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【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい

インタビュー

2022.08.08

名古屋城築城の際に作られた商人の町、那古野。清洲越えで豊かな商人たちが移り住んだというこの町に、和の文化を体感できる場所があります。築150年の古民家をリノベートした空間でお茶を愉しめる『那古野茶房 花千花』、和とモダンを融合させた一棟貸しのホテル『HOTEL和紡』の店主、元花さんにお話を聞いてきました。

【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
『那古野茶房 花千花』
【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
『那古野茶房 花千花』の店内
【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
『HOTEL 和紡』
【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
『那古野茶房 花千花』、『HOTEL和紡』の店主 元花千迦さん

 

名古屋に誇りを持てなかった自分。

ブライダル業界で十数年というキャリアを持つ元花さん。式場のプランナーだけでなく、花屋やメディアなどでの経験も経て、欧米型のウェディングプランナーとして独立。美術館や温泉旅館、公園といった会場の選定から衣装・装飾・撮影・進行・予算管理のすべてを、要望に応じてオリジナルでアレンジするということを全国で手がけてきました。名古屋に腰を据えることなく、むしろ名古屋を避けるようにして地方での仕事が増えていったことを思い返しながら、どこか名古屋に誇りを持てずにいる自分がいたと言います。

「外の世界に意識が向いていました。名古屋から出て行った方が、刺激や学びも多いと感じたし、何より楽しかったですね。それが一転して名古屋という地元を意識するようになったのは、徳島で式場を営むご夫婦との出会いがきっかけでした。還暦を過ぎても、女性起業家としてバリバリと働く姿に感銘を受けました。その方は、自分たちの事業でいかに地域に貢献していくかにコミットしていました。その生き方に触れ、私には何ができるだろう? 私のモチベーションやポリシーはどこにあるだろう? と自問するようになりました。」

 

自分は何を残し、どう社会の役に立てるだろう。

結婚や出産、キャリアアップなど、周りの同世代たちがライフステージを変えていく中、地に足がつかないままの自分を一層、顧みるようになったという元花さん。これまで楽しく仕事をしてきたし、お客様の人生の節目に素敵な思い出を作ることはできたけれど、社会の役に立てているのかを考えると、そうではない気がしたと振り返ります。そこで、地元である名古屋をないがしろにするのではなく、一旦、自分のルーツに立ち帰り、社会とつながって持続していけることを考えようと、名古屋に戻ることを決意しました。

名古屋でこれからずっとつながっていける場所にオフィスを構えようと思った時、頭に浮かんだのが歴史を感じる古き良き町、有松・白壁・那古野でした。中でも那古野は、その町に入った時の自分をイメージした時に一番しっくりきたのだとか。他所様を受け入れてくれる感じがしたと言います。それでもオフィスにできる物件がなかなか見つからず、まずは小さなアパートを借りて住んでみることにしました。そして実際、ここに拠点を置いてみると、いろんなことが動き出したと言います。

【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
那古野の四間道。石垣の上に建つ土蔵群と軒を連ねる町家が通りに面して建ち並びます。
【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
街歩きをしているとふと路地の間に現れる子守地蔵尊。四間道は歴史ある建物が点在するエリア。

 

ウエディングだけではない、何か。

元花さんは、ウエディング業界での経験を生かし、ここで那古野らしい和の結婚式を作ろうと考えました。そして、これまでのように結婚式だけの時間で何ができるのかではなく、時間軸が広がればその分だけ楽しみも広がるのではないかと考えたそうです。

例えば、前日からみんなで泊まることで、結婚式を含む長い時間を楽しむことができます。この町が結婚という節目の思い出と一緒に残ることで、家族との思い出が増えていく度にお子さんのお宮参りや誕生日、結婚記念日などで訪れてみようと思ってもらえるのではと。結婚式だけでなく、人生の大きなイベントから小さなイベントに至るまでのいろんなハレの日に伴走できる町になってほしい。

そんな思いから、「ウエディング事業」と共に「宿泊」「飲食」「地域振興」も行っていきたいという構想が生まれました。こうした構想のもと事業を進めていく中で、新型コロナウイルスのパンデミックという計画段階では予期しない出来事が起こります。「コロナで外に出られなくなったからこそ、自分たちの足元を見つめることに意識が向き、身近にあるものを再発見できるんじゃないか。そこから、“伝統をリデザインする”というコンセプトができました。」と元花さんは言います。

同時に、コロナの影響でこれまでのような結婚式がなくなっていくのを目の当たりにすると、それまで当たり前に自分のライフワークとして取り組んでいたウエディングに集中する時間が止まってしまったことが転機の一つになったと言います。同時期に話をもらっていた古民家を活用するという話が浮上します。

ここで何をしようかと考えた時、頭に浮かんだのが「お茶」だったと言います。名古屋にないものを体験できる場をつくろうと。

「日本人の食には、常にお茶があります。和食のお店では無料で出されるのが当たり前ですが、千利休さんが作った日本の総合芸術、「茶道」では非日常過ぎて同じ茶葉からできているにも関わらず敷居が高く遠い存在となっています。『何で?』という、良い意味での違和感がありました。一方で、『お茶しない?』と言って飲むのはお茶でなく珈琲や紅茶だったりします。珈琲屋はたくさんあるのに、お茶屋は圧倒的に少ないですよね。」

 

丁寧に淹れたお茶のおいしさを知ってほしいし、私も日本人として知らなかった美味しさを改めて体験してもらいたい。

那古野に住み始めたことでいくつもの出会いとご縁に恵まれ、良い物件が見つかりました。築150年ほどの歴史ある古民家を再生し、その趣を存分に生かしたモダンな空間で、日本茶をゆっくりと楽しめる茶房が完成。茶房をオープンするにあたって、元花さん自身もお茶の勉強を始めたばかり。作法を知らずして始める不安もあったそうですが、だからこそできることもあると奮起。これからもお客様と互いに学び合いながら成長し続けられる茶房でありたいと言います。

「日本人でも、普段から飲んでいるお茶のことを知らない人は多いと思います。緑茶も紅茶も烏龍茶も、すべて同じお茶の木の茶葉からできていて、発酵の違いにすぎないのだということを、私も知りませんでした。そんな当たり前のことを初めて知った時の、心地よい驚き。他にもいろんな発見を皆さんと共有していきたいですね。実は、隣の岐阜県にある東白川村のお茶がすごくおいしいこともその一つ。我々はこうした農家や伝統工芸士などの作り手の翻訳者だと思って、カウンターの向こうのお客様に通訳するつもりでお話しさせていただいています。」

【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
カウンターには茶釜、茶盤があり、お茶を淹れる過程も愉しむことができます。
【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
名古屋の老舗和菓子処「不朽園」と開発したオリジナルの最中と共に、東白川村産の萎凋茶をいただきました。最中はコニャックをかけて味の変化を愉しむことができます。
【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
お茶碗、急須は、全て東海エリアの作家さんによるもの。お茶も茶道具も、元花さんが現地で出向いて生産者さん、作家さんから直接お話を聞いて仕入れるのだそう。
【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
カウンター横の窓から見える美しい日本庭園。

 

名古屋の人たちが好きになれる場所になる。

お茶だったり、建築や庭園だったり、和菓子だったり、この店に足を運ぶ人たちの目的はさまざま。若い人からお年寄りまで、それぞれに感じることが違うのもまた面白いと言います。自分の好きなアンテナを辿ってこの店に入り、ここで那古野の町を知り、その体験が伝わって、また別の人がこの町を訪れる呼び水となる。ごま粒でも、次につなげる点になれたらと、元花さんは言います。

「那古野を北へ歩いていくと、すぐ先には円頓寺があります。江戸の風情を感じる那古野から、昭和の雰囲気漂う円頓寺へ、このエリアには江戸と昭和を行き来できる面白さがあります。その中で茶房は、和の文化を体感するコンテンツ。そして宿は、長い滞在を促すコンテンツ。宿では特に名古屋の人に泊まってほしいですね。地元の素敵なものや、誇れることを知ることで、外から楽しみを持ち込むのではなく、ここで循環していくのが理想です。私も含め、もう一度名古屋を好きになれるように。」

自分のやっていることが町に還元され、目に見えて町が元気になっていくことに達成感を感じるという元花さん。町そのものがメディアとなって、人と人をつないでいくことを目標に、今は那古野の町のために有志で組合を作ることが課題。マップやウェブをさらに充実させ、アートやリアルを体験できる町として面白いことをクリエイションしていきたいのだとか。そんなプロデュース業が得意な元花さんが目指すのは、那古野のキュレーター。那古野のまちづくりは、まだまだこれからです。

【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
那古野の町歩きマップを作りたいなど今後の展望を楽しそうに語る元花さん。
【愛知県名古屋市西区那古野】お茶を通じて名古屋の人が好きになれる場所をつくりたい
花千花から歩いて5分ほどのところにある円頓寺商店街。

名称

那古野茶房 花千花

URL

HP
instagram
Facebook

住所

愛知県名古屋市西区那古野1-18-6

TEL

052-526-8739

営業時間

ティータイム 全日12:00〜18:00(L.O. 17:30)
サイフォン珈琲 土日9:00〜11:00(L.O. 10:30)
​定休日無 (月に1回臨時休業有り)

instagramに営業日の詳細の投稿あります。

備考

【HOTEL和紡】
HP
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ご予約・お問い合わせ(受付時間 11:00〜19:00)
TEL:052-526-8739
MAIL:info@wabohotel.com

アクセス

名古屋市営地下鉄 丸の内駅から徒歩11分

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