鎌倉御成町|いつの時代も目の前のお客様を大切に パティスリーチモト

鎌倉駅西口から御成通りを歩いて3分ほどの場所に店を構える「パティスリーチモト」。今年で創業から98年をむかえます。実は、約100年の時代の中で色んな変遷を経て現在にいたります。その歴史と商品のこだわりについて、オーナーの奥様の細内祥子さんに話をお聞きしました。

店が創業したのは1927年。長谷寺の近くで和菓子屋の「ちもとや」という屋号でスタートしました。屋号は軽井沢の「ちもと屋」という和菓子屋から暖簾分けしたのが由来なのではないかということで、今でも箱根や都立大学駅には「ちもと」という暖簾分けの和菓子屋があり人気店となっています。御成商店街に移転してきたのが1932年。当時は鎌倉駅から2駅の大船駅の近くに松竹映画撮影所があり、甘味を求めて多くの俳優が訪れていたのだとか。1960年代に一度店を閉めて賃貸に出していたこともあるそうですが、1988年に2代目(現オーナーの父)が洋菓子店として再スタート、その後3代目の現オーナーが引き継いで、長谷にバウムクーヘンの店「輪心(わこ)」もオープンさせました。現在は「パティスリーチモト」は祥子さん、「輪心」にはオーナーがそれぞれ店に立っています。

賃貸に出していた時に入居していたのは、鎌倉駅西口に現在も店を構える本屋「たらば書房」とスポーツ用品店の「ボストン」(現在閉店)。ボストンは周辺の学校指定の体操服を販売していたこともあり、当時子供だった50〜60代の方はパティスリーよりもボストンで覚えている方が多いそうです。パティスリーとして営業してからは、鎌倉界隈のミセスが御成商店街のブティックで買い物をした帰りにお茶する喫茶店として、現在は、外国の方や若い観光客の方もレトロな雰囲気につられて入ってきてくれるそう。和菓子屋の頃を知る世代もあれば、ボストンを懐かしむ世代、そして買い物帰りの喫茶として、中身は変わってもそれぞれの世代に愛されてきたことが素敵だと思いました。

今のオーナーの代で変えたのがお菓子づくりにかかせない砂糖。全てのお菓子やケーキには本和香糖(ほんわかとう)が入っています。本和香糖は沖縄のさとうきびを原料にして、ミネラル分や風味を残した含蜜糖で、旨みとやさしい甘さが特徴なんだとか。ただ精製されていないからなのか、同じ分量、同じ工程で作っても日によってケーキが膨らまなかったり、なんとなく同じ味が出ないなど不安定で難しい部分も。それでも、精製された白砂糖には出せないほんのりした甘さや、風味に惚れ込んで本和香糖を使い続けているそうです。

看板商品の「バウムクーヘン」や丸型のフィナンシェ「鎌倉っ子」、本和香糖をたっぷり使った「ほんわかロール」など美味しそうなスイーツが並ぶ中、気になる商品を見つけました。その名も「くるみ山」。食べてみると中にぎっしりと詰まった胡桃の香ばしさとキャラメルのほのかな甘さ、外側のクッキー生地がサクサクしていて、つい2個3個と手が出てしまう美味しさでした。聞けば2代目から引き継いだ時からレシピは全く変えていないそうです(砂糖だけ本和香糖に変えています)。理由はいたってシンプル、「なぜなら美味しいから」。スイスの伝統的な焼き菓子「エンガディーヌ」にアレンジを加えた「くるみ山」は、常連さんもよく買ってくださるそう。「メディアに出て色んな人にたくさん買ってもらうよりも、常連さんが友達に食べてほしいから勧める、それくらいがちょうどいいんです」と答えてくれました。


最後に創業100年に向けての思いを教えてもらいました。
「1930年代に撮られた店のアルバムをたまたま発見した時、こんな甘味処を復活させたいと思いました。ただ、いつの間にか昭和レトロブームが訪れて、今の店のテイストが既に懐かしくて居心地が良いと感じてくれているのなら、このままでも良いのかなと思うようになりました。不思議な話ですが、嫁いできてからいつもご先祖様に守られてる感じがして、何度もピンチを救ってもらいました。このまま変わらずにやっていけば良いと背中を押してもらってるような気もします。なので、何か特別なことをするのではなく、これからも日々、目の前のお客様を大切にして永く続けていきたいと思います。」

【文:鎌倉R不動産・上田拓史/写真:フォトグラファー・山中菜摘】
| 名称 | パティスリーチモト |
|---|---|
| 業種 | パティスリー |
| 住所 | 鎌倉市御成町2-15 |
| TEL | 0467-22-9082 |
| 営業時間 | 11時〜18時30分 |
| 定休日 | 火曜日 |
| アクセス | JR横須賀線・江ノ島電鉄線「鎌倉」駅徒歩2分 |














