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金沢ガイド1 いまが旬のお勧めの金沢 冬の味覚と建築展と街歩き

2014.12.10

この冬、金沢に行かれる人のために。金沢R不動産のメンバーによるローカルガイド「金沢の楽しみ」をお届けします。

金沢ガイド1 いまが旬のお勧めの金沢 冬の味覚と建築展と街歩き
いまが旬の香箱蟹(こうばこがに)と開館10周年を迎えた金沢21世紀美術館(右写真提供:金沢市)

金沢を巡るには、晩秋から春がお勧めだ。最も金沢らしさが体感できる季節だし、何よりも食べ物が美味しい時期だからだ。

来春3月に東京からの北陸新幹線が開通するけれど、それを待っていては遅い。観光客でごった返す一足先に、是非冬の金沢の食を楽しんでもらいたい。

日本酒との相性も素晴らしい「香箱蟹」

冬の金沢といえば、寒ブリ、鱈、甘海老などあらゆる海産物が美味しいけど、いまの旬は香箱蟹だろう。ズワイガニ(最近は加能蟹とブランド命名された)の雌のことで、一人一杯がちょうど良い小振りなサイズは、味が凝縮されている感じで、地元では人気が高い。深い甘みと香りのある蟹身、プチプチとした食感がたまらない外子(卵)、コクと濃厚な旨みが絶品の内子(未熟性卵)と蟹味噌は、日本酒との相性も素晴らしい。初物の香箱を食したことが挨拶代わりの会話になったりするほど、冬の風物詩として愛されている。旬の食材が老若男女問わずに日常の話題になるほど、食文化が生活に根ざしているのが金沢なのである。
蟹をいただくにもいろいろなスタイルがあって、金沢の台所「近江町市場」で買うもよし、寿司屋や和食料理店、おでん屋、居酒屋、フレンチやイタリアンレストランなどで食べ比べるということもできてしまう。

そこで、個人的なお勧めをいくつかご紹介。
蟹のお刺身なら、美味しい店が連なる飲食店街木倉町「旬房さかい」。カウンター中心の割烹料理で、雑誌などにも掲載しないお店なのでここだけのご紹介です。

  旬房さかい 金沢市木倉町6-8‎  076-221-3911

金沢と言えば寿司! 数ある寿司屋の中でも強力なツートップはこちら。

  乙女寿司 金沢市木倉町4-10 076-231-7447
  太平寿司 野々市市太平寺1-164 076-248-5131

そして、意外とおでん屋の充実する金沢で、おでんネタ「蟹面」が名物のお店はこちら。

  高砂 金沢市片町1-3-29 076-231-1018

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刺身、おでんの具、ミルフィーユの様な創作寿司まで様々なスタイルで楽しむ金沢の蟹。地元産の香箱蟹は、年末までの限定なので、お早めに!

この冬、見どころな建築展

そして、今シーズンは金沢で建築を楽しむ素晴らしい機会が訪れていることをお伝えしておきたい。
まさにいま、金沢では大きな建築展が三つ開催されていて、冬の味覚と同時に楽しむ格好の機会となっている。

まず、開館10周年を迎えた金沢21世紀美術館(設計:SANAA/妹島和世・西沢立衛)では、「ジャパンアーキテクツ1945-2010」と「ジャパンアーキテクツ3.11以後の建築」が同時開催中だ。

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ジャパンアーキテクツ(撮影:木奥惠三 写真提供:金沢21世紀美術館)

「ジャパンアーキテクツ1945-2010」は、フランスのポンピドゥーセンター副館長によるキュレーションで、約300点もの建築作品を通して戦後の日本建築を読み直す壮大な展覧会だ。建築という分野をアートとして扱うことが稀な日本では貴重な企画だ。戦争という破壊の後に、どのように日本の建築が世界で注目されるに至ったのか、作品を通して理解できる展覧会となっている。

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3.11以後の建築(撮影:木奥惠三 写真提供:金沢21世紀美術館)

もう一つの「ジャパンアーキテクツ3.11以後の建築」は、建築評論家の五十嵐太郎、コミュニティーデザイナーの山崎 亮という異色の二人のキュレーションによる建築家25組の取り組みを紹介する展覧会だ。こちらは東日本大震災という破壊を経て、社会の変化に呼応するように拡張する建築家の活動そのものを展示している。ちなみにこの展覧会では、東京R不動産や僕も展示しているので是非ご覧になってほしい。

日本建築のこれまでとこれからを対比的に示している二つの展覧会、合わせて観ることをお勧めしたい。

旧紡績工場倉庫群を改修した「金沢市民芸術村」

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金沢市民芸術村ドラマ工房内の展示風景 撮影:北嶋俊治(写真提供:金沢市)

さらに、金沢市民芸術村(設計:水野一郎)では、金沢が育んだ建築家親子「谷口吉郎・谷口吉生」展が開催されている。著名な「ホテルオークラ」「土門拳記念館」「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」「ニューヨーク近代美術館新館」のほか、親子合作の「金沢市立玉川図書館」や金沢市内の最新作「鈴木大拙館」など、洗練されたモダニズム建築が紹介される貴重な機会だ。ちなみに会場となる市民芸術村は、レンガ造工場群をリノベーションした文化施設で、建築分野で初めてグッドデザイン賞大賞を受賞した事例でもあるのでこちらも見学必須。

「谷口吉郎・谷口吉生」展は、12月21日迄の開催となっている。

おすすめのルート

これらの展覧会を観ると同時に、金沢の中心部を歩きながら建築巡りをすると歴史と現代が交錯する金沢が感じられるいい機会となるに違いない。
具体的には、こんなルートがお勧めだ。

1.近江町市場で金沢の旬の食材を物色してから、腹ごしらえ。

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近江町市場

2.北國銀行武蔵が辻支店ビル(設計:村野藤吾)3階のアートスペース「金沢アートグミ」で、金沢のアート事情を捉える。

3.金沢市立玉川図書館(設計:谷口吉郎・吉生)で、明治時代の煉瓦倉庫を増築した図書館で、赤錆び鉄板とガラスの増築部分と赤煉瓦の既存部分のコラボレーションが堪能できる。

4.金沢R不動産で人気を博した物件「パノラマチヤ」へ。まったく違う佇まいの古本屋、ブラッスリーカフェ、居酒屋が同居する不思議な建物だ。

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パノラマチヤ

5.金沢を代表する鞍月用水の流れが心地良いせせらぎ通り。脇道には武家屋敷跡が江戸時代の姿を残している。途中には書籍『全国のR不動産』にも登場いただいた輸入家具・雑貨のお店「Gloini(グロイニ)」さんも。

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鞍月用水の流れるせせらぎ通り(写真提供:金沢市)

6.商業の中心地、香林坊交差点から広坂通りへ。赤煉瓦の学校だった「石川四高記念文化交流館」、大正時代に立てられた旧県庁「しいのき迎賓館」、その背後には金沢城趾の石垣がそびえるのが垣間見える。

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石川四高記念文化交流館(写真提供:金沢市)

7.金沢21世紀美術館で、斬新な美術館建築と同時に、二つの建築展をじっくりと鑑賞。

8.兼六園に隣接する本多の森を眺めながら「鈴木大拙館」(設計:谷口吉生)へ。静かな時間が流れる端正な空間で夕暮れを迎えるのがいいだろう。

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鈴木大拙館

9.一日の締めくくりは、金沢随一の繁華街の路地裏「新天地飲食街」や「金沢中央美食街」で昭和の風情を楽しむもよし、浅野川沿いの主計町茶屋街「嗜季」へ脚をのばして三味線と川のせせらぎを聞きながら懐石料理というのも金沢らしい。

レンタサイクル「まちのり」と『カナザワケンチクサンポ』

最後に建築巡りや街歩きに便利なツールを二つ紹介しよう。

ひとつは、金沢市が提供する金沢レンタサイクル「まちのり」。市内中心部の約20箇所のポートのどこで借りることも返すこともできる公共シェアサイクルなので、ご紹介した欲張りなルート巡りもスムーズになるだろう。

もうひとつは、金沢市と金沢工業大学が発行する『カナザワケンチクサンポvol.1vol.2』だ。僕がお勧めしたルートも掲載されているし、新旧を織り交ぜた建築、観光ガイドには紹介されないような商店街もあったりして、金沢というまちの新しい楽しみが増えるにちがいない。

金沢の町巡りでは、思わぬところで金沢R不動産が関わってきた店舗や物件などにも出会えると思う。そんな出会いも含めて、是非ともじっくりと金沢の奥行きを体験してもらいたい。

(小津誠一/金沢R不動産

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「ジャパンアーキテクツ3.11以後の建築」
2014年11月1日〜2015年5月10日
金沢21世紀美術館

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「谷口吉郎・谷口吉生展」
2014年11月15日〜12月21日
金沢市民芸術村

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カナザワケンチクサンポ vol.1 [PDF]
カナザワケンチクサンポ vol.2 [PDF]
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