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山形県天童市・移住者インタビュー/濱田拓実さん「暮らしも仕事もすべての条件が合致しました」

移住者の声

2021.12.16

2020年秋、天童市に移住された濱田拓実さんは、天童市の地域おこし協力隊として獣害対策の仕事をしています。聞き慣れないその「獣害対策の仕事」とはどんなものなのか。なぜやりたいと思ったのか。濱田さんのお話をお聞きしました。

自然にまつわる仕事がしたい
それを叶えてくれたのが天童市

山形県天童市・移住者インタビュー/濱田拓実さん「暮らしも仕事もすべての条件が合致しました」
濱田さんが獣害対策の管理をしている果樹園周辺にて。

僕は、埼玉県久喜市出身です。地元の高校を卒業後「自然にまつわる仕事がしたい」と思って、東京都内にある環境系の専門学校に入学。そこでは環境保全や生態学を学びました。座学が中心でしたが外に出て動物の足跡を追いかけたり、鳥の観察をしたり屋外での授業も多かったです。

自然を好きになった明確な理由はわからないのですが、子供の頃から外で遊ぶのが好きだったんですよね。とくに45歳のときに初めて自転車を買ってもらってからは、どんどん好きが増していって。自転車に乗って隣町、さらにその隣町まで遠出をしていました。親にはよく叱られていましたが(笑)、その頃から意識的に“旅”が好きになっていましたね。

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「話すのは苦手」という濱田さん。ハニカミながらも思いを伝えてくれた。

卒業後は、学んだことを活かせる仕事ができればと思っていたのですが、一旦諦めまして…。OBの方の繋がりで、飛騨高山にある加工肉専門店に就職し、ハムやソーセージの製造に携わりました。

2年勤めたときに昔から秘めてきた、旅をしたいって気持ちが抑えられなくなって退職。2017年の7月末から自転車で日本一周をスタートさせました。愛車は高校のときにお小遣いを貯めて買ったルイガノのクロスバイク。自転車は止まりたいときに止まれて、走りたいときに走れる。歩きだと景色が変わるのがスローペースすぎるし、クルマだと速すぎます。自分にとってちょうどいいペースが自転車だったんですね。

テントと寝袋を持って埼玉の自宅から北上。北海道に着いたときはに8月になっていました。そこから2か月ぐらいかけて北海道を一周したあとに南下。途中、休憩期間も挟んで約2年半かけて日本一周を完走。たくさんいい街を見てきたこともあって、その後のことを考えたときに地方移住が思い浮かびました。

そんな中2020年1月に東京で「JOIN移住フェスタ」があることを知って、行ってみたんです。旅で訪れた街がいくつか出展していて、そのひとつが天童市でした。話を聞いてみると地域おこし協力隊として獣害対策の仕事を募集しているというんです。自然にまつわる仕事がしたいと思っていた僕にとっては、とてもありがたいお話。そういう仕事って募集があるものではないし、そもそも自然にまつわる仕事って数が少ないんですよ。だから「これだ」って思いがありました。

もうひとつ天童市に決めた理由は、僕が育った埼玉県久喜市に似ていたこと。ベットタウン的な存在であり、商業施設も病院も充実している。生活基盤が地元とよく似ているんですよ。天童市にはプラスアルファで大好きな山や森も近くにあります。雪が降る地域に住みたい気持ちもあったので、すべての条件が合致したんです。

農家の作物を守るために
日々動物たちと戦う

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濱田さんの仕事道具。のこぎり、熊よけの鈴と催涙スプレー、サングラスなど。

獣害対策は、農家さんの畑や果樹園にイノシシ、サル、クマなどが入れないように対策をするのが仕事です。具体的には、緩衝帯など動物の住処になりそうな場所の草を刈って見晴らしをよくし、動物が近づきにくい環境を作っています。電気柵も立てていますが、被害が多い地域はジャングルのように草が生えてしまっていて、動物が近くまで来やすくなっているんですね。この夏はひたすらその草刈りをしていました。

作物を食べられてしまうことも問題なのですが、それ以外にイノシシによる土の掘り返しからもかなりの被害を受けています。木の下の土を掘り返されると、地面がボコボコになってしまって草刈り機が通れなくなる。そうすると管理がしにくくなり、草が生えて荒れてしまいます。だから動物たちを畑や果樹園に近寄れない状態にすることが大事なんですね。今年は草を刈った場所と、ボウボウの場所の両方にカメラを仕掛けて、イノシシがどちらを多く通ったか検証を行ないました。今の作業の結果が出るのは数年後なので、まだ明確な効果はわかりません。緩衝帯整備の担当は僕しかいないから作業も少しずつしか進まなくて、まだまだ小さな一歩ですが、今後いい方向にいくことを期待しています。

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作業はすべてひとりで行なっている。

コロナ禍の影響で天童市に来るタイミングがズレてしまったこともあって、その期間に罠猟の免許を取得しました。11月から猟期が始まり、罠の仕掛けは始めていて冬はその罠を見に行くことも仕事になります。

まだ動物を捕まえたことはないのですが、イノシシを捕まえたときには自分でさばいて肉にするつもりです。僕の実家は精肉店なので、幼い頃から肉をさばくところを間近で見てきました。加工肉専門店で働いていたノウハウもあるので、それも活かせそうです。

若い人もフラッと
移住を体験してほしい

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濱田さんの足元もジャングルのように草がボウボウだったそう。

天童市では今後も地域おこし協力隊の募集を予定しているので、若い方もフラッと移住してみたらいいんじゃないかなって思うんです。田舎の大学を選んでみるのもいいかもしれないですよね。都会にいたとき、たまに友達と会うと愚痴しか聞かないってこともありました。混んでいる電車、仕事、生活自体に息苦しさを感じている人が多いのではないかな。僕のように埼玉や千葉などの都市近郊に住んでいる人なら、地方に移住しても違和感なく溶け込めるように思います。仕事のことが心配なら、まずは地域おこし協力隊に応募してみるのもいいですしね。

僕は専門学校では自然のことを学び、精肉、旅と、好きなことをしてふらふら生きてきましたが、それらの経験すべてを活かせる場所にたどり着いた感じがあります。若いうちなら好きなものにつられて人生のレールを外れても、案外なんとか収まるのではないでしょうか。地域おこし協力隊のように、それを後押しする社会の流れも生まれつつあると思いますしね。

移住して1年。まだわからないことも多いですが、好きな仕事ができてすごく楽しんでいます。強いて言うなら、家の近所にお酒が飲めるお店があるともっといいんですけどね。山形はおいしいお酒もたくさんあるのだから、フラッと飲める店が増えて欲しいなぁと思っています。

 

Text:中山夏美
Photo:伊藤美香子