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Q1という新たな問いのはじまり【その3】/リビセン体験記・後編

2020.02.05

前回に引き続き、長野県上諏訪市にある古材と古道具を販売する建築建材のリサイクルショップRebuilding Center Japan(リビセン)のサポーターズに18日間参加することで体感できたことをレポートします。(前編はこちら)

Rebuild New Culture
文化を次世代につないでゆく

「古材と小道具を販売する建築建材のリサイクルショップ」と書きましたが、実際のところ、リビセンはただ単に古材と古道具を引き取って販売しているだけのお店ではありません。既にある古くて美しいモノや文化を次の世代につないでいくための仕組みがたくさんあります。

例えばカフェ。その内部空間は、古材で作られたテーブル、張り替えられた椅子、食器をリメイクした照明など、レスキューされたもので溢れています。展示に使われている棚なども、もし欲しくなったら購入できたりもします。こうしてふだんは古物とまるで縁がない人たちにも、さりげなく触れてもらうきっかけを提供しているのです。実際、お子さんを連れた女性が帰り際に古材を買って持ち帰るという場面もありました。だれでも古材を買うということが日常の一部になっているような、未来の風景を垣間見ることができました。

Q1という新たな問いのはじまり【その3】/リビセン体験記・後編
古材が張り巡らされているカッコいいカウンターが目を惹きます

あるいはまた、トタンやタイル、ガラスなどの身近な素材。そういうものも、ふだんとはちょっと違った使い方をしてみるだけでその見え方が全く変わったものになる、ということもリビセンの店内はさりげなく教えてくれます。「ちょっとのアイデアで暮らしは楽しくできる」というメッセージを伝えてくれているかのようです。

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トタンの看板
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商品キャプションが書かれたタイル

また、リビセンでは頻繁にイベントを開催しています。
私が滞在していた期間には、石徹白洋品店の企画展が開催され、岐阜県の石徹白地区で農作業着として着用されていた「たつけ」などが販売されていました。この石徹白洋品店の活動はかつてreal local でも取り上げていた、再生可能エネルギーをテーマとしたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」でも紹介されています。

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お尻の部分にゆとりがあって動きやすい「たつけ」
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丁寧に仕立てられた服がカフェスペースにずらっと並んでいます

このイベントではトークも行われ、そのとき紹介された映像のなかで、石徹白洋品店の方が自然の草木で布を染める姿や、地元の方から藍染やたつけの作り方を聞いている姿がとても印象的でした。穏やかな様子でありながらも、文化を引き継いでいくたくましさのようなものを感じました。またトークのなかでは、繊維廃棄物は年間約170万トンに及ぶというお話もあり、建築の解体に伴う木材の年間排出量が約140万トンとも言われていますから、いかに凄まじい量の衣服が廃棄されているかを知り、とても驚きました。

私は最初、リビセンでイベントを開催するのはお店に足を運ぶ人を増やし、古物の間口を広げるためだと思っていました。しかし、そういうこと以上に、建材以外のどの分野でも廃棄されるものが多いという現代の状況や、古き良き文化がどんどん失われてゆく状況にあるという事実を広く伝えてゆく役割を担っているのだということに気がつきました。

ものが沢山溢れ、ある程度の質の良いものは安く購入でき、そして買い物も指一本でできるというのは、便利でありがたいことです。その一方で、そういう状況だからこそ、ちょっと壊れれば簡単に捨てられてしまうものがあったり、最初から「壊れたら捨てればいい」という前提で生み出されるものがたくさんあったりする、というのも事実です。

これに対して、リビセンが開催するDIYワークショップや石徹白洋品店のたつけ作りワークショップは、「作る、使う、直す」ことについて、自分の暮らしの可能性を広めてほしいという思いが込められているように感じました。

自分で使うものを自分で作ること、まだ使えるものを直しながら大事に使うこと、役目を終えたものには感謝すること。そういった一見当たり前のようなことを、私はふだんどれだけ実践できているのだろうと、自身の生活を顧みる貴重な機会になりました。

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山形に戻って
これからのことを改めて考える

さて、リビセン・サポーターズの日々を終え山形に戻った私は、まちを見回しながら歩いてみて、更地や駐車場になってしまった場所がまた増えていることに気がつきました。つい2ヶ月ほど前にリノベーションスクールでお話を伺った方のお宅がなくなっていたりもしました。こうして建物の解体がどんどん進んでいるまちを目の当たりにし、リビセン的活動が山形にも必要だということを再認識しています。

古物の選び方、掃除の仕方、値段の付け方、レスキューから売り場に出すまでの基本の業務から、さらには価値のあるものの伝え方まで、その一連の流れを私はまさにサポーターズで体験させて頂きました。でも、だからといって、すぐにお店を出して経営を成り立たせるのは私には難しいことです。

けれども、また同時に、解体が決まったお宅を訪ねて話を聞くことや、古材でなにか作ってみることや、古道具を洗いながら昔のまちの暮らしに思いを馳せることは、今すぐにでもできることのような気もします。まちの文化や歴史を知り、未来に紡いでいくこと、暮らしをより楽しく生きていくための手助けになるようなことを少しずつ、少しずつ始めていかなければ、と思います。

さて、改めて。
Rebuilding Center Japanのみなさま、長野にいる間お話をさせていただいたみなさま、素敵な体験をありがとうございました!

Q1という新たな問いのはじまり【その3】/リビセン体験記・後編

長野での学びを経た私の山形での今後の動きを、また機会があれば、ここでお伝えしていきたいと思います。どうぞお楽しみに。

Let’s rebuild new culture !!

 

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