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【連載】山形のぶどうとワインに恋焦がれ vol.1

連載

2024.02.15

2012年4月、東京から山形にUターン。「井の中の蛙になりたくない!」そんな思いで山形を出て、10年ぶりに山形に戻ってみると、そこは面白い人と面白いコトがたくさんある場所だった。そして、今、私はワイナリーの広報営業として、日々、ぶどうとワインと愉快な仲間たちに囲まれ生きている。そんな広報営業の畑とワイナリーの日常を、季節のお便りとしてお届けします。

以前は単なるお酒好き。
グレープリパブリックとの出会いは5年前

【連載】山形のぶどうとワインに恋焦がれ vol.1
自社畑と自社製造のワイン。ラベルは地域に関係のあるものでデザインされている

私は今、「GRAPEREPUBLIC(グレープリパブリック)」という山形県南陽市にあるワイナリーの広報と営業として働いている。話すと長くなるので割愛するが、この会社に出会ったのは、約5年前。途中一旦離れて昨年出戻ったという経緯もあり、今で約2年半この会社にお世話になっている。
 
以前の私はお酒大好き、でもワインもビールも日本酒も何でも好き!というパーティピーポー。その私が、毎朝、「夜何のワインを飲もうかなー」と目覚め際に考えるほど、ワインに恋してしまった。もはや完全にワイン沼にはまっている。ただ、それはワインが美味しい、楽しい、ということ以前に、ぶどう畑で働くみんなの地道な動きと真摯な姿勢を知り、美味しいぶどうを作ることこそ、美味しいワインを造るために一番大切なことであり、「ワインは農作物である」ということを知ったからである。そして、“ワイン”と“ぶどう”が世界各国の人とつながれる素晴らしいコミュニケーションツールということを実感したからこそ、ここまで飽きずに没頭しているんだと思う。
 
ここ“GRAPEREPUBLIC”には、日本全国、そして世界各国から山形のぶどうとワインを求めてたくさんの人々が訪れる。それほど、この地域と人、そしてワインとぶどうに魅力があるということなんだろう。ただ、私はまだまだその魅力が何なのか完全に理解しきれておらず、足を踏み入れ始めたばかりなので、ここで言語化をしながら、その魅力に迫っていきたい。

GRAPEREPUBLIC
(グレープリパブリック)とは

「GRAPEREPUBLIC(グレープリパブリック)」は、2017年に山形県南陽市に5つ目のワイナリーとして設立された。南陽市の風土をそのまま表現したい、そんな思いから、ぶどうを作る際も、ワインを造る際も極力余計なものは使わない。自然なつくりにこだわり、ぶどうそのままの味わいを感じられるように、クリーンでフレッシュなワイン造りをしている。

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国道13号線沿いにあるワイナリー。ワイナリーの裏にはぶどう畑が広がる。

「GRAPEREPUBLIC」とは日本語で「ぶどう共和国」。質の高い“ぶどう”と“ワイン”づくりを通じて、新規就農者や観光客を増やし、一大ワイン産地形成を目指している。もともとは代表の母方の実家がここ南陽でぶどう農家をしていたが、若い人が減り、耕作放棄地が増えるこの地に恩返ししたい、そんな想いとご縁があり、このワイナリーは設立された。

現在、グレープリパブリックでは、山形で多く採用されている棚仕立て(頭上にぶどうが実る)と海外で多く採用されている垣根畑(横にぶどうが実る)の2つの仕立て方でぶどうを育てている。栽培醸造スタッフは全部で6人在籍しており、1人以外全員が県外出身者という面白いメンバー。遠くは岡山から来ていて、平均30歳という若いメンバーで構成されている。醸造責任者は兵庫出身のため、関西弁がよく聞こえてくるのもうちのワイナリーの特徴の一つである(笑)。

南半球と北半球、
年に2回の収穫醸造経験

ニュージーランドのナチュラルワインメーカー「Don & Kindeli Wines(ドン・アンド・キンデリ)」のAlex Craighead(アレックス・クレイグヘッド)氏がアドバイザーであり、年に何度か来日し、ぶどう栽培や醸造におけるアドバイスをしてくれている。グレープリパブリックのスタッフも3月はニュージーランドに行き、1か月間、向こうの地で収穫醸造研修を受ける。ニュージーランドは南半球であり、日本と季節が逆であるため、3月が収穫醸造期間となる。そのため、日本にいると年に1回しか収穫醸造は経験できないが、南半球に3月に行くことで、年に2回収穫醸造ができ、人の2倍の経験ができる。

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アドバイザーのアレックス・クレイグヘッド氏と醸造責任者の矢野

1月の畑の様子/
今年は例年にないほどの雪の少なさ

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ワイナリー裏の自社畑。耕作放棄地だった土地を4年前に開墾し、垣根畑に。現在は、ガメイやメルロー、サンジョベーゼ、アルバリーニョ、ネッビオーロなど5種類の醸造用のぶどうを植えている。
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土壌分析用に穴を掘り、土を集めている。土の中のカルシウムや窒素、pH、マグネシウム量などを調査分析。

1月は、土壌分析をしたり、ぶどう棚の雪を落としたり、ぶどうの巻きツル取りをしたり。ぶどうの巻きツル取りとは、ワイヤーに残っているぶどうの巻きツルを地道に一つ一つ取っていくという作業。ぶどうについている病原菌が巻きツルや穂軸などに残っていると、雪が溶けて発芽したぶどうの芽も感染してしまう可能性があるため、巻きツルをしっかり取って、きれいにしておく。この時期の地道な作業が今年の秋のぶどうの質を左右する。

【連載】山形のぶどうとワインに恋焦がれ vol.1
ぶどうの巻きツル取り。取った巻きツルを畑に落とすと畑に病原菌が残る可能性があるため、全部集めて燃やす。

通常、この時期は雪が多いため、ワイナリー内でラベルを貼ったり、ぶどう棚の雪落としをしたりというのがメインのワークとなる。1月はぶどうにとって「休眠期」であるため、ぶどうたちが春にしっかりと発芽するように、今は見守っている状態。1月2月3月は雪で真っ白なぶどう畑だが、これから9月の収穫期まで、畑のぶどうたちはどんな表情の変化を見せてくれるのか、雪が溶けて、青々としてくる畑を待ちわびている今日この頃である。では、乞うご期待。(つづく)