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越前丹南、日常に触れる旅2/越前和紙の里で暮らす人たちに出会って、オリジナルのお土産をつくろう!

ローカルを体験

2021.02.10

えちぜん丹南、日常に触れる旅と題して、福井県丹南地域のローカルトライアルツアー第2弾を紹介します。アーカイブはこちらからどうぞご覧下さい。

改めまして、こんにちは!福井歴7年目に突入したライターの牛久保です。
第2弾は、越前市今立(いまだて)、粟田部(あわたべ)エリアへGO!1300年続く越前和紙の里で、紙漉き体験やまちあるきを通してこのまちの人たちの風景に触れてきました。

今回の旅は、クラフトツーリズムや、地域の隠れた魅力に興味を惹かれる若い方々に来てほしいと企画したもの。というわけで、モニター参加してくれるのは、学生団体withのみなさん!鯖江市で2011年に発足した学生団体で、鯖江市地域活性化プランコンテストを運営するなど積極的に地域の人をつなぐ活動をしている団体です。おお、なんてしっかりしているんだ。。私も刺激を受けて学生に戻ったつもりで楽しもうと思います!

越前丹南、日常に触れる旅2/越前和紙の里で暮らす人たちに出会って、オリジナルのお土産をつくろう!
withのみなさんと石原さん。雨が降るかな、降らないかな。ドキドキしながら今日の旅程を聞きます。

 越前和紙の里。取材前日にFacebook6年前、私が同じ場所を一人旅していたと知らせてくれました。福井に住みはじめたばかり、ギリギリ20代の私。曇天の下、北陸の寒さに慄きながらまちを歩き、地元の食堂で中華そばを食べ、神社にお参りし、伝統的な和紙漉き体験をしていました。
そういえば、あの時は職人の方が丁寧に教えてくれたなあ。そんなことを思い出したら、急になつかしさがこみ上げてきました。さて今回はどんな旅になるのでしょうか。

パピルス館で紙漉き体験を

和紙の里の暮らしに触れる旅の始まりは、やはり紙漉き体験から始まりました。
場所は「パピルス館」。ここでは手軽に紙漉きの体験ができます。
説明してくださったのは伝統工芸士の佐々木康夫さん。和紙の材料の説明から、紙漉きの手順まで、場を盛り上げながらとても分かりやすく教えてくださいました。

越前丹南、日常に触れる旅2/越前和紙の里で暮らす人たちに出会って、オリジナルのお土産をつくろう!
笑顔がすてきな佐々木さん!明るく分かりやすく説明して下さるので、楽しく紙漉き体験ができます。

ここでみんなは自分の和紙を漉いて、紅葉や色を落としてオリジナル和紙を作り上げていきます。自分のセンスが問われるオリジナル和紙づくり。思い思いの和紙が出来上がってきます。

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和紙を彩る押し花や紅葉はこの周辺で採取してくるそう。春になったら敷地内の桜の花びらも材料になるんですって。
見惚れる!和紙職人の技と姿勢

完成品は、まちあるきをしてから受け取るということで、次は「卯立(うだつ)の工芸館」に向かいます。こちらでは伝統工芸士の方が昔ながらの道具を使い、紙漉きをしているところが見学できます。事前予約をすれば、伝統的な和紙漉きがマンツーマンで体験できます。この場所で私は6年前大きな和紙を2枚漉きました。
技術を見せてくださったのは真柄昴史さん。説明をしながら鮮やかな手つきで紙漉きを行います。

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一つ一つの所作が美しい。小数点以下の世界を自分の手の感覚で操作していきます。まさに職人技!

出来上がった和紙をどんどん積み上げていく真柄さん。
濡れているけどくっつきませんか?と聞くと、「重ねてもくっつかない。できあがった和紙はまんじゅうのようなもので、薄皮と餡と薄皮という構造が1枚1枚できているんだ」とのこと。すごいぞ、和紙!

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漉き舟に原料と水を入れて和紙を漉きます。職人さんの仕事ってずっと見ていられます。

訪れたのは12月初旬。初雪はまだでしたが、冷たい雨が降ったりやんだりの寒い日でした。
和紙を漉くときに必要なトロロアオイの「ねり」が安定するから冬場が紙漉きのベストシーズンと言われています。が、冷たい水の中で作業するのはしんどいなと思うのが素人なわけで。「大変じゃないですか?」と思わず質問。「今年の夏は暑かったからね。夏場は材料が30分も持たなかった。そうするとまた1から和紙の材料を作り直さなきゃいけない。品質を保つのが大変なんだよ」真柄さんから返ってきたのはこんな返事でした。
「自分」ではなく「和紙」の状態を最優先で考えているからの返答。ああ、プロって本当にすごい。一つの道を極めている方の姿勢に、背筋が伸びる思いがしました。 

まちあるき。秋葉山へ、いざゆかん

卯立の工芸館を後にした私たちは、今立五箇(いまだてごか)を歩きながら、まち全体が見渡せる秋葉山を目指します。

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20代の若者たちと一緒にまちあるき!今立五箇地区は和紙の工場が多いため用水路が張り巡らされています。

 今回、地元の案内人としてアテンドしてくださったのは川﨑博さん。出身は越前市の他地区でしたが、結婚してこの土地に暮らし始めました。数年前から今立五箇地区では地元の人たちのボランティア団体が発足し、まちの案内をするようになったとのこと。川崎さんもそのメンバーの一員です。

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川﨑さんの着ている緑の法被は岡本講の世話人たちのユニフォーム。沢山この土地の話をしていただきました。

「この地域はね、祭りで男衆(おとこしゅう)の絆ができているんだよ」と川﨑さんは言います。今回は立ち寄りませんでしたが、紙の神様を祀っている岡太(おかもと)神社・大瀧神社は年2回のお祭りがあります。1500年もの長い年月続く紙の神様のお祭りは、この地域で暮らす人たちが一致団結する機会。根強い地元のネットワークが培われます。

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秋葉山から今立五箇を望みます。眼下にひろがる黒い越前瓦の葺かれたまちなみ。晴れた日におにぎりを持って登りたい!
粟生寺のお堂でオリジナルランプを作る

今立五箇のまちあるきを終えて、粟生寺(しょくしょうじ)さんへ。こちらは隣の粟田部(あわたべ)地区の1300年の歴史を重ねたお寺さんです。ここで参加したみなさんはかせ(紡いだ糸を巻く道具)に先ほど作った和紙を貼り、オリジナルランプを作ります。これが今回の旅のお土産。今回かせを使って、和紙のランプづくりを行うのは、この粟田部が繊維問屋の多い地区だったことから。今立五箇の和紙と、粟田部の繊維問屋の歴史がランプ作りで融合されます。 

御本尊にご挨拶をして、みんなはオリジナルランプ作りに没頭していきます。

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自分たちの漉いた和紙を切ってかせに巻きつけます。どの部分を切り取ろうか、みなさん集中してカッターを使っています。

古くからの寺社は冠婚葬祭や日々の生活のよりどころとしてその地域の深い部分を担っています。だからその土地を知るにはまずはその土地のお寺の住職と仲良くなるとよいかもしれません。粟生寺さんでは、本堂で落語の高座も定期的に開催しています。また近隣には紅葉や桜、新緑が美しい花筐(かきょう)公園があります。高座や公園、和紙の里に行きながら、お寺に参拝してみるのもいいな~。

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坂川住職、気さくにお寺の歴史や最近の取り組みをお話しくださいました。ここで開催される高座、なんて贅沢な空間なんだ。。

 みんなのランプが出来上がりました!ランプのライトをつけると和紙からやわらく光が広がります。うーん、押し花や付けた色がそれぞれいい味出てるぞ、いい感じ。

越前丹南、日常に触れる旅2/越前和紙の里で暮らす人たちに出会って、オリジナルのお土産をつくろう!
みんな美しく仕上がりました!枕元に読書灯として置いたりするのもいいかも。 
かせや味噌さんへ。変遷しながら受け継がれるもの

旅の終わりに粟生寺の近くのお味噌屋さん「かせや味噌」さんに立ち寄りました。
かせやさん。その名の通り、元々の生業は、かせ問屋でした。9代目が明治に味噌屋を創業。味噌屋としては130年の年月を重ねています。ちょうど数年前に息子さんへと世代交代をしたかせやさん。「最近息子が店の動画を作ったんだよ」とお父さんが嬉しそうに話してくれました。

越前丹南、日常に触れる旅2/越前和紙の里で暮らす人たちに出会って、オリジナルのお土産をつくろう!
味噌を発酵させる部屋「室(むろ)」を見学。土壁でできた室はほんのりとあたたかく落ち着く暗さを保っていました。

帰宅して、かせやさんで買った味噌で味噌汁を作りました。なるべく古くからのやり方でというのがかせや味噌さんの味噌づくり。1年以上木樽で熟成された味噌は深いコクがあって、しみじみと美味しかったです。ちなみにかせやさんは昔ながらの味噌の量り売りもしています。1人暮らしだから少量でいいという人にも、沢山買いたい人にも、嬉しいサステイナブルなサービスです。

 今回のトライアルツアーで出会ったのはこの地域に深く密着しながら暮らしている人たち。
遥か昔から豊富に流れる水がこの土地に和紙という産業をもたらし、祭りや文化を育みました。和紙は薄くて柔らかいものですが、保存性が高く破れにくい。そんなしなやかな和紙の強さが、この土地に暮らす人たちの横顔と重なりました。

 withメンバーの下牧由佳さんに、感想を聞きました。「とても新鮮で学びの多い時間を過ごすことができました!鯖江のことは沢山知っていてもお隣の越前市はまだまだ知らないことが一杯だった。県内外の人に知ってもらいたいですね。」
20代のみんなと一緒に歩いた今立五箇、粟田部。オリジナルランプのお土産と味噌でみんなもこのまちを何度も思い出してくれたらいいなと思います。

(テキスト/牛久保星子、写真/黒川照太)

越前丹南、日常に触れる旅2/越前和紙の里で暮らす人たちに出会って、オリジナルのお土産をつくろう!