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納豆餅 LONG TALK 5

2020.12.15

郷土色の強い、山形の隠れた名物「納豆餅」。

しかしこれまで、納豆餅がもつ味わいの素晴らしさやその存在の価値の高さというものは、きちんと語られてきたと言えるでしょうか。そんな疑問と反省から、餅の星野屋店主・星野輝彦さんとリアルローカル山形のライター那須ミノルの対話が始まりました。

納豆餅について本気で語り合うという至福(?)の時間の模様を、全6回にわたって(!)お届けします。

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納豆餅 LONG TALK 5

餅を食べ切った後の
納豆の処理についての考察。

星野:さて、納豆餅ですが…。餅を食べ終わって、納豆が残りました。

那須:餅が終わって、納豆が残った。はい。

星野:その納豆は食べますか?食べませんか?

那須:え、さっき、きれいに食べちゃいましたよ、飲むようにして最後の一粒まで。

星野:なるほど~。那須さんはそのタイプですね。私も最後まで食べる派なんですよ。でも、食べない派の人って結構いるんですよ。つまり、あの汁の方に残った納豆はもう出汁を出し切ってふやけた大豆にすぎないから、もう食べなくていい、と。

那須:そうか。つまり、納豆の旨味が滲みでたタレの味と餅だけでいい、納豆は食べなくていいと?

星野:そう、だから「納豆は残すもんだよ」っていうスタンスの人がいるんですよ。

那須:それはすごい、気づかなかった。比率的にはそういう人はどのくらいいる感じですか?

星野:10%強、20%弱という感じですね。

那須:完全に「あえて納豆を残してる」感じなわけですね?

星野:そうそう。納豆は汁の中でふやけますからね。ふやけて柔らかくなったからおいしくない。だから残す、みたいなことだと思います。

納豆餅 LONG TALK 5
こういうこと?
入院していても病室で
納豆餅を食べる人たちのこと。

那須:星野屋さんの餅シリーズにはバリエーションがいろいろあります。納豆、あんこ、ぬた(ずんだ)、ごま、きな粉と。今ここまでで五種類あります。これを年間を通しての人気を順位付するとどうなりますか?

星野:一番は納豆でしょうね。次は、ぬたかな。で、三番目はくるみかな、ただしくるみは秋だけの季節限定です。後につづくのは、あんこ、きな粉、ごま、という順番かな。

那須:ごまって人気ないんだなあ。

星野:ごまって人気ないんですよ。好きな人は好きなんですけど、少数派なんです。で、あとは、ちびっこに人気なのはきな粉ですね。お子さんの注文はだいたい納豆かきな粉です。

那須:面白いなあ。納豆は1位ということですけど、全体の割合で言うとどのくらいですか? 20%くらいいきますか?

星野:40%くらいいくと思います。結構みんな納豆餅を注文するんですよ。

那須:それは驚きですね。

星野:この店は、済生館病院からすぐ近くにあるでしょ。そうすると、おじいちゃんとかおばあちゃんが入院してるからって、息子さんとか娘さんが見舞いにいく前に寄ってくれて「じいちゃんが納豆餅食べたいって言うから買いに来ました、テイクアウトお願いします」って来てくれるんです。こういうお見舞いはだいたい納豆餅です。入院してる人が「餅食べたい、1人前何かひとつ」って言ったらそれは納豆餅なんですよ。納豆餅は不動のセンターです。

那須:すごいなぁ。おじいちゃんおばあちゃんは入院した病室で納豆餅食べてるってことですもんね。

星野:すごいですよね。

那須:星野屋さんでは、餅の大きさはどうしていますか? 小ぶりな感じですか? 餅によって変えたりすることもありますか? 例えばきな粉餅の餅と納豆餅の餅で大きさが違ったりするんですか?

星野:基本的にはそんなに変わらないです。ただ、ぬた(ずんだ)は若干小さめでもいいんですよ。ぬた餅の場合は、表面に分厚くぬたが絡むので、餅はやや小さめでもいいんです。そのほかはほぼ同じ大きさですね。あえて言えば、納豆餅は、白い餅が見えてる状態なので、やや大きくしているかな。

納豆餅 LONG TALK 5
これは七味のせバージョン。
餅の温度と水分量、
柔らかさと硬さについて。

那須:なるほど。餅はひと口で食べることを想定されてますか?それともふた口くらいに噛み分けて食べることを想定されていますか?

星野:ふた口です。ひと口で食べるのはちょっと食べづらい。ひと粒をふた口で食べれば、ちょうどいいんじゃないでしょうか。

うちの店で言うと、餅はつきたてをジャーに保温しておくんです。で、注文を受けたらその保温されていたあったかくて柔らかい餅を「冷めたら硬くなりますよ」って言ってお出しするんです。あったかい餅を提供する、というやり方なんです。

でも、お店によっては、あったかいうちにお餅を丸くしておいて、それが冷めてしまったものを出すというところもあります。そういう冷ました状態の餅を提供する店の餅は、水分量が多いんです。それに対して私の店は、水分量がある程度抑えられていて少ないんです。

那須:ねば~って伸びる餅と噛みやすい餅とあると思うんですけど、それは水分と関係あるんですか?

星野:どちらかというと温度じゃないでしょうか。餅にとって温度って大事なんですよ。熱すぎてもだめだし、冷えてもだめだし。まあ「ちょっと冷めて固くなったくらいの餅が好き」って言うお客さんはいますけどね。

一般的には人肌くらいのあったかさがおいしいと思っています。餅も米ですからね。冷やご飯よりは、炊飯器から茶碗に盛ったばかりのあったかいのがやっぱりおいしい。それと同じじゃないですかね。それでいうと、水分が多い餅っていうのは味的に、お粥みたいな感じだと思います。水っぽい分、米の旨味が薄まるんだと思いますけどね。

那須:そうか、水分量が多すぎるというのは薄まってるということでもある、と。

星野:ですから、「柔らかい餅=おいしい」というわけではないと思いますよ。適度な温度や、適度な水分量ってあるんです。よく「柔らかいからおいしい」ってコメントを聞くことがありますが、水分量を増やせば柔らかさは出せるので。

むしろある程度の固さも必要なんじゃないか、と思っているんです。餅のTVCMで、ビヨーンって伸ばす食べ方を見ることがありますけど、私はああいう餅はあまり好きじゃないんです。柔らかいという点だけをアピールしているのを見てしまうと「そこじゃないんだよ!」って言いたくなる気持ちがあります。

那須:さきほど納豆餅をいただいて、噛み心地がスパッと気持ちいいなと思いました。

星野:ありがとうございます。そのへんも大事だと思うんです。ベロ~ンってしすぎたら餅はおいしくないんです。腰抜けみたいで。そこらへんの塩梅も、餅屋としては考えるところです。

那須:「餅はデリケート」って星野屋さんは以前からおっしゃってますもんね。

星野:本当にそうなんですよ。だから季節によって水分量を変えますし、仕入れる米によっても変えますし。例えば今は寒い時期だから、水は少し余計に入れて、若干多めを意識してつくったりしていますしね。

 

次回につづく。

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