鎌倉市御成町|「コマヤ靴店」 暮らしの足元を支える靴をつくり続けて

鎌倉駅西口から徒歩3分の御成町商店街にある1939年創業の「コマヤ靴店」。靴の販売だけでなく、フルオーダーの靴づくりにも力を入れています。誰よりも靴に熱くマニアックな3代目の神座健次(じんざけんじ)さんにお話を伺いました。

創業当時の屋号は「入舟」だったそうですが、初代の出身が山梨県の黒駒村(現在は笛吹市)ということもあり、戦後に「コマヤ」という屋号で再スタートしました。初代の時には靴ではなく下駄などの履き物がメインの総合問屋でしたが、2代目の時に高度経済成長が訪れて、当時はまだ珍しかったインポート靴の独自輸入による販売を開始。コロナ禍で外出が減ってしまった時期には、カジュアルな靴や作家モノを取り入れるなど、時代に併せてラインナップを見直してきました。3代目の健次さんになった現在は、インポート靴に加えて品質の高い国産の靴、メーカーと相談しながら製造しているオリジナルブランドの「鎌倉靴」がメインとなっています。時代は変わっても常連のミセス層を中心に地元の方々に愛され続けています。


健次さんが物心ついた時から身近にあった靴。小さい頃からモノを作ることが好きだったこともあり、社会人として働き始めたのは製造工場でした。その後、イタリアのフィレンツェの工房で約5年間の靴づくりの修行を経て店を継ぐことになりました。健次さんの代から「IL PULEDRO(イル プレドロ)」という紳士オーダー靴ブランドを立ち上げ、2階の工房兼ギャラリーで健次さん自らが腕を振るって毎日靴づくりに励んでいます。

「IL PULEDRO」にはパターンオーダーとフルオーダーの2種類あります。パターンオーダーはデザインや素材、形、サイズを決まった種類の中から選んでもらい工場で製造するという流れ。フルオーダーは完全にゼロスタートでお客様の要望をじっくりと聞くところからスタートします。相談から納品までは約1年と聞いて少し驚きましたが、足の形やサイズ、歩き方の癖や履き心地など、一人一人に合わせて丁寧な打合せを繰り返し、ようやく出来上がった木型へ今度は革を被せながら時間をかけて立体的な形に仕上げていく、その途方もない工程を想像すると1年という期間も納得できます。そんな想いを込めて作った靴をお客様へお渡しする瞬間は、嬉しさと共に手元から離れてしまう寂しさも感じるそうです。

お客様の中には珍しい製法や素材を使った靴をオーダーをされる方もいて、ジビエレザーの革靴を作ったこともあるんだとか。これは全国で害獣として駆除された獣を、肉だけでなく皮革まであますことなく活用していこうという取組みなんだそうです。飼育された牛などの皮革と比べると、野生の獣は生きた証である無数の傷や色むらがあり、見た目だけでなく強度も落ちるので、途中で破れてしまわないかとヒヤヒヤしていたそうです。それでも獣の生き様がありのままに表現されるジビエレザーを扱えたことは貴重な経験になりましたし、オーダーで挑戦させてもらえることは嬉しいことですと語ってくれました。

最後に靴の魅力について語ってもらいました。 「当たり前のことですが、靴は雨の日も雪の日も暑い日も、一番過酷な状況下でいつも足元を支えてくれています。またファッションの中では目立ちにくいかもしれないけれど、靴が決まっていないと全体のバランスも悪くなる。そう考えると、縁の下の力持ちであり、身だしなみの最後の要でもある。靴って踏まれながら本当に頑張ってくれてるなぁと思います。そして、靴作りの魅力は手のひらで完成することです。革を裁断して縫製して、よく叩いて伸ばして馴染ませて時間をかけて完成に近づいていく、その成長を手のひらで見届けることが出来るのは面白いし、靴作りならではの魅力だと思います。靴職人も高齢化が進んできているし、靴を作る道具もほとんど製造されていない状況ですが、これからも一足一足丁寧にお客様へお届けしていきます。」

【文:鎌倉R不動産・上田拓史/写真:フォトグラファー・山中菜摘】
| 名称 | コマヤ靴店 |
|---|---|
| 業種 | 靴店 |
| URL | |
| 住所 | 鎌倉市御成町5-39 |
| TEL | 0467-22-4300 |
| 営業時間 | 10:00〜18:30 |
| アクセス | JR横須賀線・江ノ島電鉄線「鎌倉」駅徒歩3分 |













