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馬場正尊 talk about 山形 04/「クリエイティブ・ローカル/仙山生活圏」後編

2017.05.15

馬場正尊 talk about 山形 04/「クリエイティブ・ローカル/仙山生活圏」後編

—– 奥山市長からは、高等教育機関が多いまちとして知られる「学都・仙台」は20年ほど前から音楽の都の「楽都」としての都市ブランド構築を始めたとのお話がありました(※7)

芸術というテーマでふたつの都市を比べて見たときにも、音楽の仙台と、映像とアートの山形。ふたつの都市の住み分けがすでにうまくできているような感じでしたね。

※7 楽都・仙台:仙台市は1995年頃から音楽、特にクラシック音楽によるまちづくりを推進してきた。2001年からは仙台国際音楽コンクールが、2006年からは仙台クラシックフェスティバル(せんくら)が開催されている。また、前述のジャズフェスなど、クラシック以外の音楽イベントも様々行われている。

馬場)多くのイベントが行われている仙台のなかで特に音楽関連のものが多い理由が、奥山市長のお話を聞いてよくわかりました。仙台の音楽は、行政がしっかりとした戦略性を持って進めたカルチャーだったわけです。

それに対して、山形は「山形国際ドキュメンタリー映画祭」が四半世紀に渡って開催されてきた映画のまちであり、そして東北芸術工科大学のある町です。

馬場正尊 talk about 山形 04/「クリエイティブ・ローカル/仙山生活圏」後編
隔年開催される山形国際ドキュメンタリー映画祭によって、YAMAGATAは映画のまちとして世界に知られるようになった。

 

人口20万人のまちなかをアートや芸術やクリエイティブを志す2000人の若者が右往左往しているということはとても豊かなことではないでしょうか。

若くて体もよく動くから、ポッとモノを作ってしまう気楽さや大人にはない機敏性があり、大学を飛び出す動きが活発になってきていて、山形というまち自体をフィールドにして表現やコミュニケーションを始めています。山形ビエンナーレなど、山形市の協力もあってそうした動きがますます加速している状況です。

そもそもクリエイターから見ると、芸工大って各分野のスーパースターが揃っているんですよね。根岸吉太郎(※8)、小山薫堂、三瀬夏之介。そこにコミットできるだけでも若いクリエイターにとってすごくありがたい。僕自身も芸工大の先生になったのは、宮島達男さんから直接電話もらったからで。もう断れるわけがないわけですよ、世界的なアーティストですから。

そんなわけで教授陣は自動的に超豪華なものになっているし、その資産はものすごい。若いクリエイターたちもそんな人たちと間近に接することができる幸せを感じながらやっているわけで、それが仕事のクオリティにもつながっていると思います。

※8 根岸吉太郎:東北芸術工科大学学長。映画監督。


—– 次のテーマは「クリエイティブ拠点」。仙台には有名なメディアテーク(※9)がありますね。

※9 せんだいメディアテーク:図書館、映像音響ライブラリー、ギャラリー、スタジオなど多彩な機能を収めたクリエイティブワークの活動拠点。2001年開館。設計は伊東豊雄。

馬場正尊 talk about 山形 04/「クリエイティブ・ローカル/仙山生活圏」後編
会場に映し出された、仙台を代表する建築物「せんだいメディアテーク」。奥山仙台市長からその誕生秘話も語られた。このクリエイティブ拠点の登場はまちを大きく変えた、という。

馬場)なんと言っても僕は、メディアテークが羨ましいです。メディアテークが出現したことによって、日本中のクリエイターたちにはわざわざ仙台に行くための具体的な用事ができてしまった。そのくらいのインパクトがあったわけです。

メディアテークが仙台にできた当時に担当課長としてご活躍されたのが奥山市長だったわけですが、その当時の苦労話を振り返りながらおっしゃっていただいた「建築は思想だということをこのときに理解した」とか「新しい建築は私たちに変革を迫るものだった」という言葉は印象深いものでした。

仙台の場合のように大きな象徴がまちを引っ張るのに対して、山形にはドッカーンという拠点はないですよね。ないけれども、とんがりビルをはじめとして、小さいクリエイティブを仕掛けて行くということが大切です。小さなフラグメントの集積自体が、まちを変えていくはずですから。


—– 最後のテーマは「リノベーションまちづくり」。馬場さんは、仙台、山形、どちらのリノベーションまちづくりにも関わっていらっしゃいます。

馬場)今、仙台では都市戦略会議(※10)といったものもありますし、TOHOKU COFFEE STAND FES の本郷さん(※11)のように民間の若手が定禅寺通りに仕掛けているまちづくりがありますね。

年輩のビルのオーナーさんたちが主導しているというよりもむしろ、20~30代の若い世代が「ハロー!定禅寺村」(※12)みたいなカルチャーを受け継ぎながら、ゲリラ的に公共空間をリノベーションしている印象があります。建物を変えるというよりも、風景を変えるようなリノベーションを、パブリックスペースから自分たちで始めちゃったわけです。

馬場正尊 talk about 山形 04/「クリエイティブ・ローカル/仙山生活圏」後編
美しい定禅寺通りの並木通りがコーヒーの香りに包まれた、TOHOKU COFFEE STAND FESの様子も紹介された。

 

本郷さんが掲げるスローガンは「一杯のコーヒーがまちを変える」というもの。美味しいコーヒーを飲むという体験を作って行く、その先にこれからのまちの風景がある。人びとに美味しいコーヒーを提供するたった2万円の屋台からでもまちは変えられるんだよ、っていうメッセージを伝えてくれているんですよね。


※10 せんだい都市戦略会議:せんだいリノベーションまちづくり実行委員会が主催する、レクチャー&ディスカッション&まちの未来づくりの場。
※11 本郷紘一:仙台のまちなかで事業やイベントを企画・展開しているディレクター。TOHOKU COFFEE STAND FESでは定禅寺通りをコーヒーの香りで満たし、2万人を動員した。
※12 ハロー!定禅寺村:SENDAI光のページェントや定禅寺ジャズフェスなど、市民主体のイベントをなんの前例もないなかで立ち上げてきた定禅寺商店街の経営者たちによる伝説的なまちづくりグループ。

これに対して山形の方は、定禅寺通りに比べれば規模も全然小さいですが、シネマ通り(※13)を対峙させたい。民間が出資してリノベーションしたとんがりビルであるとか、BOTA coffeeであるとか、郁文堂書店であるとか、このエリアを中心にしたリノベーションまちづくりが今後さらに活発になっていくことでしょう。

※13 シネマ通り:山形市七日町にある通りの名前。この通りにはかつて映画館がいくつも立ち並んでいたが、現在はひとつも残っていない。リノベーションして動き出したとんがりビル、BOTA coffee、郁文堂書店はすべてこの通り沿いに並んでいる。

次の時代の新しいローカルを先導してくれるであろうおふたりのクリエイティブな市長と、仙台と山形の可能性を考えてきたわけですけど、ふたつの都市が、互いにどこか補完し合いながら、そしてどこから羨ましがりながら新しい未来を切り開いていき、その一翼をまた芸工大も担っていければ、と思います。

(2017.3.25)

馬場正尊
Open A代表/東北芸術工科大学教授/建築家
1968年佐賀生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、 早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2002年Open A を設立。 都市の空地を発見するサイト「東京R不動産」を運営。東京のイーストサイド、日本橋や神田の空きビルを時限的にギャラリーにするイベント、CET(Central East Tokyo)のディレクターなども務め、建築設計を基軸にしながら、メディアや不動産などを横断しながら活動している。

聞き手・注釈 / 那須ミノル

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