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山形県寒河江市の秘密基地「さがえベース」をフル活! 関東から訪れたワーケーション体験 前編

ワーケーション体験

2022.01.31

寒河江市に新しく移住体験、ワーケーション用の施設「さがえベース」ができました。3泊4日~最長で30泊31日まで無料で滞在できるその施設を関東在住のライター・福瀧智子が体験! 寒河江市に住むように「暮らし」を楽しみました。前編後編に分けてお送りします。
ワーケーション体験レポート(後編)はこちら
番外編 「葉山」に登ったアウトドア編はこちら

まずはリモートで仕事をしながら実際に暮らしてみた1日をご紹介します。

山登りに来たら山麓の街がすごかったお話

登山やアウトドアの雑誌で編集の仕事をしている私にとって、山形県は身近な県のひとつです。夏や秋の登山はもちろんですが、雪のシーズンになると仲間と関東から高速をひた走り蔵王へ、また近年はバックカントリースノーボードで月山に足を運んでいます。国内でも有数の雪質・フィールドの奥深さに、滑り好きは本当にメロメロになるエリアなんです。

山形県寒河江市の秘密基地「さがえベース」をフル活! 関東から訪れたワーケーション体験 前編
深い雪に覆われた厳冬期の月山。徒歩で登り滑って降りてくるバックカントリーのフィールドとしては、日本国内でも有数のポテンシャルを秘める(写真提供:ふくたき)

そんな山形県のほぼ中央に位置する、さくらんぼで有名な寒河江市という街に、登山でいい山がある……と山形の友達から耳にしたのは昨年のこと。しかも、県の山として全国区である蔵王山や月山、鳥海山などを抑えて県民が愛着を持つ山「やまがた百名山」の堂々第1位というのだから、そりゃ仕事でなくとも一度は登ってみたくなるというものです。

それが寒河江市の最高峰・葉山(標高1,462m)です。

コロナ禍による緊急事態宣言が明け、人の往来が戻り始めた21年10月、ついに念願叶って葉山へ登ってきました。ご縁がありここ『real local山形』にてその模様をレポート! ……と言いたいところですが、滞在中のおどろきはその山麓の寒河江市にありました。

登山レポートは番外編とし、まずは盛り上がりに上がった街の様子をお届けします。

あまりの条件のよさにかなり教えたくない施設「さがえベース」

職業病的というか個人的興味というか、せっかく葉山へ登山に行くのだから……と周辺情報も調べてみたところ、とんでもなく寒河江市の滞在に使え過ぎる(なんだそれ)施設があることがわかってきました。

その名も「さがえ心地体験住宅 さがえベース」

その施設は、移住を検討している人やワーケーションを行なってみたい人、起業や就農を考えている人向けに、寒河江市内で生活体験ができる場として市が用意した住まいのこと。ちょうど2021年秋から運用が本格的に開始されたという、できすぎのタイミングで情報を入手したのでした。

普通にビジネスホテル泊でお茶を濁そうと思っていた私のもとに降って湧いたような魅力的すぎる情報。勢いそのままに市に問い合わせて利用条件を聞いてみると、寒河江市「外」在住者で、ワーケーションや移住を検討していて、未成年だけの利用ではないことなどが主な条件とのことでした。

ワーケーションとは、リゾートや地方で休暇を取りながら仕事をするという働き方で、2020年夏に話題のワードとしてトレンドを賑わせました。アウトドアを扱う職業柄、仕事と遊びがつねに並行している私にとってワーケーションは日常で、キャンプ場で仕事(編集作業)することもよくある話。過去には無人島で雑誌の原稿を書いたこともあるくらいなので、壁と屋根のある場所が利用できるなんて、ワーケーションの“ワー”の部分としては天国としか形容しようのない環境なわけです。

よっしゃ、条件は全部クリアやないかい。

しかも、最低でも3泊4日以上、最長30泊31日まで利用が可能。この聞きなれない30泊31日ってセレブのホテル暮らし以外見たことないような数字なんですけど。

そのうえ、なんと利用料が無料! 

これは申し込むという選択肢以外何があるというのでしょうか。

……ということで、万全を期して前のめりで行ってまいりました、寒河江市&「さがえベース」! 市役所に問い合わせたことでとんとん拍子に話が進み、ワーケーション体験記を書くことになるとは思ってもみなかった展開なのですが(笑)。

羽田空港からおいしい山形空港へひとっ飛び! &利用手続き

早朝に東京・羽田空港を飛び立った私たちは、ぶじ山形県内に着陸しました。

利用したのは「おいしい山形空港」。

いや~なんと朝からそそる愛称の空港でしょうか。この愛称は3,700通を越える応募の中から8歳の男の子の案が採用されたそうなんですが、「山形にはおいしい物がいっぱい。山形に来るとおいしい(いい)ことがたくさんある」と本人がコメントしたのだとか。

何がどうおいしいのか、詳しくはこのあと明らかにしていく予定です!

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普段は車に遊び道具を満載に東北自動車道をひた走るが、飛行機なら1時間。飛び立ってまもなくすると下降準備に入るという、驚愕の近さであった。
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羽田ー山形間はJALの直行便が運行。レンタカーはもちろん、山形市や寒河江市とを結ぶシャトルバスもバッチリ運行している。

施設を利用する人は一律に、まずは寒河江市役所で手続きを行ないます。利用規約や施設の説明、生活に必要な周辺の情報を教えてもらいます。

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窓の外は山形の山並みが一望できる寒河江市役所。説明は「さがえベース」担当の企画創成課・荒井仁志さん。左奥で難しい顔して仕事をされている武田伸一課長も今回の重要人物です。

さあ、いよいよ生活開始。

市役所から車で5分足らず、JR寒河江駅にも徒歩圏内のグッドロケーションに「さがえベース」がありました。

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シャッターと屋根付きの車庫が正面にお出迎え。その奥に家族で住まうようなサイズ感の一軒家が鎮座していました。

そう、アパートじゃないんです、家なんです。戸建てなの!

木造2階建て、2LDK。自然光がたっぷり入るリビングを中心に、テレビや扇風機など家電も完備され、Wi-Fiもばっちり飛んでいます。これはありがたすぎるセッティング。

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リビングにはプリンター付きの仕事用デスクが備えられ、奥には2口コンロ・中型冷蔵庫のある使いやすいキッチン。最低限の調理器具や食器もありました。2階には日当たりのよい和室が2間あり、最大5名までの利用としてはお釣りが来る広さです。

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ここに30泊してもええのか……。1カ月あればあの場所であんなこと、この場所でこんなことができる……。ワーケーションの“ケーション”部分の妄想がいよいよ暴走してまいりました。

そして生活体験として欠かせない自転車が2台、車庫に準備されています。高校時代を思い出すなつかしのママチャリ。

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Day1:なにはともあれ寒河江市散策

ワーケーションの“ワー”はのちほど行なうとし、まずは周辺の散策にでかけることにしました。葉山登山で必要な買い出しも済ませる予定です。

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羽田空港とおいしい山形空港間を直行する飛行機は1日2便ありますが、早朝便で行動して市役所で「さがえベース」の利用手続きなどを終えると、10時ごろには行動が開始できます。初日から半日以上自由に使えるというのは非常にありがたいですよね。

というわけで、まずは早々に売り切れ必至とネット上を賑わせていた話題のベーグル専門店へ。さがえベースから自転車で約8分ほどで「グリュックベーグル」です。

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オーナーは寒河江市出身の女性で、勤めていたパン屋から独立し2016年に地元へベーグル専門店をオープン。国産小麦100%と自家製酵母を用いた完全無添加の手作りベーグルを販売している。卵やバターを用いず、砂糖の使用も最低限。もちもち、柔らかな食感が世代を超えて人気で、サンドイッチタイプのベーグルサンドも。オーナーおひとりで作られるため1日の販売数が限られ、季節ごとのベーグルも訪れる楽しみのひとつ。

グリュックベーグル 
寒河江市鷹の巣7 TEL:0237-85-1885 営業時間:11:00~なくなり次第終了 定休日:月曜日(臨時休業あり)

登山で食べる以上に買い過ぎたので、朝食でもいただくことにします。「さがえベース」は台所が完備されているため、ホテル利用と違い自炊という選択肢がありなのは非常にうれしいところ。

そしてグリュックベーグルから自転車を走らせること15分弱で、お次は「そば処 吉亭」へ到着。混み合う前の時間帯に間に合って、お昼に入店。

ここは「おいしい」と評判を聞いて冬に1度来たことがあり、いわゆる日本人が抱く「そば」の概念がいい意味でくつがえされた名店です。まさかここにチャリで訪れる日が来ようとは……。

全国のみなさん、知ってました? 冷たいんですよ、このおそば。

寒河江市に隣接する河北町が発祥と言われる郷土食の「冷たい肉そば」。近年注目を浴びるここ一帯のご当地グルメなのですが、歯ごたえのある鶏肉とネギがおもな具材で、つゆは鶏出汁。脂が固まらないギリギリの冷たい温度で食べるのですが、これがあと引くおいしさ! このおつゆに中華麺を入れた肉中華(ラーメン)も人気があるんだそうです。

山形県寒河江市の秘密基地「さがえベース」をフル活! 関東から訪れたワーケーション体験 前編
肉そばで有名な寒河江市内でも人気の「吉亭」。ほんのり甘みを感じる上品なおつゆがあとを引き、ムネとモモのまじった噛みごたえある鶏肉(親鶏)がたっぷりとのせられる。そばは冷水でキュッとしめられ、歯ごたえのよい食感。ここにゲソ天を合わせて食べるのが肉そばの流儀?なんだとか。

そば処 吉亭 
寒河江市みずき1-6-10 TEL:0237-84-2355 営業時間:10:45~15:00(土日は16:00まで) 定休日:火曜日

さらに山と生活のために買い出しは続きます。

山形県寒河江市の秘密基地「さがえベース」をフル活! 関東から訪れたワーケーション体験 前編
盆地に位置する寒河江市は周囲が山で囲まれるロケーション。月山はすでに冠雪していた。

「さがえベース」から南西方面に自転車で7分ほどのところには、市民の胃袋をささえる産直センター「アグリランド」がありました。

見よ、この品揃え! 朝採れ野菜やくだもの、お肉や乳製品、加工品など……などすさまじい物量。近隣のみならず、周辺の町からもお母さんがたが買い物にやってきておられる模様。寒河江市周辺の食の豊かさがかいま見れるシーンです。

山形県寒河江市の秘密基地「さがえベース」をフル活! 関東から訪れたワーケーション体験 前編
品揃えは山形県内トップクラスという産直施設「JAさがえ西村山 アグリランド産直センター」。県内最大規模の広い売り場には地元生産者による新鮮で安全な農産品や加工品が並び、開店前から多くの人が並ぶ人気の施設。山形自動車道・寒河江SAに隣接。

JAさがえ西村山 アグリランド産直センター 
寒河江市大字寒河江字久保2 TEL:0237-84-7888 営業時間:9:00~18:00(1~3月は17:00まで) 定休日:年始

流通に乗らず全国では食べられない地産地消の食材もあり、めずらしい食材への興味も尽きません。調味料をがっつり持ち込み、リアルに「さがえベース」で30泊31日を地でやりたい衝動に駆られます。これは料理や食べるのが好きな人はたまらない光景でしょう! しかもお安いんですよ(涙)。

アグリランドの向かいには、最上川沿いに作られた「最上川ふるさと総合公園」がありました。

寒河江SAに隣接したハイウェイオアシスとして整備された公園で、遊具の数と大きさは首都圏の公園とは比にならない規模感。東北最大級のスケートパークが併設されるなど、子どものいる家庭には非常に助かる施設といえます。実際、週末は近県から遊びに来る家族も多いのだとか。

山形県寒河江市の秘密基地「さがえベース」をフル活! 関東から訪れたワーケーション体験 前編
最上川沿いに横長の敷地に広々設営された県営の都市公園。立地条件をいかしてサクランボなどの果樹を園内に栽培するなど、訪れた人が山形を体感できる公園になっている。

最上川ふるさと総合公園
寒河江市大字寒河江字山西甲1269 TEL:0237-83-5195 営業時間:9:00~18:00(4~11月)、9:00~17:00(12~3月) 休業日:月曜、12月29~1月3日

食材の豊かさや、公園の充実ぶりなど生活に欠かせない要素を目の当たりにすると、つい実際に住んでみたら……という目線で暮らしを想像するのは、日本をあちこち取材に訪れている私の仕事柄でしょうか。自然が豊かで食べ物がおいしいことは、そこへ住まう上で私には「絶対条件」と言えます。

そして、その地に根を下ろし親戚や友人をゆくゆく招くことになったときに、気軽に案内できる範囲内に私がいま寒河江市のあちこちに感じているような小さな驚き、魅力がこまごまとあることもポイントに感じます。東京ディズニーランド(のような引きの強い施設)はなくていいので、産直や飲食店や温泉など生活に密着した小さな楽しみが点在している方が全然いい。

そういう意味で、JR寒河江駅の目と鼻の先にある「GEA」も驚きのひとつでした。

地元の紡績ニットメーカーである佐藤繊維が手がけるセレクトショップです。かつて工場として使われた石造りの蔵をリノベーションした建物に、山形をはじめ、国内外から厳選したファッションアイテムや雑貨が並び、レストランも併設。

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佐藤繊維は原料の選定や糸づくり、アパレル製品の仕上げまで自社で行なうメーカー。世界中のファッションブランドが買い付けに来るなど世界的に注目を集める。
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3つのセクションにわかれるGEAのうち、GEA#2は国内外から集めたインテリアグッズや食器、キッチンツールなどが並ぶ。またお隣の天童市の家具メーカーとコラボしたイスやソファなどや山形の作家による手仕事の品も。

GEA
寒河江市元町1-19-1 TEL:0237-86-3930 営業時間:11:00〜19:00 定休日:火曜日、年末年始

……い、いかん。完全に“ケーション”が突っ走ってしまっている!

ということで、いったん要返信のメールの束をさばきに「さがえベース」へ帰宅。ちなみに今までのこれ、全部自転車圏内です。地元の方は車で回られるんだと思いますが、日々電車や自転車移動に慣れ親しんでいる身としては、普通に行動範囲内。近距離の中にスポットが集中している印象です。

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寒河江市にはJR山形駅から左沢(あてらざわ)駅を結ぶ左沢線が走る。寒河江駅から山形駅までは30分ほど。

「さがえベース」に戻ってパソコンを開き、いくつか仕事の案件を確認。ワーケーションのオンとオフの切り替えはこれはもう慣れるしかありませんが、“仕事モード”へ入らざるを得ないデスクが用意されているのはワーケーション目的で来た身としては非常にありがたいですね。

家族で利用する場合は、片方の親が子どもたちと外出し、残った方が「さがえベース」で仕事に集中……という使い方もよさそう。コロナ禍の2年間で半ば強制的に在宅ワーク、オンライン会議などが一気に普及したのは、ワーケーション的な視点から見ればある意味よかったと言えるかもしれません。

山形県寒河江市の秘密基地「さがえベース」をフル活! 関東から訪れたワーケーション体験 前編
「いまどこ?」「●●県の◎◎ってとこ」「へ~いいじゃん」みたいな会話がオンライン会議で普通になる日も遠くないかも。

2階の和室も充分な広さがあり、グループで利用する場合は日中は静かな2階を仕事場にしてもいいかもしれませんね。あまりの日当たりのよさに昼寝必至ですが……。

さて、とりあえずの仕事を終え、日没が迫ったころに「さがえベース」ご担当の荒井さんが勧める焼きとり屋へ。こんばんは~。 

「さがえベース」から徒歩圏内にある「焼きとり 庄ちゃん」は、かつて寒河江駅前の飲み屋街の中心で人気を博していた名店で、14年に現在の場所へ移転。寒河江で1~2位を争う居酒屋として、いまも変わらず平日でも要予約の人気店なんだそう。名物の「焼きとり」は鶏だけでなく豚のよい部位も「焼きとり」として提供するのが寒河江流なのだとか。

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レバー「れば」(120円)のタレ味に、地酒「大辛口純米 冷おろし 大虎」(ヤバい名前だ)を添えて。お兄さん、よい上腕二頭筋をされていますね……。

そこへ、荒井さんが登場。
傍らにおられたのは、松田光広さんというただならぬ存在感を醸し出すお方です。松田さんは2016年から3年間寒河江市の「地域おこし協力隊」で活動されていて、寒河江市に来る前は青年海外協力隊の隊員として2年間タンザニアで写真を教えていたというカメラマンさんなのだそうでした。
た、たんざにあってどこだっけ。

山形県寒河江市の秘密基地「さがえベース」をフル活! 関東から訪れたワーケーション体験 前編

「東アフリカにあるタンザニアから帰国したタイミングで、偶然寒河江市の地域おこし協力隊の募集を目にしたんですよね。内容は軽部草履という伝統ある草履の情報発信の仕事だったんですが、ちょうど日本らしいものに関わりたいと考えていたので、応募しました」

3年間の任期を通じて寒河江の生活にどっぷり浸った松田さんは、気づくと離れられないくらい寒河江に愛着が湧いていていることに気づいたのだそう。定住した現在は、寒河江を拠点として広告写真などの撮影やデザイン業務を請け負う会社を起業し、ローカルに根付いた仕事を生業としているんだそうです。

都会が恋しくないですか?という問いには、

「タンザニアを始め世界を50ヶ国回ったことで、日本の地方のよさを感じられるようになったと思います。そういう意味で寒河江は食べ物がおいしく、自然もたくさんあって本当に住みやすい。街の中心部にいけば生活の不便さはまったく感じないし、おいしい焼きとり屋にも困りませんよね(笑)。今やAmazonでいつでも買い物だってできます。その地で仕事をみずから作っていける人なら地方暮らしは全然可能。寒河江市は本当に住みよいところだと思います」

タンザニア、寒河江市。縁もゆかりもない遠方への移住にはそれなりの覚悟をともなうものですが、いともあっさりその境界を超え新しい生活に飛び込む松田さんの軽快なフットワークは、聞いていて尊敬の念と清々しい思いがするのでした。“暮らしを営む”とは何なのか……を考えさせられた夜となりました。

そのあと訪れた温泉が妙に染み入ったのは、泉質のせいだけではなかったのかもしれません。

山形県寒河江市の秘密基地「さがえベース」をフル活! 関東から訪れたワーケーション体験 前編
泉質が異なる3種類100%源泉掛け流しの温泉を楽しめる日帰り入浴施設。男女それぞれに内湯2つ、露天風呂が1つあり、山形の温泉ソムリエのイチオシ施設でもある。さがえベースから自転車利用で7分ほど、山形自動車道寒河江SAスマートインターチェンジの出口すぐ。

寒河江 花咲か温泉 ゆ~チェリー
寒河江市大字寒河江字久保15 TEL:0237-83-1414 入浴料:大人350円、小人150円 営業時間:6:00~22:00 休業日:毎月第1月曜日(祝日の場合は翌日)

後編へ続きます。

Photo:田渕睦深
Text:福瀧智子