン』に聞く。古民家リノベのゴキ〇リ対策。」

ウェブメディアらしく、一方では動画機能を活用したこんな企画もやっています。

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(※クリックすると「HOKUROKU」サイトの記事ページに飛びます) 「 北陸『ローカルCM』ミュージアム。」

「ローカル・WEBマガジン・レポート」という連載もHOKUROKUには他にあって、北陸のすてきなウェブメディアを順番に取り上げています。

その第1弾として〈real local 金沢〉を過去に紹介させてもらいました。

その縁がきっかけとなって、今度は私が逆に文章を寄稿させてもらっている次第です。しばしお付き合いください。

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
(※クリックすると「HOKUROKU」サイトの記事ページに飛びます) 「ローカル・WEBマガジン・レポート〈real local 金沢〉編。」

富山の人間ではもともとない私は、いわゆる「移住者」です。
東京で生まれ、埼玉で育ち、成城大学という東京の小さな私立大学で芸術を学んで、テレビ業界に就職しました。仕事を辞めた後は富山へ引っ越し、かねて興味のあった翻訳・文筆業で個人事業主になりました。

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坂本正敬(さかもと・まさよし)。国内外での取材活動を通じて文筆・翻訳・編集をする。写真はカナダのトロント

引っ越した時期は15年くらい前です。恋人も居ない独身の身でしたし、働いていたテレビ業界で確固たる地位があったわけでも全くありません。

仕事を辞めてからは、テレビ番組の取材で知り合った人の家を間借りする形で、迷いなく富山へ引っ越しました。

ただ「引っ越し」と言っても長期旅行の感覚です。まして「移住」などという壮大な決断ではありません。

地方で生まれた人が地元に飽きて都会へ引っ越す感覚と一緒で、東京中心の生活に完全に私も飽きていました。

東京以外であれば(東京のにおいがする関東以外であれば)正直どこでも良かったわけです。

情報産業の中心地として当時は揺るぎのない存在だった東京をあえて離れる自分の「逆張り」のユニークさを、面白がっていた節もどこかであったと記憶しています。

1年も暮らせば移住のワクワクも落ち着きを見せ始める

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
富山県射水市の新湊地区。撮影:山本哲郎。

北陸の一部である富山へ引っ越した当初は、見るもの全てが新鮮で、日常のそこかしこに感動が転がっていました。

「東京から来たテレビ業界の人」という肩書だけで、一目置かれる感じも悪くありませんでした。ちょっと特別な人になった気分です。

しかし1年も暮らせば引っ越し間際のワクワクもさすがに落ち着きを見せ始めます。縁もゆかりもない富山に暮らしている状況を当初ほど無邪気に面白がれなくなりました。

「東京から来た」と周りから一目置かれたところで、確固たる地位を東京で築きトップランナーとして活躍していたわけでもありません。

何かを仕掛ける地力(じりき)もなく、富山で始めた翻訳・文筆業も、東京の出版社や新聞社などの仕事ばかりです。

ノマドワーカーのように頃合いを見て場所を変え、あらためて他の地域に暮らしの新鮮さを求めようかとも考え始めていました。

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
富山市の八尾。撮影:柴佳安

どうしてそれでも富山にとどまったのか。正直に言えば偶然が重なっただけです。

しかし今から振り返ってみるとこの偶然が人生を良き方向に導いてくれました。

結婚相手との出会いがまず富山でありました。相手の都合も考え、富山で生活を継続する理由が生まれます。

ちょうど同じころ、在京の出版社の媒体で「坂本さんは富山に住んでいるから」と富山のローカルを突っ込んで取材する機会も訪れました。

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
東南アジアのジャングル取材の様子

その仕事を受ける前は、富山に関係した仕事が変わらず皆無でした。むしろ海外メディアでの執筆を上の写真みたく熱心にスタートしていたくらいです。

言ってしまえば住所が富山にあるだけで、富山の人たちと業務上無縁の生活を送る日々は決定的になっていました。

ところが上述した媒体で執筆が始まり、出会う人の顔ぶれが少しずつ変わると、土地に「寄生」して生きるだけでは分からなかった地方の豊かさが見え始めてきたのです。

当時の私にとっては静かな興奮を伴う変化でした。

「鼻血が出るくらい」楽しい

取材を通じて地元の人との出会いが増えると、地に足の付いた、土地に根付き始めた感覚も生まれ始めました。

富山県射水市の新湊地区にある内川沿いでカフェや宿や飲食店などの拠点を次々と立ち上げ、にぎわいを生むプロデューサーの明石博之さんとの出会いもその過程で生まれます

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
グリーンノートレーベル株式会社代表取締役・明石博之さん。HOKUROKUを後に一緒に創刊する。撮影:山本哲郎

この明石さんとの出会いが、後に訪れるHOKUROKU創刊の「種まき」となりました。

明石さんを上述の媒体で取材した際、お互いの身の上を話す機会があり、「クオリティの高いウェブメディアが地方発で必要だよね」と意見が一致しました。

ウェブ専業のメディアは当時も今も地方にたくさんあって、地元のお出かけ情報などを扱っています。

しかしクオリティの面では「草野球レベル」にとどまっている印象が富山では強い気がしました(偉そうにごめんなさい)。

本来は自由なはずのウェブメディアなのに、新聞やテレビなど旧来のメディアと同じく、扱う情報を狭い県域で区切っている窮屈さも地方のウェブメディアには感じていました。

「ならば、富山にとどまらず北陸3県を広く見渡した、クオリティの高いウェブメディアを一緒に創刊しよう」と明石さんと意気投合します。

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
HOKUROKU副編集長の大坪史弥さんも仲間に加わってくれたメンバーの1人

事業プランナーにして弁護士の伊藤建さん、ウェブディレクターの武井靖さんなど、後に創刊メンバーとなる仲間も、明石さんは次々と見つけてきてくれました。

うわさを聞き付けたクリエーターが続々と参加を表明してくれる中、1カ月間のクラウドファンディングを経て、2020年(令和2年)5月31日にHOKUROKU創刊の運びとなります。

参考:地元の魅力を再編集!北陸の見え方が変わる、WEBメディア創刊

ある人の言葉を拝借すれば「鼻血が出るくらい」楽しい毎日がその日から始まりました。

金沢を拠点に活躍するフォトグラファーの山本哲郎さんも創刊後に運営メンバーとして加入してくれます。

「移住者」ともてはやされるだけで満足して、ノマド生活や多拠点生活に近い形で国内外を転々とするだけでは、この楽しさや広がりは得られなかったと今だから思います。

静かな語りの中に移住の価値は見つかる

【北陸】《Webメディア「HOKUROKU」編集長》「移住者」ともてはやされているうちは地方の楽しさは分からない、きっと。
富山県射水市の新湊地区を流れる内川。写真:大木賢

金沢へ、あるいは北陸へ移住を考えて熱心に情報収集する読者の皆さん、さまざまな方法で移住の体験談を見聞きできる環境が今は整っています。便利な世の中になりましたね。

移住の楽しさや喜びはしかしながら、一朝一夕では分からないと個人的に思います。

移住して間もない「新人」の熱っぽい体験談にどれだけ多く触れたところで、旅行者や長期滞在者の感動レポートと本質的に内容が大差ないので、移住の本当の意義は見えてこないのかなと思います。

むしろ移住してから相当な年月がたち、もはや地元の人たちから移住者扱いすらされなくなった「ベテラン」の静かな語りの中に、移住の価値を探してほしいと思います。

その上で引っ越しを決意したとすれば(どこの地域に行ったとしても)、事情が許す限りできるだけ長くとどまってみてください。

「試住」など、魅力的な移住の提案も現在はあるので一概には言えないのかもしれませんが、土地を転々とするだけでは移住の醍醐味(だいごみ)にいつまでたっても触れられないと私は思います。

引っ越し間際の目新しい感動が消え失せても、心に決めた土地にとどまり、静かな年月を黙々と過ごしてください。

冠婚葬祭も何度か経験するでしょう。「鼻血が出るくらい」楽しい何かは、その先に初めて見つかるのかなと感じています。

いろいろ考えた末に、今居る場所でもう一度頑張ってみる生き方も、もちろん「あり」です。

極論を言えば、引っ越す(移住する)先の地名などどこでもいいわけですから。

どこに居たとしても腰を据えて何かに取り組んでいけば、納得できる生き方が見つかるはずです。

たまたまその場所が皆さんにとって、何かの縁で北陸だったとすれば、もちろん私としては大歓迎です。

移住を考える人たちのささやかな導きの糸にこの寄稿文がなって、いつか皆さんと北陸のまち角で偶然出会えたら、本当にすてきですね。

ご一読、ありがとうございました。

URL

HOKUROKU

https://hokuroku.media/

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