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【山形 / 連載】穏やかな休日のための音楽6

山形の連載コラム

2021.06.20

「穏やかな休日のための音楽」では、毎回山形に縁のある南米のアーティストとそのアルバムを紹介しています。

ネオ・フォルクローレを聴き始めた頃、前回紹介したカルロス・アギーレとともに、当時シーンの中心として注目されたのがアカ・セカ・トリオというグループです。アカ・セカ・トリオは、2003年にデビュー。フアン・キンテーロ(vo., guitar、chorus)、アンドレス・ベエウサエルト(p., vo., chorus)、マリアーノ・カンテーロ(ds., perc., chorus)によるユニットです。伝統的なフォルクローレをベースに、ジャズやロック、ブラジル音楽などの影響の下、美しいハーモニーの中に躍動感と高揚感が感じられて、新鮮な音楽を求めていた音楽ファンには衝撃的でした。個人的に最初に聴いた彼らのアルバムは、3枚目の作品にあたる『Avenido』(試聴リンク)でした。その輝くような音楽は、率直に言ってブラジル音楽はこのままでは敵わないとすら思っていました。

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そのアカ・セカ・トリオですが、すでに数回来日しています。しかし残念ながらトリオで山形に来たことはまだありません。来県を熱望してはおりましたが、これだけ希望が叶わないのはきっと縁がないのだろうと思い、もはやトリオとしての招聘は諦めました。しかしこのトリオの中核と言って良いピアノのアンドレス・ベエウサエルトが2015年に、盟友でフルート奏者のファン・パブロ・ディ・レオーネ(vo., flute、chorus)と共にデュオで来日し、山形にも招聘することができました。

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日本公演のフライヤー。

Juan Pablo Di Leone & Andrés Beeuwsaertの動画 : Milonga Gris(来日時のものではありません)

以下は来日時に使用した、アンドレス・ベエウサエルト(ANDRÉS BEEUWSAERT)のプロフィール(若干改変)です。
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1978年、アルゼンチン・ブエノスアイレス州生まれの鍵盤奏者・作曲家。国立ラプラタ大学で作曲を学ぶ。1999年、アカ・セカ・トリオを結成。その優れた音楽性、高い演奏性と対位法を駆使したヴォーカル・ワークによって、現代アルゼンチン音楽を代表するグループとしての人気と評価を確立した。ソロ名義では、2009年にファースト・アルバム『Dos Rios』、2012年にセカンド・アルバム『Cruces』をリリース。2010年から2012年にかけて、現代ブラジル随一の実力派女性歌手、タチアナ・パーハとデュオとして活動。鍵盤奏者として、世界的マルチ奏者ペドロ・アスナールのグループに2004年より参加。南米およびヨーロッパ・ツアーに参加し、10カ国以上を回る。その他、チャーリー・ガルシア、モノ・フォンタナ等のライヴや録音に参加したほか、イヴァン・リンス、アントニオ・ロウレイロ、ウーゴ・ファットルーソなど海外のトップ・アーティストとの共演も多い。ソロ作ならびにアカ・セカ・トリオの諸作は『クワイエット・コーナー』『アルゼンチン音楽手帖』などのディスクガイド本、複数のコンピレーションCDで取り上げられるなど、南米音楽の枠を超えて注目を集めている。
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このように、非常に高い評価を受けているアンドレス・ベエウサエルトですが、音響を使わずに生音で開催された山形でのライブも期待を上回る素晴らしい演奏でした。しかしステージ外での彼らは、実に無邪気にふざけあっているばかりで、その様子はまるで中学生のようでした。

【山形 / 連載】穏やかな休日のための音楽6

【山形 / 連載】穏やかな休日のための音楽6

今回紹介するのは彼のセカンド・アルバム、『Cruces』という作品です。アンドレスのダイナミックでありながら隅々まで繊細な美意識に貫かれたピアノと楽曲は、自然に目の前に雄大な景色がイメージされる様です。劇的でいて清々しく丹念な演奏に、陶然としないものは少ないでしょう。自身のオリジナルを中心に、国境や時代を超えた選曲とその音楽は、最早一定のジャンルとして語られるべきではないユニバーサルで普遍性が感じられる美しい名盤です。穏やかな休日に相応しい音楽だと思います。ぜひ晴れた日に聴いてみて頂きたいアルバムです。

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