real local 福井福井駅前浪漫飛行1「僕は駅前が好きだった」BON COFFEE山川哲司さん - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

福井駅前浪漫飛行1「僕は駅前が好きだった」BON COFFEE山川哲司さん

福井の連載

2021.03.08

福井駅前は、2024年の新幹線開通に向けて大きく姿を変えようとしています。連載「福井駅前浪漫飛行」では、福井駅前で日々を過ごし、店を営んできた人たちや、関わりを持つ人たちにお話しを伺いながら、このメタモルフォーゼを追いかけていきます。

20212月初旬。新店舗をオープンさせたBON COFFEE-BEANS STORE-の山川哲司さんを訪ねた。

福井駅前浪漫飛行1「僕は駅前が好きだった」BON COFFEE山川哲司さん
BON COFFEEの看板。

白い大きな看板が目印

福井駅から車を走らせること約10分。住宅地の間にBON COFFEEの黒いシンプルな文字の白い大きな看板が現れた。「見つけました?」と山川さんはなんだかうれしそうだ。「通り過ぎちゃう方が多いんですよね。車で来て、ばっちりこっち見てるけど、分からずに2周くらいする方もいらっしゃって」

コーヒー豆の焙煎をし終えたばかりで、店内には香ばしい匂いが広がる。レコードに針を落として、心地よいジャズが流れはじめた。

福井駅前浪漫飛行1「僕は駅前が好きだった」BON COFFEE山川哲司さん
焙煎を終えたばかりの豆。店内に良い香りが広がった。

 山川さんのBON COFFEEは、コーヒー豆のテイクアウト専門のお店だ。新店舗は実家のガレージを改装した。機関車のような焙煎機や大型冷蔵庫と一緒にレコードやプレイヤーが並ぶ。なんだか秘密基地みたいだ。シンプルな白い石と金属のテーブルにもこだわりを感じる。

BON COFFEEは高校の同級生と始めた

26歳の時にお店を出した。今年で13年目、もう中堅だ。

「僕たち、歴史だけ言うと意外と長いんです」と山川さん。はじめは高校の同級生と3人でコーヒー喫茶として出発した。それが福井駅前の古いアーケードが残る新栄商店街にある現在のBON COFFEE CAFEだ。3人だったのは初期だけ。途中で1人が抜け、ずっと2人で一緒にやってきたが、徐々に手狭になってきたことがきっかけで、山川さんが2015年に福井駅前の三角地帯に2号店を出店。これが分岐点となり、現在はそれぞれで自分の店を運営している。その時からbeans storeとして山川さんはテイクアウトと珈琲豆の販売をメインに移行した。

「名前は一緒だけど、それぞれが別々の裁量でやっています。よく聞かれるけど仲が悪くなったとかじゃなくて、長くコンビ活動してきたお笑いコンビが年を重ねてそれぞれピン活動して別の道を歩いているかんじです」

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焙煎機の奥の白い棚にレコードとプレイヤーが並ぶ。

2号店を福井駅前にした経緯を聞いた。「駅前の三角地帯って、路面で手ごろな大きさだったんですよ。自分らのお客さんって駅前に来る人たちだったから。その当時は駅前じゃないと嫌だったんです」

ちなみに2号店の場所は、以前は携帯電話の販売店、もっとさかのぼるとクレープ屋さんだったそうだ。駅前は常に時代と共に変化しているのだ。「思い出したけど、日中はずっと音楽が鳴っていたました。春は『春よ来い』が連続して流れていて。90年代のまま止まっていた部分もあったのかもしれませんね。これから駅前は、新しい感性の人が引っ張っていってくれると嬉しいです」

福井駅前のお客さん、老舗のお店はかっこいい

駅前のお客さんはシニア世代のお客さんがほとんどだった。「品のいい、僕より上の世代の方が多かったです。歩き、バス、電車で駅周辺に住んでいる方がいらっしゃっていました。駅前って昔はそういう場所だったんですよね。日曜日はお父さん背広着て、みんなこぎれいにしてデパートの上のレストランで食事をとるような。意識してそういう人たちに来てほしいなと思ってやっていました」

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コーヒー豆の横に山川さんの選んだ写真と紹介文が並ぶ。

「昔は名物おじさんやおばさんがいましたね。口うるさい人とか。それが無くなっていくのもちょっとなんだかなと思います」山川さんの、駅前の思い出は尽きない。

 昔ながらのお店についても話が進んだ。「駅前のお店だと、鉄板焼きの『なごとん』さんです。何が美味しいってホルモン焼きとかについてくる野菜炒め。もちろんお肉自体も美味しいんですけど、野菜がつやつやしているんです。あと鉄板がいつも綺麗でぴかぴか光っているのがすごいなあと思っていました」

「あとは居酒屋和楽路(わらじ)さんですね。本当によく通っていました。あそこのご夫婦は、駅前の時はうちの常連さんでもありましたね。お母さんが本当に上品でおきれいなんです。いつもシュッと背筋を伸ばして本読んでいらして。おっちゃんはあのあたりのドンなんですよ。和楽路で修業してお店を出された方たちがいらっしゃるんです。会話も面白くて。あの年代の人たち冗談の言い方って洒落ているというか、すごいです」

山川さんは目をきらきら輝かせて、先輩方へのリスペクトを語る。憧れの先輩たちについて語る山川さんは純粋な少年のまなざしをしていた。

新しいお店はこれからだ

福井駅前三角地帯のお店を閉め、新しいお店をオープンさせたのは202011月末。今は試行錯誤中だと言う。「今までの方も来てくれているけど、新しい方も少しずつ増やしていきたいです。webショップの方も本腰を入れていきたいと思います」

山川さん自身、20代の時に飲んだ一杯のコーヒーで、美味しいコーヒーは本当に美味しいと気づいた。だから山川さんの答えはシンプルだ。「コーヒー好きな人に来てほしいですね。それだけです」

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この日はノンカフェインを入れてもらったが、複雑で立体的な味でとても美味しかった。

インタビューの後、お店には常連さんがコーヒー豆を買いに来た。「可愛いから応援したくなっちゃうのよね」と常連の方。「もうほんとやめてくださいー」と照れる山川さんは確かに可愛かった。

淹れてくれたコーヒーはパンチの効いた、複雑な味がした。福井駅前で愛された山川さんのお店はまた新しい場所できっと愛され、ファンを増やしながら続いていくだろう。シャイな山川さんの笑顔とコーヒーに出会いに、みなさんにも足を運んでほしい。

「福井駅前浪漫飛行」アーカイブはこちらから。

屋号

BON COFFEE-BEANS STORE-

URL

https://boncoffee.net/

住所

918-8104 福井県福井市板垣5丁目1212

備考

営業時間12001800(土曜日10:001700。日曜定休)
0776-65-2323

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