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山形移住者インタビュー/マイソール山形主宰・松村多恵さん「探求心は人生のステージをも超える」

移住者の声

2021.10.29

#山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストは松村多恵さん。山形では数少ないアシュタンガヨガのスタジオ「マイソール山形」を主宰している。東京と山形で、8年間の2拠点生活を経て山形に移住し、かれこれ20年になる。230代の頃は美術家として活動していた。

山形移住者インタビュー/マイソール山形主宰・松村多恵さん「探求心は人生のステージをも超える」
自宅併設のスタジオは、定員5名の少人数制でアットホームな雰囲気

アーティストという人間は、常に自分自身と真正面から向き合っている。そしてその感性に引っかかった興味対象を追求し、深め、そして表現する。

移住やスタジオ設立までの経緯、ヨガの魅力などを伺った今回のインタビュー。お話を通じ、松村さんの中に在る確固たる作家性のようなものを感じずにはいられなかった。

山形移住者インタビュー/マイソール山形主宰・松村多恵さん「探求心は人生のステージをも超える」

スタジオ名の「マイソール」とは、アシュタンガヨガの伝統的な練習法のひとつ。マイソール山形では、その練習法に則り、週に5日、朝にクラスを開いている。生徒はスタジオが開いている間、好きな時間にやってきてそれぞれ自主的に練習に取り組む。

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動く瞑想とも言われるアシュタンガヨガ。99% Practice 1% Theory (99%の練習と1%の理論) と言われ、松村さんも毎日の練習を欠かさない

アシュタンガヨガの大きな特徴は、ポーズの順番が決まっていること。先生と生徒が合わせて一緒にポーズをとってくのではなく、基本は自主練習ベース。指導者は生徒それぞれを個別に見てサポートし、レベルに見合ったら次のポーズを与える。

運動量が多くハードなイメージもあるが、一人ひとりレベルに合わせて適切な指導がされるため、身体能力や性別、年齢に関係なく、実は初心者でも始めやすい。他の人と比べずに自分と向きあいたい、一人で黙々とやりたいという人にはぴったりのヨガだ。

山形移住者インタビュー/マイソール山形主宰・松村多恵さん「探求心は人生のステージをも超える」

「ここはもともとアトリエとして使っていた場所だったんです。子供たちに美術を教える教室をやっていた時期もあって」と教えてくれたのは、マイソール山形・主宰の松村多恵さん。壁には額縁や子供が作った作品の跡がうっすらと残っていた。

松村さんは兵庫出身。京都の美大を卒業し、230代は現代美術家として、京都と東京で活動していた。

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松村さんによる、幻想・光と影が美しい立体作品。原美術館、水戸芸術館などでグループ展や個展をひらくなど精力的に活動していた(写真提供:松村さん)

約8年間の拠点生活を経て山形へ移住

山形に行くきっかけになったのは、ご主人の仕事が山形に決まったことだった。しかし、最初は縁もゆかりもない土地にいきなり住む気にはなれず、東京と山形での2拠点での生活を始めた。それから約8年間の2拠点生活を経て、山形への移住を決断。決め手は妊娠だった。

「東京での子育てはどうしてもイメージできませんでした」

はじめは借家に住んでいたが、子供が3歳のときにマイホームを建てた。

関西にはない、山形のよいところ

山形は大地の力が強い、と松村さんは言う。これまで育った地と大きく違う、はっきりとした季節感。とくに旬の新鮮な食べ物からは、土地の力と季節をダイレクトに感じている。

新鮮な野菜をご近所さんが分けてくれ、自分もなにかを作ってお返しする。そんな物々交換が成り立っていることも新鮮だった。温泉が近くて安いところもいいという。

「山形の土地は五感に刺激を与えるという意味ではすごくいいところだと思います。雪で日照時間が少なくてグレーなときもあれば、大雪が降ったとあとでスカッと晴れたりする。初雪が降った後、すごく静かになるでしょ。すごく浄化される感じがあります」

子育ては、選択肢が少ない。だから迷いがない

松村さんの子育ては放任主義。20歳になる息子には、力強く育ってほしいと願っている。

「山形は、東京に比べて習い事や学校選びの選択肢が少ないのが、私にとっては良かったかも。東京だったらあり過ぎるがゆえに、しんどかったと思います。子育てはお金や手間や時間を上限なくかけられますから」

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気質の違う故郷・関西と東北

関西と東北で正反対とよく言われるのが、人の気質。東北はおっとりひかえめ、関西は陽気でおしゃべり。

「東北の人は気持ちをあまり表に出さないですよね。でも、何も持っていないかっていうとそういうわけでもなくて。そこを見つけるのが難しい。でも最近は関西に帰ると『そこまで言うんだ』って思うようにもなりました。『そこまで入ってこなくていいのに!』ってね(笑)」

山形の空気が、松村さんを少しずつ着実に変化させているようだ。

移住して一番のインパクトは気候だった。故郷・兵庫は雪が降らない。

「最初の12年は、冬が本当にきつかったですね。山形は冬に日照時間が短くなるし雪が降るでしょ。地面も壁も空も全部白い。そんなメリハリがない日がずっと続く。子供もまだ小さくて、友達もいなかったので気持ち的にやられましたね」

慣れない土地でのはじめての子育ては、想像を超える孤独と苦労だっただろう。そんなときに出会ったのが、アシュタンガヨガだった。

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ひとりで黙々と取り組めるアシュタンガヨガは、とくにクリエイターに好まれるそう(写真提供:松村さん)

練習の中で得た一人の静かな時間

ヨガを始めたのは、子育てによる体力の低下やストレスを感じていた頃。アシュタンガヨガの練習する時間の中に、美術家として創作していた頃にあたりまえにあった「一人の静かな集中を持つ時間」と同じものを感じ、その魅力と奥深さに引き込まれていった。

「子育てでは、誰かのために24時間生活しているストレスがあります。自分のアイデンティティが◯◯ちゃんのお母さんという感じで一日を過ごす。そこを一度リセットできるのがヨガ。アシュタンガヨガの練習があって本当に良かったと思います」

だれでもいろんな私を持っている。母の私、妻の私、会社員の私。一人で集中する時間を持つことで、自分を客観視できる時間。育児中の母だけではなく、情報に溢れる現代では誰しもにそんな時間が必要なのかもしれない。

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写真提供:松村さん

指導者になること

指導者になるまでには、それほど時間はかからなかった。ヨガ指導者が少ない山形という土地柄、ほかの指導者の代行からはじめ、週に数回のペースからキャリアを積んでいった。

アシュタンガヨガを始めて12年経つと、「もっと深めたい」という気持ちが湧いた。東京の指導者の元へ通いながら、更に実践を深めた。しかし子供が小さかったこもとあり通えたのは年に数回程度。

「それでもやっていくことができたのは、先生に依存せず自分で練習ができるアシュタンガヨガだったからだと思います」

2017年に「マイソール山形」を立ち上げ、山形駅の近くのダンススタジオでマイソールクラスをはじめた。松村さんと同じくアシュタンガヨガの奥深さに引き込まれ、もっと深めたいと県外からわざわざやってくる人も多かった。

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山形駅近くのダンススタジオを借りてクラスを開いていた頃(写真提供:松村さん)

そして2020年、コロナ禍の緊急事態宣言。マイソール山形もスタジオを閉めるしかなかった。

「ちょうど自宅のスペースをスタジオにしようと考えていたので、コロナがきかっけというよりは、タイミングがちょうど合ったというほうが正しいかもしれません」

アトリエだった自宅のスペースを改装し、こうして現在に続く新たな「マイソール山形」がはじまった。

コロナ禍でのアシュタンガヨガ

「アシュタンガヨガはシークエンス(順序)を覚えて、それを習慣にしたら運動不足になることはないし、深い呼吸をするとストレスから解放されます。コロナ禍で改めて、アシュタンガヨガはすごくいい練習法だと思いました。これを続けてて本当に良かったと改めて実感しています」

アシュタンガヨガの山形での認知度はまだまだ低い。もっともっと広がればというのが松村さんの願いだ。

山形移住者インタビュー/マイソール山形主宰・松村多恵さん「探求心は人生のステージをも超える」
「山形ビエンナーレ2021」では、オンラインでアシュタンガヨガのクラスを開催(写真提供:松村さん)

もっと深く知りたくなる

ヨガ以外に「古武道」も、山形であらたに始めたことのひとつ。

「やってみたらすごくおもしろいなと思って、流派の道場がある神奈川に習いに行ってます。ヨガもそうなんだけど、やるともっと深く知りたくなるんです」

子育てが一段落したら実行するつもりだったインド行きはコロナで断念。だから今はコロナが落ち着いたらインドに勉強に行くことが夢だ。

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その心に絶え間なく湧いてくる「もっと深く知りたい」というエネルギーは、これからも軽々と、松村さんをあらゆる場所に運んでいくに違いない。環境や場所、人生のステージという制限をも超えて。

マイソール山形 https://mysoreyamagata.com/
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取材・文:高村陽子
写真:菊地翼