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この山道を行きし人あり

この山道を行きし人あり

その店を訪れたのは、午前9時を過ぎた頃。11月も半ばに入り、山形市内はとたんに冬への歩みを深めた。

冷たい空気から逃げこむようにしてドアを開けると、木の香りとコーヒーの香りが混ざり合うほんのりあたたかい店内に、思わず心が解きほぐされた。

「おはようございます。いらっしゃいませ」

やわらかい空気の中、スッとまっすぐ届く声。カウンター越しに、スタッフの女性が笑顔で迎えてくれた。

この山道を行きし人あり
壁面を大きく活用したディスプレー。奥にはギャラリー「KUGURU」がある。

七日町シネマ通りのとんがりビル1Fにオープンした「この山道を行きし人あり」(以降「この山」)。以前にあった山伏・坂本大三郎さんの店「十三時」を引き継ぐかたちで、2019年9月にリニューアルオープンした。

デザイン性の高いパッケージに身を包む食品や日用品、独特な存在感を放つ作家ものの器まで、個性的な商品たちが壁一面に並ぶ。ポップやパッケージの商品説明を読むと新たな発見があり、まるでミュージアムのように知的好奇心が満たされるお店だ。日常的な視点から、冬支度を意識させるニットや湯たんぽなど、季節ものの商品もある。

この山道を行きし人あり
山形県産のいなごを中心に、県産の厳選した素材を合せた高タンパク、高カルシウムで低カロリーな「いなごふりかけ」。店長・清水さん推薦の一品。
この山道を行きし人あり
「バナナテックス」というバナナの繊維からできたバッグやポーチ。フィリピンでは労働問題解決の一助にもなっている。スタッフ佐々木さん推薦の一品。

私が山形市で暮らし始めたのは3年前。それ以前は情報とモノが常に行き交う東京で暮らしていたのだが、贈り物を選ぶ楽しさを教えてくれたのは「十三時」だった。他のお店では出会えないもの。山形の土着的な文化が宿るもの。誰かにプレゼントをするときに、小さなエピソードを添えてちょっと誇らしげに渡せるのだ。

「この山」は、十三時のコンセプト「自然とヒトを繋ぐ」を引き継ぎ、アイテム数を増やしリニューアルした。

東北芸術工科大学出身のデザインユニット・エフスタイルの商品や、デザイン会社akaoniがデザインを手がける食品や日用品、そのほか地元の作家やメーカーなど山形のものを中心に、全国でも取り扱いの少ないドイツvitra社の木のオブジェやスツールまで、自然と人との関わり合いで生まれてきたものが、山形、全国、世界各地から集められている。まもなく、坂本大三郎さんオリジナル版画作品の取り扱いも始まるそうだ。

この山道を行きし人あり
坂本大三郎さんが主宰する、異世界をつなぐプロダクトブランド「KUZURI」

このお店で過ごす朝の時間は特別だ。午前8時からオープンし、出勤前に立ち寄れる七日町周辺で数少ないお店のひとつである。

朝の新鮮な空気にそっと寄り添ってくれるのが「オーロラコーヒー」だ。オーロラコーヒーとは、山形市内にあるコーヒー豆焙煎所。毎日たくさん飲んでも疲れないし、種類によって個性があるので飽きないし、理想の結婚相手みたいなコーヒーブランド(と私は思っている)。

オーロラコーヒーの味わいを丁寧に届けたいと、「この山」のスタッフたちは豆の分量やお湯の温度調整を学び、抽出の訓練を重ねたそうだ。一杯ずつハンドドリップで提供され、店頭では豆の販売もある。

この山道を行きし人あり
サンドイッチセット。オリーブオイルをパンに染み込ませて食べるのもまたおいしい。

フードメニューにも「この山」の思想が行き渡っている。

オリジナル天然酵母で県産小麦100%を使った山形市「Tenn.」のパンに、真室川町の伝承野菜・勘次郎胡瓜のピクルスのソースに、山形市「ガーベルデリカテッセン」のハム。隠し味にはピリッとハラペーニョがきいている。食べ進めるほどに、コクが口の中に広がる上品な味だ。朝食に最適なトーストセットもある。

この山道を行きし人あり
干田正浩さんによる店舗設計。主な大工仕事は山形を拠点に活動する荒達宏さんが担当。

木のあたたかさと、コンクリートや鉄がむき出しの無骨さが同居する店内。リノベーションが生み出す、異素材の組み合わせの妙がある。ファサード壁面には、山形の紅花顔料が使用された。紫外線に弱い紅花の退色していく経年変化を楽しむアプローチだ。

カフェスペースには約20席が設けられ、カウンター、その横の奥まったプライベート感のある席、そして窓際と、それぞれ違うモードで空間を使うことができる。

Wi-fiもコンセントも完備されているので、ワークスペースとしても使える。もしも観光で訪れたのなら、カウンターに腰掛けて、生まれも育ちも山形である店長の清水さんに、地元のディープな情報を聞くのも良さそうだ。

この山道を行きし人あり

この山道を行きし人あり。

「葛の花 踏みしだかれて 色あたらし この山道を 行きし人あり」という釈迢空(折口信夫)の歌より下の句を拝借。旅人が踏みつぶされた葛の花を見て、自分より先に山に入った人がいることを知る。先行者への連帯感や、道の先への期待感などを表しているHPより)。

ビルの歴史を継承し、まちの新たな拠点として生まれ変わった「とんがりビル」。エリアリノベーションとして、新旧が刺激し合いながら、少しずつ変化を重ねているシネマ通り。そんな背景にも通じるこの言葉に思いを巡らすと、心のどこかに小さな胸の高鳴りを感じるのは私だけだろうか。

11月23日(土)には、「とんがりマーケット」が開催される。日用品や食べ物、飲み物のお店が出店し、作り手と交流ができるイベントだ。これから毎月定期開催されていく予定だという。

「お客様と作家さんとご近所さんと、いろんな繋がりがここに終着して、人が集まれる場所になれたら」と清水さんは話す。シネマ通りにまた新たな風が吹き、まちの風景に変化を生み出していくことだろう。

名称

この山道を行きし人あり

URL

https://www.konoyama.com/

住所

山形県山形市七日町2-7-23 とんがりビル1F

TEL

023-674-7757

営業時間

8:00-18:00(催事時〜19:00)

定休日

水曜日

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