【福島県須賀川市】 かたちを削る/かわらまち木工舎 中山 由紀子さん
インタビュー
福島県須賀川市にある住宅街の戸建て住宅の庭に、小さな工房が佇んでいる。工房の主は「かわらまち木工舎」の中山由紀子さん。なんでもこの工房、DIYで自ら建てられたそう。今回は木工作家、中山由紀子さんにお話を聞いてきました。
できることを、ひとつずつ
―かわらまち木工を始められたきっかけを教えてください
子供の椅子づくりを教えてもらったことがきっかけでした。当時、家を建てたばかりだったので、ホームセンターから材料を買ってきて教えてもらいながら家の収納家具をDIYで作りました。その後、製作を続けていく中で、縁があってイベントの出店や地元の雑貨屋さんで販売させてもらいました。 手彫りの作品に移行したきっかけは、スプーン作りを教えていただいたことです。最初は勝手がわからなくて削っても削っても全然出来上がらなくて、結局スコップみたいなスプーンが出来上がりました。 それからひたすらスプーンを作りました。思ったような形が全然出来上がらなくて。失敗の連続でその度にやり方を変えたりして、試行錯誤してできることがひとつずつ増えていきました。木工を専門的に習ったことがなく知識がなかったので、とにかく一つの道具を買ったらそれを使いこなすまでとことんやりました。自分の思っていた形がイメーシ通り出来るようになった時は嬉しかったです。
間伐材から作る作品
―手彫りの作品はどんな工程で作りますか
たとえば、スプーンなどのカトラリーは薄板をバンドソーという機械である程度の大きさにカットします。大まかな形に切り出したあとは、切り出し刀や南京鉋を使って整形 しながら彫刻刀で彫っていきます。 形が出来上がったら、仕上げのオイルを塗っていきます。 荏胡麻油(えごまゆ)を何度か塗り重ね1週間ほど乾燥させて完成させます。 お皿は手彫りだと楕 円のお皿がつくれたり手作業ならではの線が出ておもしろいです。 手彫りはひたすら彫っていく地道な作業です。私の場合、彫っては休み、彫っては休みといった感じで、それでも仕上げの彫りが気に入らないとヤスリで落としてもう一度彫りなおしたりと時間と体力勝負なところもあります。 カトラリーにもお皿にもいえることですが、やっぱり形のバランスが大事で 紙の上でデザインしても作ってみたら少し違ったということがよくあります。
木材は近くの間伐材や剪定後の果樹の木、オイルは地元の農家の方々が作られる食用の荏胡麻油など身近に手に入るものを使うことを心がけていて、 木材はチェンソーを持参してもらってきたりしています。
ー最近、旋盤を取り入れられたということですがその作業についてもおきかせください。
旋盤は作品の幅を広げるために導入しました。主に、ランプシェードの傘の製作に取り組んでいます。今まで苦戦していた大きな材料の加工にも挑戦しています。生木加工では乾燥の過程で歪んでしまうので、削り始めたら一気に仕上げます。 生木を旋盤で削っていると、削り出てくる木くずがすごくしっとりとしていて樹木は水分を吸って生きていると改めて実感します。
こだわりの作品が浸透する文化を作る
―これからはどのような作品を作っていきたいですか。
今年は今まで通りのカトラリー製作を続けながら、新しい表現として去年からはじめたランプシェードをもっと深めていきたいと思っています。
県内にはこだわりを持ってものづくりをしている魅力的な作家さんがたくさんいらっしゃいます。ですが、まだまだ認知してもらえる場が少ないと感じています。 作家さんが集まって作品を披露できるクラフトフェアのようなものが開催できないかなと考えています。 一昨年前から出店させていただいている福島県林業祭やクラフトフェアなどを通じ、県内で作家さんの作品がもっと浸透し、理解を深めていただけるような文化をつくっていきたいです。
URL | https://www.instagram.com/yukiko_nakayama_kawaramachi/ |
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