real local 大阪南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑 | reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑

インタビュー
2026.09.04

大阪市西区南堀江4丁目に拠点を構える設計事務所、KURU(クル)。2025年に事務所の隣の区画にショップ、オフィス、スペースで構成される小さな複合施設「KURUTO(クルト)」をオープンし、「西堀江」がじわじわと盛り上がりを見せています。2020年に代表取締役を父親から引き継ぎ、デザインとビジネスを掛け合わせ、オルタナティブな設計事務所として未来を切り開いている、水谷光佑さんを訪ねました。

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑KURUKURUTO

 

―KURUは今どのくらいの人数になりましたか?―

パートナースタッフやアルバイトメンバーも含めると26名ほどになりました。僕がKURUに合流した2017年時点では4人だったので、それから増え続けています。

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑KURUのメンバー。設計事務所だが、企画を専門に担うスタッフもいる。

 

アトリエ系の設計事務所としてはすごいスピードで拡大していますね。けれど、水谷さんが拡大を目指したのはどうしてですか?―

小さな事務所だからこそできることもありますが、一方で、大きくしないと見えない景色や、できないことがたくさんあるからです。設計事務所って「こんなプロジェクトをしたい」とか、「もしやれるならやってみたい」というアイデアを沢山持っていると思うんです。もちろん、規模が大きいことだけが正しいと思っていませんが、小さいとできないことが多いのも事実です。だからチャンスをできるだけ拾えるようにしたいというのが根底にあります。一番わかりやすいのは、仕事の規模。現在の組織規模になり、10億円を超えるような規模の新築建築案件などの相談も受けるようになっていますが、こうした大規模案件は、スタッフが35人の規模の事務所だと、そもそも依頼の土俵にすら乗せてもらえません。「この担当者が倒れたらプロジェクトが終わる」というリスクを、大手のクライアントは避けますから。人を先行して採用し、「誰か一人に依存せず、体制として回る」という信頼感を作ったからこそ、関西では数少ない、新築の大きな長期案件が受注できるようになり、会社の利益率や経営が安定しつつあります。実は、35人規模の設計事務所が一番しんどいんです。トップが個人住宅や個人店舗を一生懸命受注して、それを35人のスタッフで回そうとすると、かなりの数をこなさなければならず、利益率は下がっていき、トップの労力も限界になります。ですが、10人、さらにその先へ規模を大きくしていくと、経営が安定し、たとえば広報に力を入れたり、自社で新しいことに取り組んだり、そういったチャレンジをしやすくなります。

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑KURUが手掛けたENOWA YUFUIN

 

水谷さんが考える、クルの「ベストな規模感」はどれくらいですか?―

3050人くらいが、メンバー全員が自発的に熱狂して働ける上限値ではないか、という感覚を持っています。それ以上の規模になると、ミスを防ぐための「細かいルール」や「制約」をたくさん作らなければならなくなり、会社の「遊び」や「余白」が失われてしまいます。ただ食べるために義務感で働くような、モチベーションの低い従業員が社内にいる状態は絶対に嫌だ。ルールで縛るようなら、会社を解散した方がマシだと社内でも言っています。だからこそ、クリエイティブな「クル本部」は3050人規模に抑え、個人の熱狂が最大化される「ギルド的な集合体」でありたい。その周辺に、ホテル事業や不動産事業、また同業やその周辺企業のような「グループ事業体」がポコポコとぶら下がっているような組織デザインが、今考えている理想の形です。

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑KURUのオフィス内部

 

新卒でデベロッパーに就職していますが、元々は建築学科の出身。設計者やデザイナーとして、デザインしたい欲というのはない?―

僕自身、建築やインテリアそのものを美しく作るという「デザイン欲」よりも、「どういう仕組みを作れば場所が面白くなるか」という「企画欲」や「プロデュース欲」が強いタイプでした。今は「KURUという会社をデザインする」ことへの欲求が一番高くて、それがめちゃくちゃ面白く感じています。メンバーが主体性を持ちながら自分たちでリアルな手応えを感じて、興奮して喜んでいる姿を見る方が、僕にとってはるかに嬉しい。だから、デザインができていないとも思っていないし、より広義なデザインを実践できていると思っています。会社の経営、組織づくりはものすごく長いロールプレイングゲームをしている感じ(笑)。

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑設計メンバーと企画メンバーが一体となってプロジェクトを推進するのがKURUの特徴のひとつ

 

事業に並走できる設計事務所ということの説得力を持たせるために、リアルな場を自社で運営する施設として「KURUTO」をオープンさせたんですよね。オープンして1年になりますが、この1年間どうでしたか?―

定量的なキャッシュフローはプラスのところまではあと少しのところまで来ています。KURUTOはショップ、シェアオフィス、スペースで構成される小さな複合施設です。オフィスは「もう少し埋まるだろう」と見込んでいたが思うように入らず、ショップの売上も当初の想定より若干低い。想定外だったのはスペースの売上で、予想を大幅に超えて伸びています。出展者の集め方は、基本的にこちらから出店して欲しい人に直接アプローチか紹介。企画メンバーと設計メンバーがレイアウトや演出、什器のサポートまで一緒に手がけて空間をつくり込むため、その体験を気に入ったアーティストがリピートしたり、別の出展者を紹介したりする好循環が自然に生まれています。当初はショップとオフィスの「固定で安定して上がっていく売上」を土台に計画していたけれど、実際には「読めない変動的なイベント売上」が変化をもたらし良い循環が生まれています。

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑KURUTOstore):メンバーがセレクトした日用品やポップアップの商品が販売されている

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑KURUTOoffice):月額30,000円(税込)で利用できるシェアオフィス

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑KURUTO         ):作家による個展やトークイベントなど、訪れる度に変化している

 

―5年くらい前だったかな。水谷さんが「西堀江」と呼ばれるエリアをつくるって言っていたのは。―

そうそう。南堀江っていうとアパレルや飲食が集積している1丁目とか2丁目のイメージになってしまって、ここ4丁目はもっと落ち着いていて雰囲気も違うし、別の呼称がほしかった。だから南堀江や北堀江じゃなくて、「西堀江」として、このあたりを盛り上げていきたいなと。イメージは東京の清澄白河。ブルーボトルができて「清澄白河」が一気に全国区の知名度になったように、「KURUTO」のオープンが、このエリアが盛り上がっていくきっかけとなったと未来には言われていたい。それで「西堀江」って勝手に言い出して、仲良くなった近所の仲間と盛り上げていってます。KURUTOの一周年として行った夏祭りも、挨拶回りをきっかけに花屋さんや古着屋さんと合同のイベントのような感じになって。正直オープンして半年くらいしたときに来店する人も売上も落ちて心が折れかけたけれど、一年間必死でこの場所で泥臭くイベントをやり続けてきたからこそ、周りのプレイヤーが「KURUさんと一緒に何か面白いことをやろう」と自発的に集まってくれるコミュニティが生まれてきました。

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑KURUTOの一周年で開催された夏祭り

 

「会社をデザインする」という壮大なロールプレイングゲームを楽しみながら、自らも場を運営し、街に変化を生み出し続ける水谷さん。デザインをビジネスのドライバーとしてオルタナティブな設計事務所を体現する「KURU」の実践は、これからの設計事務所や場づくりのあり方のヒントになるはずです。
じわじわと熱を帯び始めている「西堀江」。イベントの参加やスペースでの出展、シェアオフィスの利用、あるいはKURU自体に興味を持った方は、ぜひKURUKURUTOの現在進行形の取り組みをチェックしてみてください!

KURUTOのイベント情報

KURUTOのInstagram

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水谷光佑さんのnote

屋号

株式会社クル

URL

https://kuru.co.jp/

https://www.instagram.com/kuru_design/

住所

大阪市西区南堀江4-25-D-105

南堀江4丁目から「西堀江」へ|オルタナティブな設計事務所・株式会社クル/代表取締役CEO水谷光佑