real local 山形 » 納豆餅 LONG TALK 2【地域情報】

納豆餅 LONG TALK 2

2020.12.15

郷土色の強い、山形の隠れた名物「納豆餅」。

しかしこれまで、納豆餅がもつ味わいの素晴らしさやその存在の価値の高さというものは、きちんと語られてきたと言えるでしょうか。そんな疑問と反省から、餅の星野屋店主・星野輝彦さんとリアルローカル山形のライター那須ミノルの対話が始まりました。

納豆餅について本気で語り合うという至福(?)の時間の模様を、全6回にわたって(!)お届けします。

納豆餅 LONG TALK 第1回はこちら

納豆餅 LONG TALK 2

山形の人はなにゆえ
納豆餅を食べるのか?

那須:納豆餅が一番売れる季節ってありますか?

星野:うーん、餅がよく売れる季節って、涼しい時期です。暑い夏はあんまり売れない。みんな暑い日にお餅をモリモリ食べる感じじゃないみたいなんですよ。秋、11月くらいになると大福も餅もしるこも売れるようになる。少し肌寒いかなっていう気候だと食べたくなるみたいです。

那須:なるほど。寒くなっていくと売れる。例えば今日あたりはお店で納豆餅って何食くらい売れたんですか?

星野:どうかな、10食くらいかな。うちは、5粒で食事的に提供するのと、2粒でおやつ的に提供するのとあるんですけど、2粒での注文が多かったですね。

那須:おやつ系ですね。おやつに納豆餅…、だいぶシブイですね。

星野:そうですね。まあ今日あたりは、納豆餅よりおしるこの方が人気だったですね。女性はやっぱりそっちみたいです。しるこは秋冬限定ですしね。

那須:そっか。しるこは季節商品ですね。納豆餅は通年ですか?

星野:通年です。

那須:納豆餅っていうのは、山形では昔から、餅の食べ方としてはポピュラーな食べ方だったんでしょうか。

星野:一番ポピュラーなんじゃないでしょうか。甘いのが好きな人はあんこで、しょっぱいのが好きな人は納豆餅。で、そのどっちが人気かって比べると、納豆餅に軍配が上がるんじゃないかと思いますね。

那須:あんこより人気がある。すごいですね。

星野:そう、あんこより人気がある。例えば、おじいちゃんは甘いのは食べないけど納豆餅だったら食べちゃうよみたいなパターンは意外とあると思いますね。

納豆餅 LONG TALK 2
納豆餅についての考察を続けてくれる「餅の星野屋」星野さん

那須:なんで山形の人間はそんなに納豆餅を食べるんですか?

星野:そもそも納豆をよく食べるんでしょうね。

那須:納豆汁という郷土料理もありますしね。

星野:そうそう。やっぱり、納豆って保存食でしょ。内陸の土地柄ですから、豆の保存食とか発酵食品というのは基本なんですよ。

那須:とはいえ、納豆は他の地域でも食べますよね。「納豆餅」っていうのを食す文化は、山形と宮城と福島あたりと聞いてますが。

星野:そうですね。南東北の内陸部ということなんでしょうね。もし、沿岸部でいつも新鮮な海の幸とかが手に入るのなら、納豆みたいな保存食は基本あんまり食べないんじゃないでしょうか。

那須:各地それぞれにその季節の鮮度の良い食い物があった、と。けれども山形にはあんまりなかった、だから納豆だと。

星野:うん、たぶん。昔からこの山形の内陸部には新鮮な海の幸はないし、肉もいつでも食べられるものではなかったわけです。そうなるとやっぱりタンパク源としては大豆くらいしかないわけですよ。だから山形の人は昔から納豆食べてきたんだと思いますね。

納豆餅 LONG TALK 2

那須:納豆餅は、餅と大豆。ぬた(ずんだ)は枝豆。あんこは小豆。あとは、くるみ、ゴマ。なるほど、確かに餅を包んできたものは保存のききそうなものばかりかも。

星野:そうでしょ。で、そもそも納豆をよく食べるんですよ。納豆が大好きなんです。

那須:山形には納豆ラーメンもありますしね。

星野:納豆味噌ラーメンね。基本的にはそういう食文化は、あんまり豊かでない、旬のものが食えるところではない、という風土から生まれたんだと思いますね。豊かじゃないからこそ生まれた文化というわけです。

納豆餅には、納豆と醤油。納豆味噌ラーメンには、納豆と味噌。納豆汁なら、納豆と味噌と豆腐。これぜんぶ大豆ですよ、大豆製品のオンパレードです。

こうした先人たちの知恵と工夫、その組み合わせ方の妙、本当に素晴らしいと思いませんか。同じ素材でも加工方法によって違うものになり、さらに食文化として花開いている。

那須:豊かじゃないから生まれた文化だけど、文化としては豊かなものとなったからこうして現代まで受け継がれてみんな納豆餅を食べている。すごいことですね。

 

次回につづく。

シリーズアーカイブはこちら