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【鹿児島県いちき串木野市】不登校の子どもたちが選択肢を広げられる、第三の居場所を / 真田希実さん

インタビュー

2022.09.29

鹿児島県いちき串木野市で「生きづらい子の居場所づくり」としてフリースクールを開設することを目標に様々な活動をされている真田希実さん。そんな希実さんから、現在の活動に至った背景や今後の想いについて伺いました。

【鹿児島県いちき串木野市】不登校の子どもたちが選択肢を広げられる、第三の居場所を / 真田希実さん

小さなことでも誰かを救うことはできる

幼少期から周りと違う行動をとる傾向にあった希実さん。

皆で一緒に、というよりは、一人や少人数で絵を描いて過ごすことが多かったそうです。

「授業では、先生が求めている回答とは違った視点で答えることもあって、周りを困らせることもありました。そんな私のことで母は当時頭を悩ませていたと聞いています…。」

「ある時、私の親友の親御さんが「希実ちゃんの世界観というものがあるんだから、そこを大切にしてほしい」と母に言葉をかけてくれたことがありました。その言葉に私も母も救われて。「周りと違うことをしてもいいんだ」って思えました。」

そんな希実さんの将来の夢は精神科の医者になることでした。

お母さんが精神科の看護師であったことや、それがきっかけで精神病患者と触れ合うことが頻繁にあり、次第に自分事に変わっていったといいます。

「中学3年生のとき、担任の先生と面談をしていると、医者になること以外にも選択肢があるのではと気づかされんです。先生は、私の得意科目や学校生活をちゃんとみてくれていて。」

「先生からは「希実さんは友達の悩み相談とか、親身なって聞いてくれているよね」「医者もいいけど、心理学等といったことを活かして、誰かの選択肢を増やす職に就いてほしい」と言葉がありました。」

【鹿児島県いちき串木野市】不登校の子どもたちが選択肢を広げられる、第三の居場所を / 真田希実さん
真田希実さん

高校に入学してからは大学合格という目標に向かって日々勉学に励みました。

しかし、そんな希実さんに変化が起きてしまいます。

突然、不登校になってしまったのです。

「2学期の初日のことでした。教室の前にいるのに、ドアを開ける気力がなかったんです。友人関係が悪くなっているわけでもない。成績が落ち込んでいるわけでもない。急に無気力になってしまって。」

「卒業式も出席せず、2学期以降は一度も出席できませんでした。でも、そんな私を心配してくれた先生たちは色々な形で支えてくれたんです。信頼する先生と交換日記をしたり、好きな教科の先生と入試対策ノートを作ったり。」

「学校にも行かず、他の生徒と違う行動をとってしまった私に対して、先生たちは優しく接してくれました。だから、先生という職業は誰かを救うことができるんだなと思って。」

「もっとちゃんと勉強していれば、成績の良い大学に受かっていたかもしれないといった後悔もあります。ただ、それは“大卒”というステータスが欲しかった気持ちが強かったからかもしれません。高校卒業後もずっとその気持ちに縛られていたかと思います。」

【鹿児島県いちき串木野市】不登校の子どもたちが選択肢を広げられる、第三の居場所を / 真田希実さん

ここにいてもいい

予備校や通信制の大学、アルバイト等。

高校卒業後は、様々なことにチャレンジするも、モチベーションがもたず短期間で断念していました。

「新しいことを始めようと思っては、すぐに諦める。それを繰り返してばかりでした。「何か違うな」って毎回感じてしまうんです。家族にも迷惑をかけていたので「どうしよう」と常に思っていました。」

「結果、3年程引きこもりになってしまいました。若者を支援する団体のスタッフさんに資格が取得できる大学も紹介してもらったのですが、それも長続きせず。「私は向いていない」等といった否定的な言葉を探していて、言い訳づくりをずっとしていたなと思います。」

「高校時代、不登校になった私自身の感情と向き合うことができませんでした。そして、困りごとや不安を向き合ってくれた先生たちにさえ共有することもしなかった。それが生きづらさに繋がったのではと思うようになりました。だから、スクールカウンセラーのような仕事に就けば、私のような生徒が一人でも減るかもしれない。そう考えました。」

そんな時のこと。

お母さんさんから、とある場を紹介してもらい、足を運ぶことになります。

それは『NPO法人ルネスかごしま』が開設している『ひだまりカフェ』でした。

【鹿児島県いちき串木野市】不登校の子どもたちが選択肢を広げられる、第三の居場所を / 真田希実さん

そこでは誰かと他愛ない話をしてワイワイする人もいれば

黙々と読書や勉強をする人等、

各々の楽しみ方で時間を過ごしていたそうです。

「心の底から「この場って、すごくいい」「ずっとここにいたい」と思いました。次の回にも行きたくなったし、その日までちゃんと生きようという気持ちにもさせてくれて。「ここにいてもいいんだ」と思えたのが一番大きかったかもしれません。」

その後、『ひだまりカフェ』のスタッフ募集を発見。

すぐに主催に連絡をとり、面談を行い、昨年10月から採用されました。

「最初は主催の方に見守っていただきながら、利用者と接していきました。その中で、言葉の使い方や傾聴の心構えを少しずつ掴んでいきました。皆さん、コーヒーを飲まれるのですが、私、うまく淹れられなくて。だから、動画で研究しながらコーヒーの淹れ方の練習もしました。」

「スタッフになってから教わったのは、助言をしないこと・相槌を打つこと・相手が話してくれるのを待つこと、でした。過去の私は、誰かの相談に乗った時に、そのことを全く意識していなかったと気づかされました。」

そんな希美さんを『ひだまりカフェ』のスタッフとしてみてくれて

「のんちゃん(※)がいるから今日来ました」と嬉しい言葉をかけてくれる人も増えてきたといいます。

【鹿児島県いちき串木野市】不登校の子どもたちが選択肢を広げられる、第三の居場所を / 真田希実さん

不登校でも選択肢を広げられるように

今年になってからは活動を地元でもある“いちき串木野市”でも展開。

昨年開催された地域リーダー養成研修『つなぐ』では仲間を

今年春にプレゼンを行った『私たちのいちき串木野2030』では様々な世代や職種の協力者を得ることができました。

そういった人たちのサポートもあり、今年は地元の図書館やシェアハウスを利用し、フリースクールを開設しています。

「『つなぐ』をきっかけに地元で一度フリースクールを開催したのですが「一度だけではもったいない」と声をいただいたんです。それで今後の活動を模索していたら、『ひだまりカフェ』主催の方から背中を押していただき、定期的な活動ができるようになりました。」

「最初はいちき串木野市外の利用者が多かったです。でも、私自身が不登校を経験していたので、地元にもきっといるだろうと思いました。どうしたら、地元の小中高生に知ってもらえるのかなと悩み続けていました。」

「『私たちのいちき串木野2030』でプレゼンを聞いた方が行政側に情報提供してくださって、そこから地元での不登校の子たちの数が浮き彫りになったんです。そこから色々な方から気にかけてもらうようになりました。」

「そういった変化を目にするようになり、今までの経験や活動、そして、辛かった気持ちは現在につながる良い過程だったんだ、無駄ではなかったんだと思うようになりました。」

【鹿児島県いちき串木野市】不登校の子どもたちが選択肢を広げられる、第三の居場所を / 真田希実さん
写真提供 真田希実 フリースクールにて学習支援を行っている様子
【鹿児島県いちき串木野市】不登校の子どもたちが選択肢を広げられる、第三の居場所を / 真田希実さん
写真提供 真田希実 フリースクールにてボードゲーム等で遊んでいる様子

最近では学習支援とフリースクールを分けて開設し、それぞれのニーズがあるかどうか確かめたといいます。

「勉強をしたい子が小さな子どもたちと一緒に遊んでいるのをみて「自分の勉強に集中する場づくりも必要なのでは」と思ったんです。結果的に、「学習支援にいきたい」「フリースクールで遊びたい」といった声があって、どちらもニーズがあることを確認できました。」

「私は目の前にいる子どもたちを一人でも救って笑顔になってほしいと思っています。それは、世の中からしたらちっぽけなことかもしれないし、私一人では到底できることでもない。だから、私ができない部分を色々な人に助けてもらいながら、子どもたちの第三の居場所をつくっていきたいです。」

「子どもたちと接するときは、同じ目線に立ち、全力で接するようにしています。例えば、ゲームだと「あー!負けた!」って全力で悔しがりますし、勉強であれば、全部教えるのではなく、寄り添い、笑い合いながら、間違ってもいいから、その子なりの答えを一緒に探すようにしているんです。」

「不登校だからといって、将来の道が閉ざされる訳でもないし、その子の価値が決まってしまうわけではありません。「ここにいてもいいんだ」と思えることで、その子たちにとって、選択肢を広げるきっかけを少しずつ作っていけるのではないか。そう思っています。」

【鹿児島県いちき串木野市】不登校の子どもたちが選択肢を広げられる、第三の居場所を / 真田希実さん

備考

インスタグラムでフリースクールに関する情報を発信中。

https://www.instagram.com/wellbeing.non/