real local 鹿児島【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和 髙田昌宏さん - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和 髙田昌宏さん

インタビュー
2025.05.13

鹿児島市と大隅半島の2拠点で映像クリエイター「栞日和」として活動している髙田昌宏さん。その制作活動は広告やブランディングムービー、ミュージックビデオなど、映像写真共に多岐にわたります。その他にも「一般社団法人音楽の息づく街かごしま」の理事も含め、映像以外の面でも活動の幅を広げてきています。今回、髙田さんの活動背景やその根幹に迫りました。

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん

大事にしたい一瞬一瞬を“のこす”環境づくりを

志布志市出身で学生時代はバンド活動に夢中になり、音楽の道へと進むべく専門学校へ入学した田さん。実際に音楽の現場に入るなどの経験を積むことで見えてきたのは新しい選択肢だったといいます。

“実際に音楽を弾くだけじゃなく、それを舞台裏で支える役割もあるんだ!”

“好きな音楽をライスワークではなく、ライフワークとして続けていくのも一つの選択肢かもしれない。”

専門学校を卒業後は、県内のブライダル関連の仕事に就き、結婚式の音響を担当することになります。結婚式を支える多くのスタッフの中で特に心魅かれたのがカメラマンだったそうです。

「特にエンドロールで届けられる映像を見るのが好きでした。そこで流れるものは新郎新婦が大事にしたい一瞬一瞬を記録し編集されたものです。限られた時間の中でクオリティー高くのこし、会場にいる皆さんを感動へと導くあの瞬間はとても好きでした。」

その後、自身でもカメラを始め、写真や映像にもチャレンジするように。次第に、気持ちが高まり、ライフワークとしてカメラに関する活動を始まることになります。

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
栞日和 髙田昌宏さん
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
音響機材のチェックをする様子

そこで立ち上げたのが「大隅写真部」。SNSでメンバーを募集し、定期的に集まり、大隅半島を軸にメンバーの視点で撮影し、発信を続けていったのだとか。

当時、SNSで大隅半島の写真を見かけるものの、実際にそういった写真を撮影している人たちが集まる機会はありませんでした。それなら、集まれる環境をつくろう。そう思い、活動を始めました。認知してくださる方も増えてきて、メンバーでグループ展や大隅半島内の高校生と一緒に合同展をしたりと、写真を通して交流や活動の幅を広げていきました。」

「僕自身も学生の頃、まちの大人に音楽ライブといったパフォーマンスができる環境をつくってもらったからこそ好きな音楽に夢中になれましたし、その楽しさを教えてもらいました。だったら、今度は僕らが次の世代の子たちにそういう環境をつくっていく番だと思ったのも活動を始めた一つの理由です。」

そして、次のステップへ進むべく音楽仲間の友人の誘いをきっかけに東京へ活動拠点を移すことになります。

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:大隅写真部 大隅写真部メンバーと(2017年時)
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:KIUMI DESIGN 大隅写真部として鹿屋市内でグループ展を開催した際のフライヤー(2017年)
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:髙田昌宏 大隅写真部として鹿屋市内でグループ展を開催した際の様子
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:髙田昌宏 大隅写真部として地元高校生と一緒に合同展を開催した際のフライヤー(2018年)
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:髙田昌宏 大隅写真部として地元高校生と一緒に合同展を開催した際 準備中の様子(2018年)

人の営みがあるからこそ生まれる特別な日々の風景

東京では制作会社で映像の勉強をしながら音楽業界にも携わる日々。実践を通し、技術や自身もついていく中、あることが髙田さんの心の中で引っかかっていたといいます。

東京に残るか、鹿児島へ戻るか。

その選択に迷っている中、大隅写真部の活動を通して仲良くなった仲間からの一言が「鹿児島へ戻る」選択肢へと導いたそうです。

“鹿児島へ戻っておいでよ!一緒に地元を盛り上げる環境をつくっていこう!”

その言葉をきっかけに志布志の音楽フェスの運営に携わり、鹿児島へUターン。そして、大隅半島を中心に映像クリエイターとしての道を歩むことになるのです。

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:髙田昌宏 2019年に携わった作曲クリニック(鹿児島市にて開催)の様子
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:髙田昌宏 2019年に携わった作曲クリニック(鹿屋市にて開催)の様子
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:髙田昌宏 2019年に携わった作曲クリニック(鹿屋市にて開催)の様子

屋号は「栞日和」。

そこにはどんな想いが込められているのでしょうか。

「人によって大切にする時間はそれぞれです。結婚式のようなハレの日もですし、何もない日常のケの日だって、誰かにとっては特別な日になり得ます。そんな時間をちゃんと記憶としてのこしたいと思うようになったんです。」

「特別な日(時間)をその人の人生の中に栞(記憶)を挟む、という意味を込めて“栞日和”という屋号にしました。思い出を取りこぼさないように、かつ、それを客観的に見ることで、その人が大事にするその日をバランスよく撮り、カタチにしていくことを大事にしています。」

東京から鹿児島へ戻り、さらに、会社員から個人事業主と立場が変わったことで見えてきたこともあるといいます。

「以前に比べて、人の営みというのが鮮明に見えるようになってきました。今いる一人ひとりの存在や人間らしさがあるからこそまちの風景は生まれていると感じるようになりましたし、だからこそ、まちを支えている皆さんへのリスペクトは高まったと思います。」

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん

領域を超え、一つのものを手がけていくクリエイティブ

2020年。新型コロナウイルスが蔓延し、人とのリアルな関わりが難しくなり、髙田さんもその影響を大きく受けたといいます。そんな時、専門学校時代からの付き合いで音楽の道を歩み続けている友人との再会が新しい動きへと誘(いざな)うことになったのです。

「その友人のミュージックビデオやライブ映像に関する制作などに関わるようになってから世界が少しずつ変わりました。彼はリアルの場やご縁を大切にしていて、そんな生き方に影響を大きく受けましたし、それまで関わりのなかったジャンルや地域の皆さんとの接点もでき、特に鹿児島の音楽業界の方々を中心に増えていきました。」

そして、2024年には毎年開催していた鹿児島ジャズフェスティバル(※)がきっかけで「一般社団法人 音楽の息づく街かごしま」が設立され、髙田さんもその理事として関わるなど活動の幅をさらに広げてきています。

「音楽といってもさまざまです。例えば、クラシックは作曲家の想いを汲み取り、それをいかに忠実に再現させるかが求められるのですが、ジャズは作曲家の想いを汲み取る他に、その場の雰囲気をスパイスにどう演奏するか即興性が求められると思うんです。鹿児島の音楽界ではそういった人たちが手を組んで一緒に活動をしているので、僕はそんな人たちが気持ちよくパフォーマンスができるように何でもできるマルチプレイヤーを目指し支えながら、世界に発信していきたいと思っています。」

(※)オーセンティックなジャズにこだわったアーティストラインナップと、ここでしか聞けない組み合わせという、稀少かつ価値あるステージが2017年より毎年開催されている。第一線で活躍するたくさんのアーティストが鹿児島に集結し、熱いセッションを繰り広げる2日間となっている。

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:鹿児島ジャズフェスティバル HPより
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:髙田昌宏 2022年11月に競演したGV‘s とのライブ後
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
写真提供:髙田昌宏 2024年1月に開催したGV’sとのライブフライヤー

映像クリエイターとしてさまざまな業種の人たちと向き合う中で何を大事にしているのか。そこについても教えてくれました。

「以前まではクリエイティブというと自分の頭の中に思い浮かんだこと、面白いと思ったことを具象化させる作業のことだと思っていました。でも、ここ数年で感じたのは自分だけではなくて、自分や仲間たちの感覚を共有し合いながら一つのものを手がけていく。それがクリエィティブじゃないのかなと思うようになったんです。それって素敵なことですよね。」

その上で大事にしているのは「擦り合わせ」。相手の想いも汲み取りつつ、自身の感覚も妥協せず、お互いにとってのベストな道を見出し、カタチにしていく。そのスタイルで日々現場に臨んでいるのだとか。

「全ての現場でお互いの意見が合うわけではありませんが、そんな時こそ膝を突き合わせて語り合うことを大事にしています。想いに血が通い、意思があるからこそ、いいモノができると思うんです。ずっとライブでセッションしている感覚がします。」

それが結果として有機的な繋がりやカタチを生み出し、長期的な関わりとなっていくのではないか。髙田さんの言葉からはそのようなことを感じさせる熱を感じました。

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
栞日和youtubeより 旅するLuLuLu
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
東八重製茶youtubeより(演出・撮影:栞日和)

自分の価値を突き詰め、未来へ繋がる唯一無二な表現を

映像クリエイターとしてさまざまな現場を経験する中で、ある想いが芽生え始めたという田さん。それは5年後・10年後、さらにその先の未来を見据えたものでした。

「撮影に入らせていただく中で“もっとこういうふうに見せることはできないか?活用できないか?”と思うことが増えてきて…。そんな時に“僕の価値とは何なのか?”と考えたんです。」

「できること・やりたいことを照らし合わせていった結果、一緒にブランドを育てるパートナーになるのはどうか。ブランドを一から育てていける環境をつくっていくのはどうか。この2つの答えにたどり着きました。」

それらを通し、鹿児島の音楽業界や故郷でもある大隅半島に対して何かカタチとして還元できないか。そう模索している段階だといいます。

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
おおすみハナマルシェ フライヤー
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
おおすみハナマルシェ ステージ出演者と打ち合わせをする様子
【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん
ステージの様子を見守る様子

取材当日、鹿屋市で毎年開催されている「おおすみハナマルシェ」の運営・撮影スタッフとして従事していました。大隅半島中の事業者が一堂に会し、一つの場をカタチにする空間に携われることに喜びを感じているといいます。

「一人の力ってほんの小さなものですが、同じ方向を向き、想いがある人たちが集まる推進力を感じています。今は鹿児島市に拠点を移していますが、大隅半島を盛り上げていきたい気持ちはずっと変わりません。」

「故郷から離れようが離れまいが、人には必ず何かしら役割があります。だからこそ僕には僕のできることがあると思っています。リアルな関わりを大事にしているからこそ、まちや人の空気感を拾い、それを受け止めカタチにしていく。それが僕の役割だと認識しています。」

「軸を大事にしつつ、そこから枝分かれして表現できるものが色々あると思います。そこを常に意識しながら、これからも未来に繋げられる唯一無二なものを仲間たちとともにつくり続けていこうと思います。」

【鹿児島県鹿児島市】領域を超え、特別な日常の風景をつくり、唯一無二なものをのこす / 栞日和  髙田昌宏さん

屋号

栞日和

URL

https://masahirotakada.site/

備考

●栞日和  youtube

https://www.youtube.com/@shioribiyori/featured

●髙田昌宏インスタグラム

https://www.instagram.com/masahirottt/