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【湘南で働くということ】「鎌倉ロコマート&ガーデン」店主・小嶋淳志~かっこいいジジイを目指して

店
2026.11.02

観光地として、また住むためのまちとして人気の湘南や鎌倉エリア。そこで「働く」ということを実践している素敵なひとを紹介する特集です。

今回は、御成商店街にある庭づくりと園芸の店「鎌倉ロコマート&ガーデン」の店主の小嶋淳志(こじまあつし)さんをご紹介します。ローカルとして、サーフィンやアウトドア、そして70年代のアメリカ音楽をこよなく愛する淳志さん。メインの仕事である庭づくりや店づくりのことから、有名アーティストと運営した海の家や、人気リアリティ番組との意外な縁、そして商店街への想いまでお話を伺いました。

【湘南で働くということ】「鎌倉ロコマート&ガーデン」店主・小嶋淳志~かっこいいジジイを目指して
鎌倉ロコマート&ガーデンの小嶋淳志さん

 

淳志さんの経歴はとても面白く、高校を卒業後は、波乗りと音楽の合間にアルバイトでお金を貯めてアメリカ旅行へ。そんな生活を送っているうちに、気づけば10年が経っていたそうです。

帰国後は一般の会社に就職したものの、結婚も経た30歳ごろには「これでいいのだろうか」と悶々とする日々。そんなとき、お兄さんが植木屋を始めたそうです。もともと海外で目にした、きれいに刈り込まれた庭や植栽が好きだった淳志さんは、お兄さんに誘われるままに一緒に店をやってみることに。店は淳志さん、現場はお兄さんが担当。こうして「鎌倉ロコマート&ガーデン」が誕生しました。庭づくりでは得意なスタイルを決めているわけではなく、和風の庭もアリゾナっぽい庭もこなすオールラウンダー。個人的な好みはイングリッシュガーデンだそうですが、流行は時代とともに変わります。30年前はイングリッシュガーデンが人気でしたが、ここ10年はドライガーデンのリクエストが多いとのこと。

 

【湘南で働くということ】「鎌倉ロコマート&ガーデン」店主・小嶋淳志~かっこいいジジイを目指して
作業完了が庭の完成じゃないと言います。この庭も今の状態になるまでに1年ほどかかったそうです

これまでに手掛けた庭を見せてもらえるということで、淳志さんに案内していただいたのは、鵠沼の個人宅につくったガーデン。ラベンダーやルピナスなど、花そのものというより、さまざまな緑の表情を楽しむ庭です。もとは和風の庭でしたが、どこか澱んで動きのない印象だったため、帯状に細長くつくられる花壇で自然美を楽しむイングリッシュガーデンの「ボーダーガーデン」を提案したそうです。

庭づくりは、基本的に苗を植えていくので、作業が終わった時点では植物がぽつぽつと並んでいるだけ。「作業完了が庭の完成じゃない」と淳志さんは言います。良い感じに育つまでには1年ほどかかり、季節によっても姿が変わっていきます。完成形を思い描きながら植物を配置していくのは難しい作業です。

こだわりを聞くと、返ってきたのは「ちゃんとやる」というシンプルな答え。丁寧に、庭の予算と要望に対してベストを尽くす。「ちゃんとやらないと、こっちが気持ち悪いんですよね」と笑います。庭は形として残るもの。あとで「あそこ、ちょっといい加減だったな」と思いたくない。その誠実さが、リピートや紹介につながっているのでしょう。

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案内していただいた鵠沼の個人宅につくったボーダーガーデン

店名の「ロコ」はローカルのこと。地元に愛される店でありたいという想いを込めています。ただ仕事は鎌倉にとどまりません。鎌倉のお客様の別荘がある軽井沢をはじめ、富士五湖などにも足を運びます。宣伝をしなくても、お世話になった人からのリピートや紹介でお声がかかり、「たまには遠くにも行きたいね」くらいの感覚でちょうどいいのだとか。

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店構えはどことなくイギリス風。ついつい中を覗いてみたくなります

店の歩みを語るうえで欠かせないのが、約20年前に手がけた有名アーティストの海の家です。当時のテレビ番組の企画で、海の家をつくることになり、縁あって参加。完成した海の家は番組の収録の場となり、さまざまなタレントが訪れたといいます。

この縁が、さらに別の縁を呼びます。人気リアリティ番組のディレクターが、海の家の番組関係者だったのです。「庭の整備をしてよ」と頼まれたことがきっかけで、番組に登場する庭を手がけるように。すると出演者のひとりが「ロコで雇ってくれない?」と言い出し、「いいよ、バイトに来なよ」と受け入れたところ、アルバイトをしている様子が放送されました。舞台が葉山から七里ガ浜、そして東京へと移るなかで、第1弾から第3弾あたりまで関わり続け、アルバイトに来た出演者は4人ほど。お兄さんが恋愛の指南役のような立ち位置で登場したり、淳志さん自身もちょこちょこ映ったりと、いつの間にか半レギュラーのような存在になっていました。動画配信サービスで配信されたこともあり、いまでも海外から訪ねてくる人がいるそうです。

仕事が停滞しそうになるとどこからか声がかかり、またぐっと上向く。その繰り返しで、気づけば30年が経っていました。「運が良かった」と笑いますが、周りに恵まれるのも仕事ぶりがあってこそでしょう。

【湘南で働くということ】「鎌倉ロコマート&ガーデン」店主・小嶋淳志~かっこいいジジイを目指して
店名の「ロコ」はローカルのこと。地元に愛される店でありたいという想いを込めています

店内で目を引くのは、ハサミ、ジョウロ、移植ゴテ。この3つだけは「死ぬほど揃えてやろう」とこだわって仕入れています。色んな道具を売っているホームセンターの品揃えには勝てっこない。ならば、ファミレスのようにメニューを増やすのではなく、「これが美味しい」と言えるものをつくろうという発想で、カテゴリを絞って「イイもの」をセレクトしています。

以前はアメリカやイギリスへ買い付けに出かけたり、ヨーロッパの知人に送ってもらうこともあったそうですが、いまは価格的に難しくなりました。それでも「海外のものはポップでいい」と淳志さん。園芸は趣味のもの、だから遊び心があっていい、と言います。

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「死ぬほど揃えてやろう」とこだわって仕入れているジョウロ
【湘南で働くということ】「鎌倉ロコマート&ガーデン」店主・小嶋淳志~かっこいいジジイを目指して
移植ゴテもこだわっています

今後の展望を聞くと「特にない」と前置きしつつ、アイデアが次々と出てきました。家の価格が上がり続け、庭のある家はますます手が届かなくなっています。庭を持つ家が減るなかで、どう生き残っていくのかは大きな課題です。庭のあるカフェのような新しい事業も頭にありますが、淳志さんがいちばん熱を込めたのは、空き地を庭にするというアイデアでした。

長いあいだ空いたままの土地に「庭をつくらせてもらえませんか」と持ちかけ、散策できる庭にする。それが鎌倉に10か所もあれば素敵だし、ショールームのような役割にもなる。実現には色々と課題はありますが、「いい庭が鎌倉にポツンポツンとあったら、すごくいいと思うんですよ」と淳志さん。祖母の代から約100年、鎌倉で商売をしてきました。だからこそ「恩返しじゃないけれど、鎌倉のためにそれくらいしてもいいんじゃないかと思って」と話してくれました。

【湘南で働くということ】「鎌倉ロコマート&ガーデン」店主・小嶋淳志~かっこいいジジイを目指して
園芸は趣味のもの、だから遊び心があっていい、と言います

御成通り商店街の理事長でもある淳志さん。御成通りの魅力は、観光客向け過ぎていないところと言います。賑わってほしいけれど、わんさか人が押し寄せるようにはなってほしくない。それが商店街の皆さんの共通した思いだそうです。そして「家賃を上げないでほしい」というのが、ちょっとした本音。上がってしまえば、個人の店は出店できず、大手しか出店出来なくなってしまうからです。長谷の大仏通りまで6つの商店街は連携してイベントなどを行い、それぞれの「鎌倉らしさ」を大切にしています。

 

淳志さんが子どものころの御成通りは、周りの人から「さびれている」と言われる場所でした。小町通りも、いまほど賑わってはいなかったそうです。ロコマートを開いたころの商店街には、布やボタンの店、古本屋、町中華、電気屋と、昭和のお店がたくさん。地元の人が買い物をする場所でした。

いまは「いいお店がたくさんある商店街になった」と感じているそうです。八百屋や魚屋といった生鮮食品の店がなく、気づけば趣味の店や飲食店が集まる、横浜・元町のような方向へ。コロッケや焼き鳥を買い食いする商店街になっても不思議ではなかったのに、そうならなかった偶然が良かったのではないか、と淳志さんは見ています。「結局は、1店舗1店舗がいい店かどうかですよね」。

昔は「裏駅」と呼ばれるのが嫌だったそうです。ところが最近、通りかかった女の子ふたり組が「この辺は『裏鎌』って言うんだよ」と話しているのを耳にしました。「裏鎌、いい響きだなと思って。隠れ家的で、知る人ぞ知るっていう感じ」。かつてのネガティブな「裏」が、いまは魅力に変わっています。

【湘南で働くということ】「鎌倉ロコマート&ガーデン」店主・小嶋淳志~かっこいいジジイを目指して
店内は遊び心が詰まった隠れ家のような空間です

現在66歳の淳志さん。60歳までは「歳をとりたくない、かっこよくいたい」と思っていたそうですが、最近は歳相応に「かっこよく歳をとりたい」と考えるようになりました。そのために大切なのは、遊びも仕事も全力投球すること。サーフィンが億劫になったり、仕事を引退したりしたら一気に老け込んでしまうから、と。大好きな70年代アメリカ音楽のライブにも定期的に足を運んでいます。「常に好奇心を持つのがポイントだと思う」と言います。

お兄さんの息子さんも一緒に働いていて、お店の将来も心強い。それでも淳志さんは、あと10年は現役のつもりです。「自分でやれることなんて知れていると思っているから、世の中の流れにちょっと乗っかって、波乗りみたいに流れに沿って行く。違うなと思ったらピョッと飛び降りて、また違う波に乗る」。気負わず、でも全力で。サーファーらしい身軽さが、淳志さんの「かっこよさ」なのかもしれません。

【湘南で働くということ】「鎌倉ロコマート&ガーデン」店主・小嶋淳志~かっこいいジジイを目指して
好奇心旺盛で「かっこいいジジイ」を目指している淳志さん

【文・一部写真:鎌倉R不動産・上田拓史/写真:フォトグラファー・山中菜摘】

名称

鎌倉ロコマート&ガーデン

業種

庭づくりと園芸用品の店

URL

https://kamakuraloco.net/

住所

鎌倉市御成町5-29

TEL

0467-24-5565

営業時間

10時30分〜18時30分

定休日

月曜日

アクセス

JR横須賀線・江ノ島電鉄線「鎌倉」駅徒歩4分