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山形・寒河江市でワーケーション 番外編「やまがた百名山」の堂々第1位・葉山で日帰りトレッキング

体験プログラム

2022.02.07

山形県のほぼ中心に位置する寒河江(さがえ)市に新しく移住体験・ワーケーション用の施設「さがえベース」ができました。3泊4日~最長で30泊31日まで無料で滞在できるその施設を関東在住のライター・福瀧智子が体験! 寒河江市に住むように「暮らし」を楽しんだ前編後編に続き、番外編として「葉山」に登ったアウトドア編をリアルレポートします(取材は2021年10月下旬)。
ワーケーション体験 (前編)はこちら
ワーケーション体験(後編)はこちら

山形・寒河江市でワーケーション 番外編「やまがた百名山」の堂々第1位・葉山で日帰りトレッキング

登山前にまずは湧水「長命水」でひと呼吸を

登山やアウトドアの雑誌で編集の仕事をしている私にとって、山形県は身近な県のひとつです。夏や秋の登山はもちろんですが、雪のシーズンは別格。国内でも有数の雪質・フィールドの奥深さに、滑り好きは本当にメロメロになるエリアです。

そんな山形県のほぼ中央に位置するさくらんぼで有名な寒河江市に、トレッキングで超いい山がある……と山形の友達から耳にしたのは一昨年のこと。しかも、県の山として全国区である蔵王山や月山、鳥海山などを抑えて県民が愛着を持つ山「やまがた百名山」の堂々第1位というのだから、そりゃ仕事でなくとも一度は登ってみたくなるというものです。

それが寒河江市の最高峰・葉山です。

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寒河江市のある山形盆地からも目にすることができる葉山は、月山から東に約17kmに位置する標高1,462mの山です。

寒河江市から登山口までは車で40分ほどとアプローチがよく、気軽に登れることから学校の遠足などでも利用されるほど。まさに市民の憩いの場と言える山なんですね。あとで詳しく解説しますが、702年に開山された修験道の山でもあり、かつては「出羽三山」のひとつに数えられていました。

山頂までのコースは大きくわけて5つ。メインとなるのは市営の「葉山市民荘」を起点とする畑(はた)コース。この市民荘から稜線へ上がり、そこから山頂までを歩く片道約2時間半ほどの行程です。

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「葉山市民荘」は畳の休憩室やトイレ、駐車場を完備した無料の施設。建物は5月1日から10月20日まで共有スペースを使用でき、それ以外の期間はトイレのみ利用可。

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今回は寒河江市役所で「さがえベース」を担当される荒井さん(右)と、その上司の武田課長(左)にご案内いただくことになりました。職場にいらっしゃるときと雰囲気が全然違い、山好きの匂いが香り立ちます。これは心強い!

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日本百名山を7割ほど踏破している山好きの武田伸一課長(左)と、「さがえベース」担当の企画創成課・荒井仁志さん(右)。

さぁ、準備体操をしたらいざ入山!

……とその前に、市民荘の前の湧水「長命水」をお忘れなく! 山形県が選定した「里の名水・やまがた百選」のひとつで、全国の湧水に目がない今回のフォトグラファー田渕さんは我れ先にと水を汲みに行きました。おそらく今日の彼女のメインはこれだな……。

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霊山葉山を源にする伏流水。水温は年間を通して7~8度と非常に冷たく、水量も豊富。登山客だけでなく、水汲みの目的で訪れる人も多いそう。

トイレを済ませ、準備が整ったら登山口まで葉山市民荘の裏手に伸びる林道を上がっていきます。緩やかな傾斜があり、ちょうどよいウォーミングアップですね。

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里はちょうど紅葉最盛期で、木々の色付きがとてもきれい!

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ゆっくり歩いても10分ほどで登山口に到着しました。

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設置された登山カウンターを押して、いよいよ入山です。武田課長や荒井さんが所属する市役所でこの人数も管理されているんだとか。

ここから本格的な登山道が始まります。

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標高750mから始まる畑コースは、登山口から眺望のきく稜線までは400mの標高差、約1時間半ほどの歩行。山好きとしては短すぎず長すぎもしない、ちょうどいい距離感。道中の期待が膨らみます。

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いや~いきなり頭上も足元もきれいったらない!! PCばかり見つめている生活から打って変わって、まさに目の保養ですね。

一帯に広がる見事なブナの原生林

最初こそ道幅は狭く木々もうっそうとしていましたが、30分ほど急坂を登ると登山道が広がり、見事なブナの原生林が始まりました。人里から近いのに伐採を免れているのは、この山が信仰の対象であるからでしょうか。

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ブナは落葉広葉樹なので、この季節は葉っぱが落ち森全体がとても明るくなります。場所によって太陽の光が入り、木漏れ日も本当に美しい。

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ジワジワと楽しさを噛みしめるフクタキ。うっすら汗ばんできました。

ブナ林はとても高い保水力によって雪解け水や雨水をしっかり蓄える力を持っています。20~30年の歳月をかけて落ち葉が腐葉土となり、その栄養価の高い土壌を通って水がじっくりろ過され、地表へとわき出してくるのですが、それがさきほどの「長命水」であり、また寒河江市の果物や野菜、お米「つや姫」、日本酒造りの源となります。水の循環を感じながら歩くトレッキングに心も洗われるような思いです。

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そうこう言っているうちに「一服台」へ到着。まさに“休憩せよ”と言わんばかりの平地で、立岩コースとの合流地点です。

登山では、行動中にサッと取り出してエネルギーを補給する食べ物のことを「行動食」と呼びますが、「前編」で出てきたベーグルや果物はこの行動食のために購入したもの。ムッチリお腹にたまるベーグルも、瑞々しく喉を潤す果物も、山でいただくとますますおいしいのはなぜなんでしょうかね。

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ジップロックコンテナ等の保存ケースは果物の運搬に便利。バックパック内で潰れにくいベーグルも行動食にオススメ。

標高を上げるにしたがって、数日前に降ったという初雪が登山道に見え始めました。

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息を切らすことのないほどよい速度でジワジワと標高を上げること約1時間20分。コースタイムよりやや早めの時間に稜線に上がることができました。

これ以上頭上を遮るもののない広々とした風景、これぞ稜線歩きの醍醐味!

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雪に隠れているが、木道が敷かれた「お花畑」。先に見える最初の小ピーク・小僧森に登りいくつかのピークを越えていく。

葉山ははるか昔に火山活動を終えた死火山で、山体の山頂部にはかつて噴火活動があった形跡としてふたつの爆裂火口が残っています。その爆裂火口で形成された外輪山に沿って歩くのが稜線に出てから山頂、奥の院までのルート。ちょうどCの字の一部分を歩く感じで、葉山山頂までアップダウンを繰り返しながら途中にある3つの小さなピークを越えていきます。

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外輪山の火口壁上にあるため稜線は東側が切れ落ちていて、この登山道が火口のヘリということが分かる。小僧森まではロープがかかる岩場もあるが、使わず登れるレベル。

そして抜群の眺望が待っていました! 山頂手前にあり、爆裂火口の全貌や周囲の眺めを見渡せる「大ツボ石」で小休止。

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稜線を辿って視線を前方へむけると、人工的な小さな突起物が見えました。これが今日の目的地、奥の院です。

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大ツボ石から葉山山頂は約10分の道のり。あいにくガスでほとんど眺望はありませんでしたが……。

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山頂を経て、いよいよ聖域へお邪魔いたします。

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山頂から奥の院までは20分ほど。

葉山は古くから農業の神がすむとされ、里の人々は季節折々に葉山に登り五穀豊穰を祈りました修験道の山としては江戸時代初期までは月山、羽黒山とともに出羽三山の一山に数えられていましたが、のちに湯殿山が加わるなどして三山からは外れたそう。ですが、山岳信仰の山として人々に長きにわたって慈しまれてきました。

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開山はなんと今から1300年以上も前の702年ごろ。

702年って飛鳥時代ですよ! 日本の山岳信仰である修験道の開祖が開いたと言われ、武田課長曰く「登山が今のようにレジャーではなく、修業だったことから山頂や奥の院までの道のりも歩きやすい場所に道を通さず、あえて厳しい場所を選んだ」のだとか。

どうりで最後はアップダウンを繰り返すなかなか歩きごたえのある道だったわけです。神の存在を信じ、山での厳しい修業に身を置いた山伏たちの息遣いが聞こえてくるようでした。

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今回参詣した「白磐神社」は葉山神社の奥の院。前宮は葉山の麓にあり、伊勢神宮の出張所。地元の人たちはこの神社を葉山神社と呼び、葉山奥の院までの登山道を整備している。

そして西方には霊峰・月山の姿。標高1984m、なだらかな山容に雪がつきこれから始まる長い冬の始まりを感じさせました。クリアに晴れていれば、奥の院や葉山山頂からは月山だけでなく、山形県内の百名山6座(月山、大朝日岳、鳥海山、蔵王山、飯豊山、吾妻山)すべてが一望できるのだそうです。

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出羽三山のそれぞれの山は「月山=過去」「羽黒山=現在」「湯殿山=未来」と見立てられ、この三山をめぐることは死と再生を辿る「生まれ変わりの旅」として古くから信仰をあつめている。

この日の山頂部の気温は1桁で、のんびりラーメンをすすったりしていたため身体が冷えてきました。下山は葉山市民荘まで来た道を戻るルート取り。

山形盆地のポテンシャルを山の上から俯瞰する

帰路は視界が回復し、これから下る登山道も見える快適な下山となりました。紅葉に色付くブナの森に落ちるひと筋の滝(糸滝)も……。

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なんとブロッケン現象も!

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ブロッケン現象とは背後から差し込む日光の影響で影の側に虹のような光の輪ができる現象のことです。山好きでもなかなか見る機会のない現象に、葉山にすむ神様の存在を感じるような思いでした。

「大尊仏見晴台」からは山形盆地も一望できました。

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最高の景色!

数日を過ごした寒河江市は、奥羽山脈と出羽山地に挟まれ南北に長い盆地「山形盆地」にあります。盆地は中心部に最上川が流れ、市は天童市や村山市などと接するなどいくつもの街がつながり広がっています。

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そして山形といえば、日本を代表するフルーツの一大産地。

盆地には山から豊富な雪解け水が注ぎ込まれ、また一日の中で寒暖差が大きい気候的特長があることから、国内でも果樹栽培に適した有数の気候なんだそう。寒河江市は日本一のさくらんぼの里として知られているし、山形県はそのほかラ・フランスやぶどう、りんごなどが有名なのも周知の通りですね。その寒暖差はお米作りにも好条件で、お米の食味分析鑑定コンクールで「つや姫」が4年連続金賞を受賞した農家さんなどもおられるんだそうです。

「水の源となる雪は多いものの、寒河江市は自然災害は本当に少ない街です。台風被害もほとんどなく、東日本大震災のときも隣県であれだけ被害がありながら、こちらはほとんど影響がありませんでした。安心・安全に暮らせることも寒河江市の魅力じゃないですかね」

寒河江市で生まれ育って何十年という武田部長が、渋すぎる笑みで教えてくださいました。

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いやぁ寒河江、街もいいけど葉山もいい! 葉山もいいけど街もいい!

快調に下りていくおふたりの背中から感じる寒河江市の魅力。すばらしかった滞在の余韻を噛みしめながら、遅れを取らないようラストスパートでその背中を追うのでした。

葉山登山あれこれ

■参考コースタイム
葉山市民荘(90分)お花畑(70分)葉山山頂(20分)葉山神社・奥の院(20分)葉山山頂(70分)お花畑(70分)葉山市民荘

■登山口(葉山市民荘)までのアクセス
寒河江駅からマイカーで国道458号、林道を経由して約40分(冬季閉鎖の林道は6月下旬に開通予定)。タクシーの場合は寒河江駅から料金約7,000円。

■山荘問い合せ TEL.0237-87-5037(さくらんぼ観光課)

葉山の情報 https://www.city.sagae.yamagata.jp/kanko/kanko/hayama.html

 

Photo:田渕睦深
Text:福瀧智子